(7/15)第8夜 写真屋
この世には特殊な商売をしている人がいるもので私も旅先でそんなお店を見つけたことがある。
私の入ったその店は一見写真屋に見えた。小学生の頃行事でカメラマンが撮った写真を買うとき写真が並べられているのを見たことはないだろうか。そんな感じで店頭にずらりと写真が並んでいた。
芸能人やアイドルの写真ならまだしも顔も知らない人たちの旅行写真、誕生日や七五三などの記念写真、何気ない日常を取った写真など需要のないものがずらりと並んでいた。
値段も写真にしては高価で最低でも1枚1000円、高いものだと1万近くする写真などもあった。いったいこの写真は何が特別なのかと安い写真と高い写真を見比べてすぐに違和感を覚えた。その違和感を探るため眺めているとその違和感が何かわかった。特に高い写真の方がその違和感にすぐに気づくことができた。
私は手ぶらも何なので一番安い写真を手に店主から話を聞くことにした。店主は最初は話すのを渋っていたが取材ということにして謝礼を払う約束をすると色々と話してくれた。
まずは値段については安い物は全て複製品で高い物はオリジナルだそうだ。それに店頭にある者より高い物もあるそうで、記念に見ないか、と誘われたが私は断った。店頭に置けないようなものなどごめんだ。
次に何故こんな商売をしているのかと聞くと彼の実家には職業柄そういう写真が送られてくることが多かったようで親に隠れて抜き取り保管していたらしい。それを元手に面白いんじゃないかと思って始めたそうだ。いまではネットを利用してお清めと称してそういった写真を無料で受け入れてそのまま売り物として売っているらしい。
そういう写真を集めて何か起ったりしないのかと聞くと店主は短い沈黙の後にへらと笑った。本当に危険な物はちゃんとした方法で保管しているし、毎日開店前と閉店後にすることはしているから大丈夫だそうだ。
最後に私は店主に尋ねた。顔色が優れないみたいだけどご病気か何かかだろうか。店主は長い沈黙の後気のせいだと笑い飛ばして最後に私が持ってきた写真の清算をしてくれた。
ちなみにその写真は今は私の手元にはない。処分したとかそういうわけではなく気づけばなくなっていた。そしてなくなっていたと言えばこの話を書く際にあの店主が教えてくれたサイトを見返そうと思ったらそのサイトはなくなっていた。もらった名刺のメアドに今回書かせてもらうことを連絡してみたがこちらも返信はなかった。
もしこれを見ているのなら連絡してもらいたい。無事であることを願う。
それでは今回の話はここまでとしよう。それではまた会おう。
次回の投稿は7/16 00:00 となります