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おっさん、冒険者ギルド登録する

 門の中から出て来たのは金髪碧眼で気の強そうな女性だった。

 門衛の様子から見て、かなり偉い人なのだろう。

 敬礼する門衛に合わせるように俺も背筋を伸ばす。


「このものが冒険者になりに来たと」

「ほう? 冒険者に。これまでは何をしていたんだ?」


 ファナ様は優しそうな表情で俺のほうに話しかけてくれる。

 どうやら、この人はいい人のようだ。


「え~っと。これまでは旅人を」


 俺がそういうと、ファナ様の表情が一気に険しくなる。

 なんだ? 別に旅人が問題のある職業だとはどこにも書かれていなかったはずだが……。


「我が国は、何物でも冒険者になることを認めている。お前のことは好かんが冒険者ギルドに連れて行ってやろう」


 どうやら俺はこの女性に嫌われてしまったらしい。

 彼女は踵を返してさっさと歩いて行ってしまう。

 俺が恐る恐る門衛のほうを見ると、門衛もわけがわからないようだ。

 とりあえず、顎でついていくように指示をしてきたので、彼女の後ろを恐る恐るついていく。


 冒険者ギルドは酒場と併設されている。

 そこはならず者のたまり場という雰囲気で、ザ・冒険者ギルドというような場所だった。


 しかし、そんな場所も女騎士が入ってくると、騒がしかった様子から一変、ざわざわと数人がひそひそ話をするような状況に変わっていく。

 俺が周りをきょろきょろしながら女騎士の後についていくと、女騎士は受付に座っている女性に話しかける。


「君、すまないが、彼の冒険者登録をお願いできないか」

「ファ、ファナ様! かしこまりました」


 女騎士に促されて、受付に立つ。

 すると、女性は俺の前に何かの用紙を出してきた。


「こちら、受付用紙になります。代筆もできますが、いかがいたしますか?」

「あ、自分で書けます」


 受付用紙は大陸共通語というこのあたりの公用語で書かれている。


 というか、さっきから鑑定スキルで出てくる文字も全部この大陸共通語だ。

 しかし、日本語のように読むことができる。

 おそらく書くこともできるだろう。


 ダメだったら頭を下げて受付嬢さんに代筆をお願いするしかない。


 かけないかもというのはやはり杞憂だったようで、記入は難なく終了し、俺は受付用紙を受付嬢さんに渡した。


「はい。問題ないですね。名前はタクマさん。スキルは……。鑑定スキル!?」


 受付嬢は俺のスキルを大声で読み上げた。

 その瞬間、周りの冒険者が大声で笑いだした。


「鑑定スキルとかマジかよ! ごみスキルじゃねえか!」

「というか、戦闘スキルなしで冒険者やろうとか。もうごみ拾いくらいしかやりようがねーじゃねーか」


 俺は周りの状況が理解できなかった。

 結構有用なスキルだと思ったのだが。


 助けを求めるように女騎士さんのほうを見た。

 厳しい視線でも、笑われるよりはだいぶましだ。

 すると、女騎士さんはさっきまでの憤ったような態度を引っ込めて、俺のことを同情するような目で見ている。


 なんでだ?


 俺がおろおろしていると、女騎士さんは受付嬢さんに声をかける。


「ここでは彼もやりにくいだろう。奥でレベルの判定と一緒に説明をしてやったらどうだ?」

「そ、そうですね。こちらへどうぞ」


 うっかり俺のスキルを読み上げてしまい、真っ青な顔をしていた受付嬢は俺を奥へと案内する。

 俺が奥へ案内されると、女騎士は任務があるからと言って門へと帰って行ってしまった。


「先ほどは申し訳ありませんでした」

「いえ、やっぱり鑑定スキルでは冒険者はやれないでしょうか?」


 さっきの彼らの反応を見れば、鑑定スキルが不遇スキルだということは一目瞭然だ。

 俺は結構有用なスキルだと思ったのだが、違うのだろうか?


「そうですね。鑑定スキルで重要な部分は百年以上前に本に起こされているので、それを覚えて冒険に行く方ばかりですから。鑑定スキルは冒険者としての需要も既にありませんね」

「あ!」


 それはそうだ。


 鑑定で出た結果はすべて文字なのだから、誰かが書き写してしまえば、鑑定スキル持ちはもう必要なくなる。

 この世界に鑑定スキルが生まれたのなんてずっと昔なんだから、もう重要な情報はすべて紙に移されていて当然だろう。


「それに、戦闘系のスキルのない方は、その、強力な魔物には攻撃が通らないので……、弱い魔物のいる地帯にしか行けません。残念ですが、ゴミ拾……じゃなかった。モンスターの落としたアイテムや薬草を摘むことしかできないので、あまり冒険者には向いていないかと」


 そうか、強いモンスターを倒そうと思うと、強いスキルがいるのか。

 俺が肩を落としていると、受付嬢さんは言いにくそうに続ける。


「それで、タクヤさんが冒険者をやるなら、ここから南へ行ったこちらの街がいいかと。弱いモンスターの生息地も近くにありますし。後、治安はいいですよ」


 受付嬢さんは俺に地図を渡してきた。

 それは、コチャの街の地図だった。

 俺はさっきまでの癖で、このコチャという街を鑑定してしまう。

 鑑定文にはこんなことが書かれていた。


『……使えない冒険者や働けなくなった冒険者が行きつくところ。……』


 俺は苦笑いしかできなかった。

この世界の識字率は30%くらいの設定です。

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[良い点] いや、思いっきり左斜め上にハズしてくれてて、最高です! テンプレ(゜o゜)\バキ
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