表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/33

5.転移2日目と出会い

お読みくださりありがとうございます。

お楽しみください。

 おはよう。


 昨日は夜ふかししたから少し眠いが、意外とよく眠れたな。

 枕が変わっても寝られる体質でよかった。

 準備をして、といっても麻袋しか持ち物は無いが、1階に降りていく。


 うーん、パンが焼けるいい匂いがする。

 朝食はパン、ベーコンエッグ、サラダ、スープのベーシックなスタイルか。

 美味そうだなぁ、と考えていると昨日のちょっと怖い宿屋の子と目があった。


「あ、おはようございます」


「どーも。そんな物欲しそうな顔しても、あなたの分の朝食は無いわよ」


 そうなのだ。必要なものを買うために、朝食無しで安くしてもらったのだ。


「ははっ、わかってますよ。これカギです。多分、今日も泊まりにくると思いますが」


「ふんっ。別にお金さえ払ってもらえれば、こっちは問題ないけど」


「ありがとうございます。いってきます」


 何に対してのお礼かわからないが、とりあえず穏便にサトナカ亭を出発する。

 まだ朝早いがいくつか露店が出ていた。

 安いナイフみたいな刃物が欲しいところだが、良い物はあるかな。


「お兄さん、何かお探しかな?」


 様々な何に使うかわからない雑貨(?)を売っている露天商のお婆さんに声をかけられた。


「どうも、おはようございます。採取や護身なんかに使える便利なナイフみたいなものがあれば欲しいなと」


「それならこれなんかどうだい。150円にまけとくよ」


 露天商のお婆さんは刃渡り10cm程のナイフを見せてくれる。

 少し短めだが理想的なナイフだ。

 だが、いかんせん金が無い。やっぱり90円じゃあナイフは買えないか。


「いいナイフですね。ですが、今手持ちが90円しかなくてですね……」


「90円じゃ流石に売れないねぇ。この辺じゃあこれより安い刃物は売ってないと思うよ。金を稼いでくるしかないねぇ。今日の夕方までなら取り置きしといてやるが、どうするね?」


 昨日と同じく300円稼いで、宿屋に朝食無しで泊まると220円かかるから、残るのは80円。

 今持ってる90円と合わせれば170円だから、買えないこともないな。

 他のところにもっと安いやつがあるかもしれないが結構気に入ったし、露店とお婆さんの不思議な雰囲気も好みだし、取り置きしといてもらうか。


「では、取り置きお願いします。薬草採取でなんとか稼いできます」


「はいはい、承ったよ。頑張ってきな」


 俺はお婆さんと別れ、15円の串焼きを買い、腹ごしらえしながらアズーマ山へ薬草採取に向かった。



 ―◇◇◇―



 今日はキンジくんいないのかなぁ。

 俺はちょっと期待しながら、薬草採取をしている。


 それにしても花が咲いてる薬草が結構生えてるな。

 前の世界と違って、季節とかは関係無いのだろうか。不思議だ。

 これならまたすぐに目標の30束まで集まりそうだ。


「きゃー!!!!」


 !!

 薬草採取を続けていると、女性の叫び声が聞こえてきた。

 近いな。まさか魔物が山奥から出てきたのか?

 急に異世界ものっぽくなってきたな。

 魔物だとしたら俺に対抗手段は無い。だが、だからといって見捨てるのは気分が悪い。

 どうせショボい人生、1回死んでるわけだし、最後に人を助けるのも悪くないよな!


 俺は悲鳴が聞こえた方へ走りだした。


 見つけたっ!

 女性が尻もちをついて震えている。


「大丈夫ですか!?」


「あ、あそこっ……」


 彼女は茂みを指差す。

 どこだ? 俺には何も見えないが。

 ゴブリン程度だったら俺でも善戦できるのだろうか?

 せめてナイフがあれば……


「ど、どこに何がいたんですか……?」


「は、葉っぱの上……に……」


 は、葉っぱの上?!

 どういうこっちゃ!?

 

 俺は葉っぱをよーく見る。

 え、もしかしてこの小さい青虫?

 葉っぱの上を小さな青虫がちょこちょこ歩いている。


「も、もしかしてこの青虫で悲鳴を?」


「ひぃ!? 名前を言わないでください! は、早くそいつをどこかにやって!!」


 青虫くん、ごめんよ。

 俺は青虫をつまんで、女性から見えない位置の葉っぱの上に逃してあげた。


「いなくなったので、もう大丈夫ですよ」


「あ、ありがとうございます。取り乱してしまって、お恥ずかしい……」


「いえ、俺でどうにかできてよかったです。魔物が出てきたのかと焦りましたよ」


 いや、本当に生きた心地がしなかったよ。


「あ、すみません。助けていただいたのに、まだ名乗っていませんでしたね。私はオリーブと申します。親がやっている公衆浴場の手伝いをしています」


「ご丁寧にどうも。俺は冒険者のイヒトです。公衆浴場の娘さんなんですね。宿屋の人に話を聞いて、今度行ってみようと思ってたところです」


「まぁ、そうなんですね! 是非いらして下さい。お礼に一度、無料でご案内させていただきますよ」


 お金が無くて困ってたところに、この申し出はありがたい!

 料金がわからなくて行くのを躊躇していたが丁度いい、無料で入れてもらった時に料金も確認しよう。


「ありがとうございます。是非行かせていただきます」


 最後に公衆浴場の場所などを聞いて別れる。

 オリーブさんは村の方に帰っていった。


 さて、薬草採取を再開しますか。



 ―◇◇◇―

お読みくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ