おっさん、王都の危機を知る
エルダートレントを倒した後、俺たちはまっすぐコチャの街へと帰ってきた。
エルダートレントと戦ってみんなが消耗していたというのもある。
だが、連続する異常事態と、それが人為的に起こされている気配に一度報告に戻る必要があると考えたようだ。
ミーアさんと騎士団の人たちが小飛竜に乗って出発の準備をしている。
どうやら、コチャに来たのは飛竜隊と言われる飛竜乗りの部隊だったようだ。
機動性に優れ、こう言った調査任務では重宝されるのだとか。
ミーアさんは飛竜の準備を終え、話しかけてくる。
「タクヤくん、今日は本当にありがとう。君がいなかったら私たちはこの場にいなかったよ」
「いえいえ。当然のことをしたまでです」
実際、俺もああしないと死んでいたので、当然のことをしたというのは謙遜でも何でもない事実だ。
だから、騎士さんたちにそんな尊敬の顔を向けられると正直困る。
「当然のことに助けられたんだ。私たちから君の功績は国の上層部に連絡しておくよ。もしかしたら、勲章は無理でも賞状くらいはもらえるかもしれない」
ミーアさんはそう言って俺に笑いかけてくる。
俺としても、アルクの隣にいるためにある程度の権力は欲しいと思っていたので、国にはたらきが認められるのは嬉しい。
「副団長! 全員、準備完了しました」
「そうか! では出発する!」
どうやら、隊全員の準備が整ったらしい。
ミーアさんは自分の飛竜へとまたがる。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
その時、ギルドから声が聞こえてきた。
俺がギルドの方を振り向くと、いつものおっさんが冒険者ギルドから転がり出てくる。
その手には一枚の紙片が握られている。
「お、王都から緊急連絡が来ました! なんでも、王都近くでベヒーモスが出たとか」
「なに!」
ミーアさんは自分の飛竜から飛び降りて、ギルドの受付のおじさんに駆け寄る。
そして、ギルドのおじさんが差し出した紙片を受け取った。
しばらくの間、ミーアさんは紙片に目を落とし、じっと手紙の内容を読む。
しばらくしてから紙から顔をあげた。
「王都に向かって現在、ベヒーモスが進行中らしい。私たち飛竜隊は進路にある町に先回りして町民の避難を手伝えとのお達しだ」
ミーアさんは悔しそうに奥歯を噛み締める。
飛竜隊の面々も悔しそうに顔を下げる。
「し、師匠。ベヒーモスってなんっすか?」
ルーナの質問に鑑定先生が答えをくれる。
『ベヒーモス 超大型のモンスター。その体躯は小山にも匹敵し、……』
まあ、ベヒーモスなら俺も知ってる。
国民的RPGにも出てくるしな。
説明を読む感じ、俺の想像と大きく違わないモンスターのようだ。
俺は悔しそうに俯くミーアさんに近づく。
「ミーアさん。王都へ連れて行ってくれませんか?」
「え!」
ミーアさんは驚いた顔をする。
当然だ。レベルだって騎士より低い鑑定スキル持ちが言ったってできることはたかがしれてる。
だが、ミーアさんには俺の鑑定スキルが役に立つところを見せた。
「なにができるかはわかりませんが、俺の鑑定スキルの有用性はミーアさんも見たでしょ?」
「……」
ミーアさんは少し考えた後、決定する。
「わかりました。タクヤくんを王都へ連れて行きます」
「副団長!」
この決定は命令違反に当たる。
もしこれで問題が起きれば、ミーアさんは国からなにかしらのペナルティを受けるかもしれない。
だが、今、王都にはアルクがいる。
大切な人が危機に瀕しているのに、じっとはしていられなかった。
俺はミーアさんに深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
「礼には及ばない。私は必要と思ったことをするだけだ。すぐ出るから準備だけはしっかりしておいてくれ」
ミーアさんは他の騎士団のメンバーに指示を出していく。
俺はカバンなどを確認して、ポーションなどのアイテムが十分にあることを確認する。
その時、ルーナが寄ってきた。
「し、師匠……」
どうやら、もう一人の大切な人に心配をさせてしまったらしい。
「ルーナ。悪いんだけど、俺がいない間コチャの街を頼むぞ」
俺はルーナの頭をなでる。
ルーナはきっと表情を引き締めた。
「わかったっす! 師匠もお気をつけて!」
俺はルーナに微笑み返す。
ミーアさんも指示を出し終わったのか、俺に話しかけてくる。
「タクヤくん。準備はいいかい。出発するよ」
「はい!」
俺はミーアさんの後ろにまたがった。
ここで三章は終了です。
次回から最終章となる四章『王都動乱』です。




