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(7/22)第15夜 サツキさま

 とある地域にだけ祀られている存在というものがある。Y氏の住む地域にもそういったものが存在するそうだ。それは石造りの祠で毎朝住民の誰かが掃除をしているそうだ。そんな祠に関する慣習というものがあり、集落を出るもの、新たにやってきた者は必ず祠に挨拶することだそうだ。

 Y氏も元々は集落の外の人間だそうでこの体験は集落にやってきたばかりの頃にあったそうだ。

 Y氏とその家族は元々都会に住んいたそうだがY氏の脱サラし独立したのを機会にこの集落に引っ越してきたそうだ。Y氏の友人が集落に住んでいたそうでY氏とその家族はこの集落に何度か遊びに来たことがあった。

 しかし、祠については知らず、父の友人に挨拶に行ったときに初めて聞いたそうだ。父の友人の勧めですぐに祠にお参りに行こうとしたのだがY氏の弟が引っ越した日に熱を出して寝込んでしまったので母は弟の看病に残り、その日はY氏と父の二人だけで祠お参りに行ったそうだ。

 その祠というのは村はずれの林の中にあり、供え物や花が供えられていたりとしっかりと手入れもされているようだった。Y氏はとりあえずポケットに入っていたキャンディーを供えて弟の回復を願った。

 多分それが間違っていたんだと思う。何を祀っているかもわからない祠にお願いなどするべきではなったのだと。

 引っ越してきてから数日たったが中々弟の熱は下がらなかった。医者を呼んでも原因はわからずに解熱剤を飲ませるくらいしかできなかった。不幸はそれだけではなくその熱は母にも移り、母も寝込んだしまった。いったいどうすればいいのかとY氏と父と一緒に頭を悩ませていると父の友人がうちにやってきた。

 父の友人は弟と母の容態を一目見るとこう尋ねてきた。「二人が寝ているときに何か言ってはいないか」と。友人が言ったように弟がうわごとを呟いていたのをY氏は聞いていた。「サツキさま、お許しください」「サツキさま、お許しください」たしかそう呟いていた。Y氏が父の友人にそう伝えると父の友人は大きくため息を吐いた。

 父の友人は弟と母を連れてくるように言って車を家の前に持ってきた。Y氏は父と一緒に協力して弟と母を車に乗せて走り出す。父の友人がY氏たちを連れてきたのは例の林の中の祠だった。

 それからは色々と父の友人が儀式のようなことをした。それをY氏と父は見ているしかなかった。


 その儀式を終えて一夜が明けるとすっかり二人の熱は下がっていた。父は改めてその友人にお礼を言いに彼の家に訪れたそうだが家にはいなかった。探してみると父の友人はあの祠の前にいた。その父の友人はこちらに気づいていないのかぶつぶつ何か呟いている。

 何を言っているのかと気になって耳を近づけると彼は「サツキさま、お許しください、サツキさまお許しください、サツキさまお許しください……」と何度も何度も何度も繰り返していた。その様子が恐ろしくて思わず声を上げたがそれでも父の友人はまるで気づかないように言葉を唱え続けていた。

 父はどうすることもできずにそのまま帰ってきたそうだ。そしてそれからしばらくしてその友人の首つり死体が見つかった。遺書はなくて自殺の理由はよくわからなかったそうだ。

 その自殺のことを聞いてから弟は毎日のように祠に通うようになった。それを見たY氏は一つの疑念を覚えていた。そういえば弟が熱を出したのはこの集落に着いてすぐで母とは違う。もしかして以前に何かあったのかも知れない。

 そう思ったが弟には聞けていない。Y氏はそう言って話を終えた。


 皆も気を付けるといいだろう。知らない祠には簡単には触れないよに。それではまた会おう。

次回の投稿は7/23 00:00となります。

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