遺された魂
「きて……起きて……!」
意識が段々とハッキリしてくる。
目が覚めるとシャルロットが俺の身体を揺すって呼び掛けていた。
他の皆も一緒にいる。
「う……ここは……?」
「良かった……! フラフラと行っちゃうから心配したじゃない!」
「すまない、もう大丈夫だ……あれからどのくらい経った?」
ジブリールがこれまでの経緯を話してくれる。
「あれからすぐにカムイさんを追いかけて倒れてる所を発見しました。シャルちゃんさんが呼び掛けてからすぐに目覚めてくれたのでそれほどの時間は経ってないと思われますが……」
良かった、ジブリールの話通りならまだ間に合うかもしれない。
今すぐにでもグレモスの所まで行けばならない。
そう思い立ち上がろうとしたとき、自分の手に何かが握られてるのを確認する。
右手にはオーブがあった。
アスタトの物ではないと直ぐにわかった、何故ならその色は蒼い霧のような輝きを放つ物だったからである。
「ところでその右手のオーブはどうしたのよ。その色、アスタトの奴でもベリアルの奴でもないでしょ?」
「これは……このオーブは…………」
俺は辺りを見渡す。
そこには灰の山があった。
そして直前までの出来事を振り返る。
するとこのオーブの正体が自ずとわかった。
「……クラウスのだよ、多分な」
「クラウス!? あいつの魂何か手にしたの!?」
驚く反応を見せられたが無理もない。
苦しめられた敵の、それも死にかけの男から魂を得る為に刈り取ったようにしか見えないからな。
魔族のならまだしも人間から取った物であれば抵抗があるのもやむ無しだろう。
「……悪いことは言わないわ。それは砕いておきなさい。ただ暴れるだけの魔族ならまだしも、明確な敵意とずる賢さと目的のある人間、それも勇者聖教のクラウスに身体を奪われたら大変だわ」
確かに一理あるかもしれない。
だが俺にはわかる。
この中にはクラウスの記憶や力はあっても彼自身の魂はもうないと直感で理解した。
それに……もし仮にあったとしても、あの最期を見てもう邪念は打ち払われたと……そう信じたい。
「……いや、これは砕かない。俺が預かっておくべきものだ」
「どうして……! そんな危険人物の物を……!」
「だけど俺がずっと持ち続けておく物じゃない。これには受けとるべき人がいるんだ」
「返すべき……人?」
「だから信じてくれ。俺と……この中にあるクラウスの証を……」
これは……このクラウスが生きていた証は……受けとる人が必要だ。
どんな結果であれ兄が生きていた軌跡を……弟であるアーサーさんが知る必要があるんだ。
だからこれは俺が借り受ける。
この騒動が終わるまで……彼の魂を継承する。
「わかった、それのことについてはもう口にしないわ。全く……暴走したかと思えばあたし達が知らない何か知っちゃったみたいだし……」
それを聞いて俺はハッとしてシャルロット達に今の状況を知らせる。
「それよりも聞いてほしい。モルドフ王が危ない……! 【真実】の使徒のグレモスが魔力が切れた所を狙って力を奪おうとしているんだ……!」
「……っ!? グレモスさんが……? それに使徒って……」
「とにかく急がなきゃいけないんだ。全ての事が解決したと思って油断してる隙を突かれかれない。すぐにでも向かうぞ!」
自分の持ちうる情報を全て話すと皆はすぐに準備を整え出す。
ジブリールは俺に回復魔法をかけ、ルミンとアンクはいつでも動き出せるように構え、シャルロットはその場で浮いて俺に問いかける。
「状況が目まぐるしく変わって……正直着いていけないけど、あんたの言うとおりならグレモスをしばけば解決するのよね? ならあたしは信じて行ってあげるわ!」
「ルミンはいつでも行けるのだ!」
「わ、私はカムイさんのことを信じます。きっと今度も上手くいくはずです!」
「……すぐにでも向かえます。あとはマスターが合図をお願いします」
こいつらはどこまでも着いてきて信じてくれる。
俺を信頼してくれてる。
だから俺はそれに応えなきゃならない。
そう決意して息を飲む。
「グレモスは城から動いてないはず……そして帰還するモルドフ王を狙うはずだ! ……行くぞ!」




