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【拝啓、天国のお祖母様へ】この度、貴女のかつて愛した人の孫息子様と恋に落ちました事をご報告致します。  作者: 秘翠 ミツキ


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25話



別の道を選べば良かった……。


 朝、学院へ登院する為にミハエルは城の廊下を歩いていたのだが、向かい側から歩いてくる人物を見て後悔をする。

 女性の様に長く美しい艶のある金髪を揺らし、颯爽とこちらへと歩いて来るのは、この国の第二王子であるハインリヒだ。


「やぁ、ミハエル、おはよう。良い天気だね」


「おはようございます、兄上」


 窓から差し込む朝の日差しに照らし出されるハインリヒに、思わず目を細めた。クラウディウスと同じ青眼の瞳が、ミハエルを真っ直ぐに捉えている。居心地の悪さを感じ、視線を落とす。早くこの場から立ち去りたいと思った。


「先を急ぎますので、失礼します」


 丁寧に頭を下げ、兄の横を擦り抜け様とするが道を塞がれてしまう、最悪だ。


「何時もながらに、本当に君はつれないね。久しぶりに会ったんだから少しくらい構ってくれても良いんじゃないかい。兄として、寂しいよ」


 ミハエルは兄王子二人が苦手だ。嫌いではないが、正直関わりたくはない。クラウディウスもハインリヒも、自分には眩し過ぎて、少し怖い。


 


「そう言えば……クラウディウス兄上の所の()、遂に婚約したんだってね。彼程の人間が何時迄も妻の一人や二人いないなんて不思議だったんだよ」


 妻は一人じゃないとダメだろうと、ミハエルは内心引いた。

 この国は、国王以外は一夫一妻制だ。貴族だろうと、臣籍降下した王族だろうが例外はない。まあ、愛妾を囲う人間は多数いるが妻とは認められない。


「相手の女性、確か君の同級生のご令嬢だったね」


「流石ハインリヒ兄上、まだお披露目前だというのに耳が早いですね」


 ミハエルのその言葉に彼は、爽やかに笑う。青い瞳は、まるで硝子玉の様で感情が読めない。


「偶然耳にする機会があっただけだよ」


 嘘だ。兄は嘘を吐いている。根拠はないが、直感でそう思った。


 彼は一見するともう一人の兄であるクラウディウスと似ている。人好きのする笑みと、穏やかな物腰や穏やかな話し方、腹違いとはいえ兄弟とあり容姿もどことなく似ている……。だが内面はまるで違う。言うならば、似て非なるもの……。どんなに時間が過ぎたとしても、この二人が相容れる事はないだろう。

 クラウディウスは正義感が強く生真面目、ハインリヒは戦略家で飄々として掴み所がない。


 昔から王太子派と第二王子派というものが存在し、対立をしている。王太子派は穏健派で、第二王子派は強硬派だ。そんな第二王子派の目的は、王太子の座だ。


 第三王子であるミハエルは、争いには巻き込まれたくないので極力目立たない様にして過ごして来た。故に末王子は臆病者、影が薄いなど陰口を叩かれるのも暫しだ。だが別に気にはしていない。言いたい奴には言わせておけば良い。第三王子として自分がすべき事は、権力争いに加わる事なんかじゃない。



「それにしても、彼もお目が高いね。アルナルディ家のご令嬢を選ぶとは」


「彼女を知っているんですか」


「さてね、どうだったかな」


 顎に手を当てて、大袈裟に悩んで見せる。自分で話をふっておいて、この態度だ。本当に掴めない。


「ミハエル、僕は今はまだ、傍観者でいるつもりだから安心して良いよ……その時が来るまでは、だけどね」


「……」


 これまで二つの派閥は小競り合い程度だった。しかもクラウディウスやハインリヒ自身が、何かをしている訳ではなく、周りが全て行っている。だが何時迄もそんな子供騙しの様な喧嘩で済むはずがないのはミハエルだって理解している。当事者である兄二人が、自ら動き出せばこの国は大きく揺れるだろう。


「君も、例外ではないよ。その時がくれば、何時迄も傍観者ではいられなくなる。……選ばなくてはならいんだよ、ミハエル」


 爽やかに笑いながらハインリヒは、去って行った。朝から気分が悪くなる。沈んだ気持ちのまま、ミハエルは遅刻すると先を急いだ。


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