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騎士の舞踏場

 

「さぁ、爽やかな朝よ! ……で、今日はどうするのよ」


「そうだな……やはり気になるのはクラウスの動向か」



 モルドフ王も見抜いていたとはいえ計画の全容までは掴めていないみたいだった。

 彼の心眼は恐らく……アンクが持っていた物と同質の能力だろう。

 気配や感情の機敏を探知できるが思考までは読めないモノ……だが常に見張ってはいるらしいので計画が実行されようとした瞬間に捕らえることができる。

 このセブナット中を常に監視できるとは流石騎士勇者王と言ったところか。

 ……でもそうだとすると俺達がクラウスを追う意味があまりないな。



「じゃあまた街の中を探索するのだ?」


「……いや、重点的に絞って調査しよう。ジブリール、確か勇者聖教の教団員と会ったんだよな?」


「はい、怪しげな建物の前で私のことを見つけると複数人で私を取り囲みました。その施設周辺を調査するのですか?」


「うん、クラウスが勇者聖教に繋がっていることは確かだしそこを調べてみよう」





 ジブリールに案内されて街の中を歩く。

 周辺には路上で見世物や演劇をやっている舞台などがちらほら見かける。



「……ここはやけに賑やかだな。あっちは何かの演劇かな?」


「ここは通称“騎士の舞踏場”よ。元々はセブナットの騎士達が公開訓練する場所だったんだけど、それらをエンターテイメントとして昇華させて演劇としたのよ。今では職業として舞台で戦う演技をする“舞踏騎士”なんてものがあってセブナットの観光資源になってるわ」



 舞台で戦う演劇をする“舞踏騎士”か……そういえばアイリス姫の恋人のアーサーさんはセブナットで舞台俳優をしているって言ってたっけ。

 もしかしたらアーサーさんは舞踏騎士なのかもな。



「お、面白そうなのだ……」


「ダメですよルミンちゃん! 私達にはやることがあるんですから。もちろん私も観に行きたいですけど……ここはガマンですよ!」



 観に行きたいルミンを叱るジブリールであったが本心では行きたいみたいであった、それなら……。



「アンク、シャルロット、悪いが俺が二人を見とくから二人で調査して行ってくれないか?」


「はぁ!? あんたサボるつもりなの!?」


「……いや、よくよく考えたら獣人のルミンと神官のジブリールが勇者聖教に接触することはかなり危険だと思う。それに今の俺はアスタトの魂もないから万が一戦闘になっても役には立てない。シャルロットなら魔法で大抵の状況は打開できるしアンクも心眼がなくてもフィジカルはトップクラスだろう。それに二人なら任せられるし頼りになる……頼めないか?」


「私はマスターのご意志に従います。どうかお気をつけて」


「あんたねぇ…………はぁ、仕方ないわね。わかったわ、だけどルミンちゃんに傷一つでも付けたらただじゃ置かないんだからね!」





 勇者聖教の調査はシャルロットとアンクに任せてルミンとジブリールを引き連れて舞台会場まで足を運ぶ。



「本当によろしいのでしょうか……私達だけ遊んでいて」


「あの二人なら任せられるさ。それに一度ここにも来てみたかったし」


「おっきくて人もいっぱいなのだ!」





 太陽が燦々と照る中で席に座って舞台を観る。

 演劇が開始されると舞台上に錬成魔法が敷かれ建物や街のセットが即座に作られる。

 女優が舞台に登場し客席中に広がるような表現をして演技をする。

 どうやら想い人をかけて決闘をする物語のようだった。


 場面転換をするように辺りのセットが一度崩壊して決闘場が生成される。

 そして光魔法の演出によって主役が登場する。

 その顔は見知った顔であった、アーサーさんである。

 アーサーさんが登場すると客席から黄色い歓声が挙がる、大人気みたいだ。

 どうならお話の流れは貴族であるヒロインと平民である自分との身分違いな恋をしてしまったが彼女の許嫁である公爵家の息子の怒りに触れて命懸けの決闘をしなければいけなくなったらしい。

 決闘相手が舞台の反対側から怪しげな霧の演出と共に登場する。



「ボクが勝ったら彼女との交際を認めてもらうぞ!」


「クックック……勝てればの話だかな!」



 互いに剣を構えて切り付け合う。

 キンキンキンと金属音が舞台中に木霊してまるで本物の決闘のような白熱した戦いを繰り広げていた。

 そして長らく続いた戦いの末、鍔迫り合いに勝って相手の剣を弾き飛ばすことに成功する。

 見事に決闘に勝利し舞台はハッピーエンドを迎えたのであった。




「すっごく面白かったのだ! 迫力が凄かったのだ!」


「魔法を使った演出も中々でしたけどあの決闘はまるで本物みたいでしたね。手に汗を握る戦いっぷりでした」


「あぁ……こういうものは初めて観たが驚かされたよ。あの剣の動きは本物の騎士と見間違うほどだね」



 舞台が終わり各々の感想を言い合っていると何処かから声をかけられる、今回の主役だったアーサーさんだ。



「あなた方も来てくれてたんですね。楽しんでいただけましたか?この舞台は小規模の演劇だったんですけど……アイリスが来てくれる数日後の舞台はもっと凄いですよ。是非また入らしてください!」


「えぇ、とっても良い舞台でしたよ。数日後の舞台も頑張ってください」



 アーサーさんが来てくれたお礼を言ってくれて軽く会話をしていると更に後ろからアーサーさんの肩を掴む人物が現れる。

 その人物は強固そうな鎧を身に纏う大男であった。

 肩を掴みながらアーサーさんの頭に向かって睨むように話しかける。



「……あぁ、アーサーさんよ。今月分の回収に来ましたぜ。……舞台裏まで来な」


「ダ、ダバスさん!? 今月分はもう納めたはずでは……?」


「…………連れか? 談笑なら後にしやがれ。さっさと来い」



 半ば強引に舞台裏まで連れて行かれる。

 その様子を見て俺達は不審に思う。



「……何だか危険な予感がするのだ」


「見に行ってあげなくて大丈夫でしょうか……?」


「確かに様子がおかしかったな……こっそり付けてみるか」



 舞台裏まで忍んで追って行く。









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