(7/9)第2夜 ハナコ
さて皆さまはトイレの花子さんをご存じあるだろうか。小学校の定番の怪談といえばまさにこれであろう。出自のわからないほど各地で語られるこの怪談はその呼び出し方は多岐にわたる。
一番ポピュラーとされるのが3階女子トイレ、手前から3番目の個室を3回ノックするというものだ。その姿は赤いスカートを履いたおかっぱ頭の女の子とまさに昔の小学生女子といったいでたちとなっている。
前置きはここまでとして本題にはいらせてもらおうか。これはHくんとその友人が経験した話だ。
Hくんが通う小学校はその地域では割と新しい学校だそうだ。他の小学校との合併の際に校舎を新築したそうなんだ。この時代に懐が潤っているようで羨ましい限りだ。
そんな新しい学校でも学校の七不思議があるらしくある日の給食の時間に班のみんなとその話になったらしい。
そういう話を全く信じてなかったHくんは否定的で逆にそいう話が大好きなBさんと意見がぶつかってね、売り言葉に買い言葉で班の人たちを巻き込んで七不思議を確かめようってことになったんだ。
Hくんは夜に家を抜け出して夜の小学校へやって来た。来ないやつもいるのではないかと思っていたが班の全員、計6人が裏門の前に集まった。
顔を見合わせ、言い出しっぺであるBさんを先頭にHくん、男子2人、女子2人の順で夜の校舎へと乗り込んだ。
昼間のうちに裏口の鍵は開けといたが誰も調べる人はいなかったようでそのまま開いていたので簡単に侵入することができた。
七不思議といっても歴史の浅いこの学校にはどこかで聞いたようなものばかりで数も四つしかなかった。それだけでもHくんとBさんとで言い合うことになったがすぐに他の班の人たちに止められた。
四つあるうちの二つ、音楽室のピアノ、体育館の亡霊は特に何も起こることなく、図書室の呪いの本は残念ながら鍵がかかっていて図書室に入ることができなかった。
そして最後にやってきたのが三回にある女子トイレだった。「トイレの花子」それが四つ目の七不思議だ。毎回見張りを二人立てて入っていたので今回も同じようにしたが女子トイレということもあり男子二人が見張りに、事の発端であるHくんとBさんを含む女子3人で女子トイレに入ることになった。
個室の手前から3番目の個室の前に立つ。四人で顔を見合わせて唯一の男であるHくんが戸を叩く。どうせ何も起こらなければと思えば怖くもなんともない。
Hくんは躊躇いなく個室のドアを3回ノックする。そして呼び出すための呪文を唱える。
「はーなこさん、遊びましょ!」
Hくんが発した言葉がトイレに響いて一秒、二秒、三秒と時が流れる。しばらくして何も起こらない。皆がそう思ったところでトイレに声が響いた。
「何をしてるんですかーー!」
それは目の前の個室ではなくトイレの入口から聞こえた。驚いて4人が視線を向けると怖い顔をしたHくんたちの担任教諭である女性が立っていた。そのまま4人は並ばされて説教を受けることになった。
説教を終えた担任教諭は4人より先にトイレから出て行った。Hくんたちもトイレから出るとすました顔で見張りの男子たちが立っていた。Hくんたちは見張りの二人に文句を言ったが二人は困惑した顔でこう言った。
4人がトイレに入ってから誰も来てないし4人の前に誰もトイレから出てきていない。
そんなはずはないとHくんは思ったがこの場に担任教諭の姿がないというのもおかしいのは確かだ。Hくんの知っている先生だったら生徒を置いて先に帰るはずがない。
「何をしているんですかーー!」
女子たちと男子たちが言い合っているとそんな声が廊下に響いた。そこにいたのは担任教諭の女性だった。なかなか来ないHくんたちを探しに戻ってきたのかと思ったらならばされて説教を始める。どこかで聞いたようなないようにデジャヴか、ということはなくさっき聞いた内容と一字一句同じだった。
混乱する4人をおいてそのまま説教を続ける先生にBさんが遮って声をかけた。さっきトイレに来なかったかと。先生は怪訝な様子でそれを否定し説教はヒートアップ。
その後それぞれの家に送り届けられて親からも説教を受ける散々な一日だった。
以上がHくんが体験したことだ。いったい何だったのだろうか。デジャヴというやつなのかそれとも夢か幻だったのか。
これは余談であるが担任教諭の名は山鼻小春というらしくてあの日学校にいたのは昼休みの時の話を耳にしていて心配して見回りに来たそうだ。なかなか生徒思いのいい先生ではないだろうか。
それではまた明日会おう。
次回の投稿は7/10 00:00になります。