幻影剣舞-仮面舞踏《ファントムナイツ-マスカレイド》
「調子に乗るなよ……! ボクはキミ達なんかには負けない……! 認めてもらうために……期待に応えるために……! 才能がないと怠ける凡人の何倍も努力を重ねてきたんだ……! 努力も、犠牲も大量に払ってきた……こんなところで……躓くわけにはいかないんだ!!」
まるで主人公のような台詞を吐くクラウスであったが判明してることだけでも外道としか言えない所業を犯しているだけに全く同情できなかった。
俺はルミンと空中で戦ってる最中のクラウスの死角をつくように攻撃を加える。
しかし、その攻撃は紙一重に届かずに避けられてしまう。
そして、無言魔法を使ったのか虚空から風が巻き起こりルミンがその場から飛ばされる。
「……何度でも言うけどボクには今、“心眼”があるのさ。キミ達の攻撃の軌跡は読めるし、不意打ちも効かないし、逆に死角からの一撃も容易いんだ。そしてこの“心眼”はボクの幻影剣舞に相性バツグンってことだ……よ!!」
クラウスが虚空に身を隠す。
そして辺りから剣が次々と飛び出す。
「またさっきと同じ実体化する幻影の剣か……」
「フッ……同じのばかりじゃ飽きちゃうかな? じゃあこういうのはどうだい…………幻影剣舞―仮面舞踏……!」
そうクラウスの声が響き渡ると浮かぶ剣達が一斉に刃を上に立てる。
そして剣の柄を持つように影のような姿をした騎士達が出現する。
出現した騎士達は一斉に襲いかかってくる。
攻撃を捌こうとするが身体に触れる瞬間、その身は虚空へと消えて行く。
ルミン達も同じように相手をしているが、こちらからの攻撃に対しては影のように消え再び実体化して攻撃を続けてくる。
「ルミンの拳が当たらないのだ!」
「魔法攻撃にも感知してるみたいね……」
「厄介だな。影のように消えては実体化してきて攻撃を絶え間なくしてくる。そして……攻撃に疲弊仕切ったその時に……!」
俺は死角となる場所を裏拳を叩き込む。
そして叩き込んだ拳に不意打ちを噛まそうとしたクラウスの刃に当たる。
「基本戦術は変わらないみたいだな。おかげで不意打ちは防げた」
「フッ、やるね。だけど何時まで持つかな……何回でも斬り込んであげるよ……!」
クラウスはまたしても虚空に身を隠す。
影の騎士達は休むことなく俺達に攻撃を仕掛けてくる。
だが幻影が実体化し、その動きがより複雑になっただけでやってることに変わりはない。
落ち着いて対処すれば何とかなるレベルだ。
問題は本体だ。
虚空に身をずっと身を隠されてはこのままジリ貧になってしまう。
かと言ってわざと隙を晒して攻撃を待っても影の騎士達の攻撃に対処できなければ意味がない。
どうにかして本体を探知して叩き出すようにしないと勝てない。
「ハハハッ!! 手こずってるみたいだねぇ!! じゃあ、更なるショーを披露してあげるよ……幻影剣舞―炎舞!!」
そうクラウスが再び叫ぶと影の騎士達は赤い炎を纏いだす。
炎を纏った騎士達はまたしても攻撃をしてくる。
そしてこちらの攻撃に触れると身を炎と化して火傷を負わせる。
また、纏う炎を分離させてこちらに飛ばす攻撃を織り交ぜてきて更に対処が難しくなる。
「熱いのだ! メラメラ燃えて触れないのだ!」
「炎の攻撃が増えて更にめんどくさくなったわね……」
「ハハハッ! もっと燃えるがいいね! 熱いダンスを楽しんでおくれ……! 業火のダンスをねぇ!!」
炎の熱で攻撃を避け続けるのでさえ苦しくなってくる。
騎士達は炎と化してこちらの攻撃は当たらずに逆にダメージを受けてしまう。
それが四方八方に出現して絶え間なく仕掛けてくるのだ。
ふと、俺は疑問に思う。
この炎の中でクラウスは何処に隠れているのかと。
幻影魔法で身を隠しているが奴の身体はこの空間の何処かにあるはずなのである。
そう考えると一筋の道が見えてくる。
幻影剣舞の攻撃や炎は実体化しているわけだから当然近くにいれば本体のクラウスも巻き込まれる。
奴の戦術は疲弊仕切った所を死角からの一撃で仕留める戦法なのだからクラウスは騎士達の側にはいないはずだ。
全体を広く見て判断する。
炎を纏った騎士達は至るところに配置されているがよく見ると配置されていない場所は一筋の道となっているのがわかった。
そして今、ルミンが騎士達の攻撃によろめいている。
丁度死角となる位置に騎士達がいないことを確認した。
ならばやることは一つだ。
「うぉおおお……!」
周りにいた騎士達を掻い潜ってルミンの元へ向かう。
そして丁度ルミンの真後ろの虚空に向かって拳を放つ。
予感は的中した。
その拳に手応えがあった。
虚空からクラウスの姿が出現し、殴られたクラウスは大きく吹き飛ばされる。
「ぐはぁ……!」
「やったぞ! 的中した……!」
だが吹き飛ばされたクラウスは虚空に消えて行く。
そして目の前に剣を構えたクラウスが出現する。
「何回言えばわかるかなぁ……ボクには“心眼”があるんだよ? キミがボクの移動する軌跡を見て攻撃を入れようとすることなんてお見通しなんだよ……! さぁ、これで終わりだよ……!」
マズイ、防御が間に合わない……!
来るとわかってて自分の幻影を用意してたのか。
このままでは殺られる……!
ドスッ……!
目の前で鈍い打撃音が響く。
前を見るとクラウスの腹に拳の一撃が入っていた。
殴った者の正体は……アンクだった。
「かはっ……! バ、バカな……! “心眼”で軌跡を読んだハズ……!」
「……“心眼”の使い方がなってないようですね。視野を広く持つこと……それが“心眼”の扱いの基礎です。マスターの後ろからの偏差攻撃も見切れないとはやはり盗人には過ぎた代物ですね。では返してもらいましょうか……」
アンクは更に爪を立たせ抉るようにクラウスを裂く。
攻撃の後にアンクはオーブのような物を手にしており、それを己の胸に宿す。
すると翼が展開され、更に力が溢れ出したのが俺からでもわかった。
どうやら“心眼”を奪い返したらしい。
ダメージを負ったクラウスはそのまま地面に倒れ、展開していた幻影剣舞も消滅する。
もう既に天使達も回復したガムラフさんとジブリールが殆ど戦闘不能状態にしたみたいだ。
地面に這いつくばるクラウスの元へ向かう。
「観念するんだな。もうお前に勝機はない。諦めて知ってることを全て話すんだ。罪が全て消えるわけじゃないが……それがせめてもの贖罪だろう」
「贖罪……? 贖罪だって……? ハッ、笑わせるな……! ボクは何一つ間違っちゃいない! ボクは…………何が何でも勝たなくちゃいけないんだぁああああ…………!!」
クラウスはボロボロの身体で立ち上がり片手で何かを持つ。
その手に握られているものには見覚えがあった。
禍々しい黒く輝くオーブ……アスタトの魂だ。
「それは……! まさか取り込む気じゃ……!」
「フフッ……ケイオスドラゴンを呼び込む為の触媒として使った物だけど……どうやら凄まじい力を得られる物なんだろ……? カムイ君があれ程の力を得られたんだ……ボクなら……更に力を引き出せるはずさ……!」
「止めろ! それに宿るアスタトに身体を乗っ取られるぞ!!」
警告に耳を傾けることなくクラウスは胸にオーブを押し付け取り込む。
全身の血管が浮き上がり肌がどんどん変色して行く。
だが、更にクラウスは手に何かを握りしめていた。
「ボクは……何でも利用する……だけど……魔族なんかに身体を渡すものか…………ボクの身と心は…………あの方の為にある…………!!」
クラウスは更に自分の胸に何かを突き刺す。
あれは……天使なった奴らが突き刺していた白い羽……?
「グォオオオオオオオオオオ……!! 全テハ…………【真実】ノ名ノモトニ…………!!」
更にクラウスの身体が膨れ上がる。
黒く変色した部分と光に包まれている部分が反発するように火花を散らし、混濁とした力がクラウスを包む。
その後一瞬、強く禍々しい光を放つと目の前に新たな怪物が現れていた。
その姿は巨大な悪魔のミイラと言った所か。
頭は口から上は包帯のような物で巻かれており、見える口は獣のように裂けていた。
背中からは巨大な悪魔の翼と灰色に染まった天使のような翼が生えていた。
腕は四本あってその全てに鋭利な爪が展開されていた。
全身を纏うような灰色の包帯の内側にある肉体は拒絶反応を起こしてかの如く腐りきり、絶え間なく粒子状の煙を放つ。
「ギャハハハハハハハハ……!! オシマイ……オマエラハ…………オシマイダァアアアアア……!!」
言葉は発しているが最早理性などは消し飛んだみたいであった。
獣のように這いつくばって向かってくる怪物に対して俺達は咄嗟に避ける。
壁に激突した怪物は建物の外まで勢いよく出ていく。
その後咆哮を上げてそのまま街のほうまで這いながら向かって行った。
「クラウスを止めないと……皆行くぞ!!」




