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(10/15) 第100夜 百物語

 私は百物語をするにあたりおもおしろいことを思いついたのでそれを実行してみた。友人知人、友人の友人、友人の知人、それらを辿って100人繋ぎで怪談のリレーを行った。バトンはビデオカメラとメモリーカード。怪談は一発撮りで前の人の怪談を見るのはNG。バトンは撮り終わったらすぐに次の相手に手渡し、または郵送すること。それらのルールのもとこの計画は実行された。

 最後は私にすることにして最初は怪談話を持っているであろう友人に直接ビデオカメラを渡した。そしてビデオカメラを誰かに渡すとき必ずメール私にメールをするよう取り決めた。

 メールは順調に私のもとに届き、うまくバトンが回っているようだというのがよくわかった。そして約100日ほどしてビデオカメラは私を除く99人の手に渡り私のもとに帰ってきた。

 早速私は送られてきたメールをもとに99人にそれぞれお礼のメールに鑑賞会の参加状を添付して送った。それぞれの都合のいい日時を教えてもらい、奇跡的に全員が集まることのできる日があった。

 そうして全員が私が用意した会場に集まり、鑑賞会が始まった。私も早送りで問題なく映ることだけを確認しただけなので私も内容はわからない状態で鑑賞会を行った。

 トップバッターが私の友人で相変わらずの怖い内容で会場の温度が一、二度は下がった。それから二人目三人目と続き、たまに画面が乱れたりもしたが大きな問題もなく話は進んでいった。

 そして99話めが終わりに差し掛かった。実を言うと私は100話めを撮らなかった。用意した怪談が少しやばいものだったので撮るのはやめたのだ。それに百物語は99話でやめるのが通例だ。

 というわけでこの話で終わりだと思ったのだが99人目が語った直後大きく画面が乱れて暗転した。しかし終わったわけではなくビデオは回り続けている。カメラを切り忘れたのか、そう思った瞬間声が聞こえ始めた。100話目が始まったのかと思い皆が静まり返るが私だけは冷静ではいられなかった。

 声は私のものにも聞こえるが私は撮ってはいない。それに今流れているのは私が当初語ろうかと思っていた話だった。

 私は事情を語るよりも動いた方が早いと思いパソコンの画面から動画を止めようと操作したが止めることができなかった。次にパソコンとディスプレイをつなぐコードを抜いたがそれでも怪談は止まらない。ディスプレイの電源を切ったが画面は消えても怪談の声だけは聞こえ続けている。

 私が語ろうとしたのは内容的にはそこまで怖いものではない。語ったり読んだりする分には何ら問題はない。しかし、聞いた者に対してはよくないことが起こるというものだった。

 そのよくないことというのは大したものではないと思っていたのだが動画を撮ろうとした日にそのよくないものというものがわかり、危険かもと思い中止したのだ。

 私は次の手段として参加者に声をかけてみたが怪談を聞き入っているのか大した反応は得られなかった。そうなってはもう最後の手段をとるしかなかった。

 私はスピーカーを破壊した。音が聞こえなくなるまで完膚なきまでに。借りものだが背に腹はかえられない。スピーカーが完全に沈黙すると参加者が我に返ったように急に騒ぎ出す。主催者がスピーカーを破壊していたら当然だが私は訳を皆に説明した。

 中には最後まで聞きたがった者もいたが断固して拒否し、解散とした。その後私は場所を提供してくれた方に平謝りしてスピーカーを弁償する旨を伝えた。

 あれ以降百物語に協力してくれた人たちが全員で集まることはないが一部の方とは交流が続いている。ただあの日のことが話題に出ることはない。ちなみに例の動画の入ったメモリは鍵付きの箱に入れて厳重に保管してある。せっかく撮ったものなので記念にとっておきたくなったのだ。ただそれだけである。

百日奇談こちらで最後となります。100日間お付き合いいただきありがとうございました。



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