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プロローグ






 十七年前。

 ティアナ・アルナルディは侯爵令嬢として生を享けた。侯爵である父とその妻の母、五歳年上の兄、年子の弟の五人家族だ。血縁上では、だが……。

 実際はアルナルディ家は父と母、兄と弟の四人でほぼ構成されておりティアナの居場所はそこにはない。但し、世間体があるので家族が揃っていないと不自然な場面では必ず呼ばれる。例えば親族の集まりや知人友人を集めた祝いの席などだ。

 何故ティアナだけが家族から孤立しているかというと、その理由は母のマルグリットにある。

 物心ついた時には、母がティアナを見る目は冷たく憎しみに満ちていた。その影響で兄や弟からは無視をされたり、時には暴言を吐かれたりもした。また父のハーゲンは家族という存在に全く興味も関心もなく、マルグリットが娘を虐げていても関心どころか気付きもしない様な人間だった。そんなティアナを救ってくれたのはマルグリットの実母、ティアナにとっては祖母にあたるロミルダだった。

 彼女はティアナにとって母代わりだ。優しく強く、たまに厳しい人格者と呼べる人であり、あのマルグリットの母親だとはとても思えない。

 ティアナはロミルダからは、生きる術を教わった。貴族としての立ち振る舞い、テーブルマナー、基礎的な勉学、そして祖母の愛した花に関する知識。

 

 ロミルダの暮らす伯爵家の庭には気候、時期問わず様々な花達が咲き乱れている。初めて目にした時は、奇妙で不思議な感覚がした。まるでこの場所だけが世界から切り離された空間に思えた。 


 ティアナは庭から花を何本か摘むと、ロミルダの部屋へと向かった。最近祖母の体調が思わしくない。ここ数ヶ月はずっとベッドに寝たきりになっている。


「お祖母様は、良くなるんですか……」


 診察に来ていた医師に、同じ事を訊ねるは何度目になるか分からない。その度に渋い顔をされ、首を横に振られると分かっているが、聞かずにはいられない。そして今日、医師からある事を告げられた。


「残念ですが……ロミルダ様は、もって後一月(ひとつき)かと思われます」






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