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グレモス

「はぁ……あの遊んでる三人のことは置いといてあたし達二人でさっさと解決しちゃいましょ」


「はい、それがマスターの命令ですので」



 カムイ達と別れた後にシャルロットとアンクの二人は勇者聖教のセブナット支部へ調査に向かおうとしていた。

 シャルロットがアンクにあることを尋ねる。



「ねぇ、あんたの“心眼”って確かクラウスって奴に取られちゃったんでしょ? 仮にこの先にクラウスがいたとしたらあんたは奪い返す為に戦うの?」


「えぇ、勿論戦いますとも。奪われた物は奪い返すまでです」



 戦う気が満々のアンクに対してシャルロットは窘めるように呟く。



「……それはあまり良くないかも。力を取られて弱体化した状態と取った力を得た相手じゃ戦ったら圧倒的にこちらが不利よ。それに向かう場所は勇者聖教の教会……クラウスのお友達も沢山いるでしょうしね。戦うことは極力避けたほうがいいわ」


「ですが…………いえ、その通りですね。確かに今は戦うことを避けるべき時ですね。マスターもきっと同じように言うでしょう……」



 アンクは気持ちをグッと押さえるように胸に手を当て冷静な意見を受け入れる。

 その様子を見たシャルロットはフォローするように話しかける。


「大丈夫よ。今は無理かもしれないけどあたし達があんたの力を取り返せるように手伝うわ。確かにアンクは向こう見ずな所もあるけど……いざという時の判断力は凄いだろうし何よりカムイが信用してくれたから今こうして一緒にやってるわけじゃない。焦らずに肩の力抜いてあたし達の力を借りてもいいのよ」



 向かう途中に会話をしていた時、アンクは足を止める。

 立ち止まるアンクに対してシャルロットは疑問の言葉を投げ掛ける。



「どうしたのよ?」


「……先ほどの話なんですが……向こうから出向いて来た場合はどうするべきでしょうか?」


「向こうからの場合? それなら…………」



 返事をしようとしたその時にアンクが見つめる方向をシャルロットは見る。

 視線の先にいたのは――あの例の男、クラウスだった。




「やぁ、アンクちゃん。そして隣のキミは賢者のシャルロットちゃんだっけ? こんな所で会うなんて奇遇だねぇ。カムイ君達とは別行動しているのかな? 良ければ一緒にお茶でもどうだい?」



 白々しく真正面から声を掛けてくる。

 シャルロットは驚きを隠せずにいたがすぐに冷静になってアンクのほうを見る。

 今にも戦い出しそうな闘争心を剥き出しにして歯を食い縛りながら威嚇をするように睨む。

 必死に高ぶる怒りを抑えながらいつでも戦えるように臨戦態勢を取っていた。

 どうやら先ほどの会話から立ち止まることを覚えたらしいがそれも時間の問題だろう。



「……何の用でしょうか。あたし達は予定があるのでお茶してる時間は無いんですけど」


「うーん、それは残念だな。じゃあ、その“予定”って奴をお手伝いしてあげようか? ボクはこの街に詳しいし協力してあげるよ?」



 どうやらこちらの動向を探る為に着いてくる気らしい。

 このままでは調査処ではないし何よりアンクが今にも戦おうとしている。

 とにかく、ここ市街地で戦い出すのはマズイ。

 騒ぎになればこちらから仕掛けたアンクが暴行をしたとして捕まるかもしれない。

 一旦この場から離れなければとシャルロットはアンクの手を取り撤退を促す。




 交戦秒読みの状況下で三人の間に一人の老人が入り込んでくる。

 その姿を見たクラウスはハッとして白々しい態度を止める。

 現れた老人の姿を二人は見る。



「グ、グレモス様……!」


「おやおや……クラウス君、こんな街中でナンパかね。だが相手は選んだほうがいい。この者達は王に招かれた客人なんじゃからね。さて、ウチのクラウスが少々迷惑を掛けたみたいじゃね。すまんかったの…………ではクラウスよ、そろそろ仕事に戻ってはいかがかな?」


「は、はい……! 失礼します……!」



 老人はこの国の魔法大臣であるグレモスという人であった。

 急に現れた人物に対して二人は呆気にとられてこの場を去るクラウスを見つめる以外できなかった。

 しばらくして落ち着きを取り戻したシャルロットはグレモスに感謝の言葉を述べる。



「すみません、さっきはありがとうございます。助かりました」


「いやいや……怠けてる部下を叱ったまでのことよ。それじゃ、ワシはこれで……」



 立ち去ろうとするグレモスに対してシャルロットは呼び止めて何かを伝えようとする。



「……少し時間を頂いてよろしいですか? クラウスのことなんですけど……」


「ほう? クラウスがどうかしたのかね?」


「はい、グレモスさんは彼について詳しいんですか? それと彼に関する重要なことなんですけど……」


「ふむ……なら場所を移動しようかの」



 グレモスはその場で杖を振ると地面から魔方陣が浮かび上がる。

 そして魔法陣は三人を囲んでその場から瞬間移動する。





「ここなら誰にも聞かれんじゃろう。さて、要件は何かね賢者の娘よ……」



 移動先は何処かの地下施設のようであった。

 パイプが至るところに張り巡らされておりその表面には魔法の回路のような物が刻まれていた。

 移動場所について多少は驚くもシャルロットはグレモスに話しかける。



「クラウスは……この国を陥れようと計画を企てています。現に隣にいるアンクは彼に力の一部を奪われました。私達はその計画の全容を知って止めなくてはいけません。どうか彼について知ってることを教えてくれませんか?」


「何と……クラウスが……それは大変じゃな。その計画とやらには全く覚えはないんじゃが……彼についてはワシの知る限り教えよう」



 グレモスはクラウスのことについてできる限り話した。


 彼は剣の名門の出でありながら魔法の才能にも優れており大変将来を期待された人物らしい。

 だがある時に父と大喧嘩をして家を飛び出し独学で剣と魔法を学んで力を付けて今の地位まで登り詰めたみたいだった。

 家を飛び出した時期に彼を拾ったのはグレモスであり彼の親代わりを務めていたらしい。


 知っていることを話してくれたグレモスであったが未だに彼が計画を企てていることに信じられないという様子であった。



「ワシは……信じられんな。彼がそんなことを企むような奴ではないと思っておったが……。恐らく邪な魔王の使い共に誑かされておるのじゃろう。こうなったのもワシに責任の一端がある。着いて来なさい」



 グレモスに案内されて広大な地下施設を歩く



「この地下は……魔力が満ちていますね」


「ここはセブナットの地下魔法回路じゃ。セブナットでの魔法の使用を強化する場所であり……この先にある物の動力源でもある」



 そして保管庫らしき場所へたどり着く。

 そこには付呪の紋様が付けられた大砲などの兵器、更には剣や槍などの武器の類いがあった。



「こ、これは……」


「ここに有るものを好きなだけ持っていきなさい。この武具達はこのセブナット地下魔法回路からの魔力を供給して使用できる魔法武具じゃ。戦いの役にも立つであろう……そしてクラウスの野望を止めてくれ」


「はい! ありがとうございます!」



 アンクとシャルロットは役に立ちそうな武具を片っ端から収納魔法で収納していく。

 そして粗方終わった後にグレモスに感謝を述べる。



「ありがとうございました。絶対に止めてみせます!」


「ホッホ……期待しておるよ。ワシも独自で調べてみる。分かり次第随時連絡を入れよう」



 グレモスは再び地面に魔法陣を展開して瞬間移動を行う。

 そして移動先は前に居た市街地であった。

 いつの間にかもう日が沈みかけていた。



「結局調査は出来ませんでしたが……得られた物は多かったですね」


「そうね、あいつ等への手土産にはなったわ。さっさと戻りましょう」





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