表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【拝啓、天国のお祖母様へ】この度、貴女のかつて愛した人の孫息子様と恋に落ちました事をご報告致します。  作者: 秘翠 ミツキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/96

14話



 ロミルダ・フレミーが亡くなってから早くも十日が過ぎた。祖母が亡くなった翌日には葬儀が執り行われ、更にその翌日には遺品の整理がされた。


 祖母には現フレミー伯爵である息子のザームエル・フレミーと、ティアナの実母であるマルグリットの二人の実子がいるが、葬儀や遺品整理に至るまで、全てザームエルが行った。

 マルグリットはかなり昔から実母のロミルダを嫌っていて、体裁がなければ葬儀にも出なかっただろう。


『ようやく、死んだのね』


 ロミルダの訃報を聞いたマルグリットは鼻で笑った。葬儀の最中も終始、太々しい態度で、分かってはいたが見ていて気分が良いものでは無かった。


『これでもう、護ってくれる人間がいなくなっちゃったわね、残念ね』


 葬儀の後、早々に馬車に乗り込むマルグリットに耳打ちをされた。


 『でもまあ、どの道もう嫁ぐんだから関係ないわね。良い嫁ぎ先を探してあげたんだから、私に感謝しなさい、ティアナ』


 醜悪な笑みを浮かべる母の顔に目眩すら覚えた。


  ティアナは自邸に帰る気分にはなれず、ロミルダが亡くなってからずっとフレミー家に滞在していた。

 祖母の部屋の隅に一人蹲り、この十日程ただ過ごした。調度品などはそのまま残してあるのにも関わらず、主人のいなくなった部屋はまるで知らない場所に見えた。こうしていると昔の記憶が蘇ってくる。


また、一人ぼっちになっちゃった……。




「ティアナ様、お客様がお見えになられております」


 また暗く冷たい記憶の中に堕ちかけていた時だった。侍女の声が扉越しに聞こえ、ティアナは現実に引き戻された。

 




◆◆◆



 ロミルダ・フレミーの死から明日で十日だ。レンブラントは日常に戻っていた。フレミー家とは直接的な繋がりはないので、葬儀には参列する事もなく、あの後彼女がどうしているかさえ分からない。


「別に、僕には関係ない……」


「何か言ったか」


 書類から顔を上げたヘンリックが訝しげな表情でこちらを見ている。


 そうだ、今は執務中だった……。


 執務室の窓側の大きめな机と椅子にはクラウディウスが座り、その前方にある長机と長椅子にはヘンリックとテオフィル、レンブラントが書類を積み上げ仕事をしていた。


「最近、本当独り言が多いな」


 ヘンリックの指摘にレンブラントは書類に集中するフリをして押し黙る。同じ事を言われるのは何度目か分からない。昨日はクラウディウスに、その前はテオフィルにも同じ様に言われた。

 視線を感じる、そう思い書類から顔を上げるとクラウディウスやテオフィルまでも手を止めてレンブラントを見ていた。


「今日はもう良いから、帰れ」


「少し休んだらどうですか」


 苦笑するクラウディウス達から強引に執務室から追い出されたレンブラントは、暫し扉の前で立ち尽くす。

 別に疲労している訳ではないし、身体の具合が悪い訳でもない。ただ気持ちが晴れないだけだ。休んだ所でどうこうなるものではない。そう不満に思いながらも、執務室には入れて貰えそうにはないので、仕方なく帰路につく事にした。




 何時もより早く自邸に帰ったレンブラントは、本邸ではなく別邸の前で立ち尽くしていた。

 フレミー家から帰った以降、祖父とは顔を合わせていない。今まで滅多に合わす事が無かったのだから、別段おかしな事はない。ただ最近こうやって気が付けば別邸の前まで来ては、立っている自分がいる。その理由は自分でも分からない。


「レンブラント様、ダーヴィット様がお部屋に来られる様にと仰っております」


 何時の間にか開いていた扉の前に使用人が立っていた。レンブラントはため息を吐き、彼に促されるがまま屋敷に入った。



「僕に何か御用ですか」


 部屋に入るなり、ダーヴィットの背に面倒そうに言った。


「用があるのはお前ではないのか」


「わざわざ部屋まで呼んだのはお祖父様でしょう、僕じゃない」


「強情な所はランドルフそっくりだな」


「……一緒にしないで下さい」


 ランドルフ・ロートレック、レンブラントの実父だ。容姿など余り似ておらず、唯一似ているのは瞳の色くらいだ。だが逆にそれで良かったと思っている。レンブラントは父親が昔から好きではないからだ。それなのに関わらず、似ているなどと言われて気分が悪い。思わず顔を顰めた。


「そう怒るな。私に口実を作って貰いたかったのだろう?だから、ここの所ずっとああして立ち尽くしていた。だが、自分から入ってくる勇気もない。だから仕方なく私から声を掛けてやったんだ」


そんな事はない、違う。


 否定したいのに、ダーヴィットから言われて気付いてしまった。無意識だったが、彼女に会いに行く為の口実を祖父から貰いたかったのだ……。


「レンブラント、私の代わりにロミルダの墓参りに行って来なさい」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ