問題処理
これは地味に面倒そうだな・・・。
やることが明確になっていないのは、始業式程度なのでどうにかなるとしても、今いる人だけで足りるかな・・・。あの言い回しだと、記録撮影、サイトアップ以外にありそうだな・・・。
まぁとりあえず、やる必要性をあまり感じない始業式を、どうにか乗り切ればいいってことでしょ。簡単簡単。
でも、こんな簡単なこともできなくて、よく教員になれたな・・・。
昨今、教員は倍率が落ち、レベルが低くなっていると聞くことはあるけれど、ここまでだっけ・・・?
なんとなく、顔採用されたような気もしなくはない。今はモンスターペアレントとか大変みたいだし、イケメンを入れることによって保護者の機嫌でもとろうとしているのだろうか・・・。
今はそんなこと考えても仕方ないか。
とりあえず、ずっと放置してしまった有紗に何か意見を聞いてみることにする。
「有紗、あの先生クズだね」
ちがーーーーう。こんなことを言いたかったんではない。心に思っていることが、ぱっと声に出てしまった。
「確かに、生徒に丸投げはあまりよくないね・・・。でも、もう引き受けちゃってたし、内容を聞かなかった私たちも悪いから、仕方ないよ」
正論が飛んできて納得させられてしまう。
なぜ、この子はこんなにいいこといえる子なのに、成績があまりよくないんだ・・・?
全部美貌にとられてしまったのか・・・?
ほんとかわいそうに思う。
「まぁ確かにそれもそうだね。それじゃあ、ちょうどそこにホワイトボードもあることだし、何やるか精査してみようか。ちなみに有紗は何が必要だと思う?」
「う~ん。先生が言っていたとおり、記録撮影は学校のサイトに上げる上で、必要そうになるから、まずはそれかな。あとは、照明とか、放送機材はもう用意して、先生たちがやってくれているのかな・・・。もしなかったらそれも追加・・・かな」
「そうだね。とりあえずはそんなところかな。まぁ想定していたとおり特に大変そうなものはなさそうだね。でも、なぜにこんな簡単なことを丸投げしてしまうのだろうか・・・。少しは考えてほしいよね・・・」
「まぁ仕方ないよ。あの人、補欠採用って言うのはよく聞くし、よく生徒にぶん投げてギリギリまで手助けしないって、教員の間では有名だし」
教員の間でそんな噂たっているのに、よくほんとに本採用されたな。幸運の持ち主なのか・・・。その運、私にも分けてほしい・・・。
「そしたら仕方ないか・・・。でも、よくそんな先生の仕事、引き受けたね・・・」
私は、ホワイトボードの仕事の枠に役割を記入しながら、ふと疑問に思ったことを有紗に質問する。
「ほんとはね、別の先生から頼まれてたことなんだよね。でも、その先生が急に出られなくなったらしくて、ちょうど司会になっていた、あの遠藤先生に白羽の矢が立ったみたい。昨日の夕方、電話があった」
なる。そういうことなら理解ができる。でも、白羽の矢が立つならそれなりに状況を知っていて、できそうな人だから、白羽の矢が立ったのではないのか・・・?
まぁ、有紗がいっていたように、ギリギリになるまで手を出さないなら、こういう状況もうなずけるが・・・。
よし、いろいろと別なことを考えてはいたが、大体役割はこんな感じかな。
一応確認のために有紗にも承諾を求める。
「とりあえず、必要になりそうなものも含めて役割を振ったけど、これで大丈夫?」
「うん、大丈夫だと思うよ。でも、なぜ私が写真撮影になっているの・・・」
有紗は若干不服そうに私に申し立ててきた。
「理由は簡単。有紗弟や妹たちの運動会でよく写真撮ってるでしょ。それでなんとなく写真うまいかなって。後は、なんとなく一番簡単そうだからかな」
私がそう言うと、有紗は的を射貫かれたような顔つきになった。
「たしかに。でも私が一番楽な仕事をもらっちゃっていいの? 今回、誘ったのは私なのに、私が楽しちゃっていいのかなって、ちょっと思った」
「そこは大丈夫。いつも仲良くしてくれているお礼ってことで。友情の証ってやつ? こんなんで育まれる友情って、なんだか変だとは思うけど」
私がちょっと誇らしげに言ってやると、有紗がクスッと笑っていた。
「まぁ確かに。それで友情の証って言われたらなんか変だね。立夏がそう言うなら、私から特に断る理由はないかな」
有紗はちょっとご機嫌そうに言いながら、こちらに笑顔を伺わせてくる。
あー。これ男子にやったらイチコロなんだろうな。同性の私がキュンとしてしまうのだから、異性なら確実に今ので落ちそう。試しにあの仕えない先生を禁断の恋に目覚めさせて、挫折を味合わせてやろうかと思ってしまう。
と噂をすればというやつだ。先生が息を切らしながら戻ってきた。
「は、はい。持ってきたぞ・・・。これでいいか・・・?」
先生は、急いだせいか若干紙が折れている進行表を持ってきた。
「若干指後がついて汚いですね。書類の管理はしっかりとしましょう」
「いや、急いで持ってきたんだから、それぐらいは見逃してくれ・・・」
「そしたら、そこに置いてあるプリンターでコピーしておいてくれますか?」
といって、私は先生をゴミでも扱うのではないかと言うぐらいにぞんざいに扱う。
「いや、俺、一応教師なんですけど・・・。もうちょっと丁寧に扱ってくれてもいいのではないか・・・」
そう言われると少し困る。確かにこいつは教員。一応会社に例えると上司なわけで、ちょっとひどすぎたなと反省する。
「そうですね。先生はこんな簡単なこともできないゴミですけど、役職としては先生で、私たちを教えてくれる立場ですもんね。以降は気をつけることにします」
「なんか、さらにひどいことを言われたような気がするが、できるだけ気をつけてくれ・・・。俺のメンタルも無敵ではないのでな」
先生はこう言うと、手早くプリンターを使って進行表を印刷する。
「先生、一応必要になりそうな担当を精査して決めたんですけど、これで大丈夫ですか」
有紗が先生に向かって承諾を促す。
腐ってもこいつは先生。いろいろなことに対して決定権を持ち合わせている。
だから、必ず私たちが決めたことに許可を求めなければならない。
信用はしていないけど。
「えーっと、撮影が一ノ瀬。記録が北見。照明・放送・司会・その他雑務が俺って、なんか俺仕事多くない!?」
「気のせいですよ。センセイ」
私が笑顔で応答する。
「完全に、丸投げしたのに怒っているだろ。それに生徒会長が抜けているぞ、会長が」
「そういえば、来るって言ってましたね。そしたらこれでどうです?」
私は赤いペンを持ち、その他雑務の部分の役割のところを会長に変更する。
「いや、そこは普通に放送でいいだろ。その他の雑務なんてあるようでないようなもんだし、そのくらいは俺がやるから」
先生がちょっとかっこいい感じに行ってくる。あざといな。
「そういうことでしたら、先生の言ったとおりに放送を会長に変更しますね」
「あと、照明だが記録のおまえがやれ。スイッチポチポチするだけなんだから、簡単だろ」
先生に言われて確かにと納得させられてしまう。まぁ司会の位置から遠く、物理的に無理がある先生にやらせるのは酷だろうと思い、渋々承諾する。
「仕方ないですね。照明は私が引き受けます」
「そうしてくれ」
先生は少し嘆息気味に答えた。
「そしたらこれで決まりですね。確認のためにもう一度言いますよ。撮影が有紗。記録・照明が私。放送が会長。司会・その他全て、セ・ン・セ・イ。」
「おいおい、先生の言い回しだけなんかトゲがあるぞ、トゲが」
先生はそう言って、ジト目で私の方に視線を向ける。
「気のせいですよ。気のせい」
私は、平然と笑顔でごまかす。
しかし、さすがに先生をいじるのも若干飽きてきた。いつも通りに接しよう。
「そういえば、先生。生徒会長ってこの場にいないんですけど、本当に来るんですか?」
私の質問に対して、先生はもちろんといった感じで頷いた。
「もちろん来るよ。俺が、ここの場所を伝えていないだけで、どうせ正門で待機していると思うよ」
先生は、こうやって堂々と宣言した。
宣言するのはいいが、場所を伝えていなくて正門で待たせていたら話が進むわけがない。なぜ、そんなこともわからないのだ・・・?
この人クビにして、新しい人雇った方がいいと思う。
イケメンだからって、何でも許されるのはなんか違う。第一、まともに働かなくて他者に、特に女性に迷惑をかける男性ほどクソな人間はいない。あとで担任の先生に愚痴ろう。
「じゃぁ私が迎えに行って、やること伝えるので、先生は他の準備をしておいてください。余裕をもって時間に間に合うように。有紗はカメラだから、そこのカメラ持って朝の朝礼に向かって大丈夫だよ。終わったら私も向かうから」
「わかった。じゃあ先に教室に行っているね」
有紗がそう言って出たのを確認した後、私は生徒会長が待っているという正門へ向かい仕事を説明しに行く。
でも、なんでこうなったんだろうな。いつもこんなこと学校じゃやらないのに。私悪いことでもしたのかな・・・。
・・・・・・・。
特に思い当たらないな。
まぁ気にしても仕方ないし、先生を除いてそんなに変ってこともないし、いいかな。
それより、生徒会長ってどんな人だっけ? 男子であったことは覚えているけど、それ以外は特に覚えていない。生徒会とかに特段興味があったわけでもないし仕方ないか。大抵の学生だって同じだろうし。今を楽しめれば、生徒会長を覚えていなくても些細なことで、実際に生活に影響してくるなんてことないもんね。まぁ生徒会長って言うぐらいだし、一応顔を見ればなんとなくわかるか。
うん。そう、願おう。
私は少しばかり不安を抱きながら、校門へ急いだ。
用語の修正を行いました。
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