クズな先生
桜舞う新学期、高校二年生になった私は不安と緊張、新たな学期に期待を膨らませながら登校していた。
ちなみに時刻は朝7時。
普通なら、朝練の人ぐらいしか登校していない時間帯だが、今日は先生に始業式の手伝いを頼まれ早めに登校している。
ちなみに、高校に入ってからの友達「一ノ瀬有紗」も一緒だ。
有紗は、髪型が茶髪のポニーテール。基本、茶髪は校則違反となるのだが、日焼けするとなるらしく学校からの許可が出ている。それに加え、ちょうどいい塩梅の茶髪。体形も出るところはしっかりと出ており、締まるところはしっかりと締まっていて、モデルのように美しい。
一方の私はというと、髪型は黒単色。子供の頃から切っていないスーパーロング。体型も比較的いい方ではあると思うが、有紗には及ばず、胸には若干の物足りなさを感じている・・・。
あ・・・、自分で言っていて悲しくなってくる・・・。どうしてこんなにも格差が生まれたのだろうか・・・。自分の遺伝子が憎らしい・・・。
しかし、有紗はあまり良い成績とは言えず、内申点狙いでたまに先生の手伝いをしてたりする。
今回はそれに同行する形で、私も一緒にやることにした。
まぁ朝早い体育館って、なんか新鮮だし気になるってのもある。
そういえば今日、始業式の手伝いとしか聞いていなくて引き受けちゃったけど、何やるのか具体的なことは聞いていなかったな・・・。力仕事だったら嫌だし、一応確認のために、有紗にも何やるのか知らないか聞いてみることにした。
「そういえば、今日の始業式の準備って何するか知ってる?」
「う~ん。特に何も聞いてないかな・・・。でもなんか大変とか何とか言ってたような気はするよ」
「なにその大変って。始業式の準備って、もしかして椅子並べとか力仕事だったりするの・・・?もしそうなら嫌だな・・・」
「たぶん違うかな・・・。先生の言っていた感じだと、機材設定とかだったような気がする」
「なら、安心かな」
まぁ、女子に力仕事お願いすることなんて、そうそうしないもんね。
そしたらいったい何をするんだろう・・・? 放送の機材の設定とかかな。
でも、私たち放送機材なんて扱ったことないし、できるのかな・・・。ちょっと不安。
だけど、もう一度引き受けてきちゃっているわけだし、やるしかないか。
そう思っていると、いつの間にか学校についていた。
と、そこで待っていたのは、情報技術担当の「遠藤」先生が校門で待ち構えていた。
『おはようございます』
二人そろって遠藤先生に挨拶を送る。ちなみに遠藤先生は若手の先生で、今年から非常勤では無くなったんだとか。
ちなみに、かなりのイケメン。
高身長で鍛えすぎていないちょうどいい体格で、女子からはかなり人気がある先生。
女子高生からモテるって、どんな感じなのか聞いていじりたくなってしまうが、人をあまりいじると怒られるのでやめておこう。
「おはよう! ごめんな。こんな朝早い時間帯から手伝ってもらって」
爽やかに返答する遠藤先生。
こうやって、女子高生を落としているんですかね・・・。
「それじゃあ、やってもらうことは移動しながら話すから、着いてきてもらってもいいかな」
私たちはそれに従い、てくてくと遠藤先生の後ろをついていく。
しかし、遠藤先生が行く方向は、始業式を行う体育館とは逆方向。
少々疑問に思っていると、遠藤先生が口を開いて内容を伝えてきた。
「今日手伝ってもらうことは、舞台の裏方なんだ」
「舞台の裏方ですか」
私がこうやって聞き返すとなぜか嬉しそうにしてきた。
「そう、舞台の裏方。具体的には、写真を撮ってもらったり、発言内容を記録してもらうことが、主な仕事かな。たぶん」
「意外と簡単そうですね」
「残念、これが簡単じゃないんだよ」
私はそういわれて、ふとこれは地雷なのではないのかと頭をよぎる。一方の有紗は首をかしげている。これは、いやな予感しかしない・・・。
「実は、この裏方は明確なマニュアルがない! だから、どう写真を撮ればいいのかとか、記録していけばいいのか分かりません!」
はい、あたり。この人無能確定。完全に生徒に丸投げしている。
「前回までは、前任の先生が色々と段取りよくやっていたそうなんだけど、その先生が過労で倒れちゃって、今病院で入院中」
先生はすこし嘆息気に言ってき、頭を抱えていた。
だけど、これどうすんのよ。丸投げされてもこっちも困るよ・・・?
「そしたら、私たちは結局何をすればいいのでしょうか・・・?」
有紗が少し戸惑いながらも、使えない遠藤先生に質問する。
「それなんだよね。一応、校長先生とかにもどんなことをすればいいのか聞いて、今回は生徒たちに任せることになったんだ。一応、機材とかはこの突き当りのパソコン室に置いておいたから、好きに使っていいよ。あと、学校のサイトには必ず載せないといけないからそれも任せた」
「校長含め、完全に丸投げですね・・・」
その切り返しを想定していた私は、あきれた口調で先生に文句を言う。
「まぁ、君たちなら大丈夫でしょ。特に北見さんならイベントとかの経験もあるって聞くし、心配はしていないよ。あ、あと一応、生徒会長にも手伝うように声をかけておいたから、好きにパシッてくれて構わないよ。てことで、後は頼んだ」
そういって、私たちがあきれ返っている中、そそくさと先生が逃げようとする。
「そういうことなら、もちろん先生も協力お願いできますよね・・・?」
私は笑顔で遠藤先生のシャツの襟をつかむ。そしたら、先生はなぜか汗だくになり、顔が真っ青になった感じだったが、首を縦に振ってくれた。
「ちなみに、先生は始業式で何か役割振られていますか?」
「一応、司会ということで、役割が充てられているはずです」
なぜ敬語・・・? まぁたまにこういう事もあるしスルーしよう。
「そしたら進行表をお持ちのはずですよね。とりあえずそれを持ってきてもらえます?」
「わかりました。急いで持ってきます」
遠藤先生は、従順な下部のごとく急いで自分の机のある職員室に向かった。