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庭園にて

 日の落ちる夕暮れ時……俺達はモルドフ王からの招待で王の庭園に入ることが許された。

 庭園の入り口まで来ると衛兵に入り口を開けてもらう。


 中に入ろうとすると二人の男性が庭園から出てくる、あの二人は……セブナットの聖騎士長と魔法大臣か。

 共にセブナットのナンバー2の地位を得ている人間だ。

 謁見の時に並んでいたのを見たな……聖騎士長のほうはライハルトって名前だっけ、厳格そうな強面の人だ。

 魔法大臣のほうはグレモスって名前だったな、滝のような白い髭を生やして杖をついてるいかにも魔法に精通してそうな風貌だ。


 庭園から出てくる二人はこちらに気づいたのかこちらと目が合う。



「貴様等は……賢者マーリンの娘とその付き人達か。王が庭園へお招きするのは我々のような国の運営に関わる重要な立場の人間か王が直々に興味を持った人間のみだ……くれぐれも粗相や無礼のないようにな。はっきり言って私は貴様等を信用していない。昨日は真偽も判別できぬ譫言を呟いていただけだと思っていたが……王の意思ならば仕方ないというだけだ」


「ホッホッホ……ライハルト殿、これから王の庭園に招待される者達にそのような台詞はちと酷ではありませんかな? 王の意向は我々にも把握できぬ……それこそ神の溝知る所ですな。だが王の興味を引いたのもまた事実……我々はその結果を見守るだけですぞ。ではお行きなさい旅のお方……」



 若干嫌味ったらしい台詞を吐かれた気がするが二人に挨拶をして庭園の中まで足を踏み入れる。




「き、綺麗なのだ! お花やお水が夕日でキラキラしてるみたいなのだ!」


「……ここがモルドフ王の庭園なのね。噂には聞いてたけど自分の足で入る機会があるだなんて思いもしなかったわ」


「とても綺麗で素晴らしい所ですね! 夕焼けに照らされて一層に美しく見えますわ!」



 モルドフ王の庭園……世界各地から美しい草花を集め世界に名を馳せる一流の庭師達が作り上げた一つの芸術作品ともいえる庭園、それがこの“王の庭園”である。

 そしてこの地に足を踏み入れることが許されるのは世界で数えるほどしかいないという……そんな場所に俺達は立っていた。



「……人って凄すぎる物を目にすると言葉が出なくなるんだな」


「美しい……それだけの言葉で十分ではありませんかマスター」



 庭園の景色に心奪われていると近くから足音が聞こえてくる。

 その足音ではっとすると俺達は恐る恐る音の方向を見る。



「……何を突っ立っているのか。王の時間を無駄にするでない」


 足音の主はモルドフ王であった。

 腕を組み若干呆れたような様子でこちらに語りかけてくる。



「申し訳ありません。庭園の美しさに目を奪われておりました……」


「……王である俺に対する態度では落第点だが、この庭を見た感想は満点だな。特別に大目に見てやる。さぁ、さっさと着いてこい」



 モルドフ王に連れられて泉近くの休憩所らしき所まで案内される。

 先にモルドフ王が自分専用の椅子に座ると俺達は恐る恐る客人用の椅子に座る。



「……率直に聞こう。マーリンの娘よ、あのジジイは何故貴様に賢者の地位を渡した? それと奴は何を遺して行ったというのだ?」


 モルドフ王は肘を付きながらシャルロットを刺すような鋭い目付きで問答を投げ掛ける。



「……私の師、マーリンは魔王軍との戦いで命を落としました。そして彼の遺した賢者としての知識を受け取り賢者を継承させていただきました」


「……ほう、あのジジイは死んだのか。見た所お前とジジイとの間に血の繋がりはなさそうだが……ふむ、中々の魔力を有しているな。差し止め後継者としてお前を育て上げたのであろう」



 シャルロットは少しだけ俯く。

 そして再び顔を上げて語る。



「マーリンは……確かに私を賢者として育て上げました。しかし、その使命を受け継がせることに積極的ではありませんでした。私に自由に生きて欲しいと……危険な目に逢わせたくないと。ですが私はマーリンの……いや、父の生きてきた証を失わせなくないです。賢者としての使命だとか世界の運命だとかは理由ではありません。父が遺したモノ……それらを無駄にしたくないんです」


「……ほう、小娘の身の上話など時間の無駄だと言いたい所だが……どうやら魂のない予言受信マシーンではないようだな。己に一筋の芯がある者は嫌いではないぞ。……で、貴様は一体何をしにここセブナットまで来たというんだ? マーリンから何か預かってきてるのではないのか?」



 そう聞かれた途端、シャルロットは少し慌て出す。



「え、えぇと……三人の勇者を集めて……光の預言盤を使って……空の支配者と戦って……」


「……それは古来から伝わる伝承であろう。何かマーリンが発見した遺物や伝説などの知識がないのか?」



 シャルロットは青ざめて固まってしまった。

 その様子を見かねて俺はシャルロットに問いかける。



「……おい、確かお前の自宅で遺産として知識とかが書き記された映像が沢山現れたよな? それらの中にそういう物ってなかったのか?」


「あー……それは……」



 その様子を見てモルドフ王は大きく溜め息をついてしまう



「大馬鹿者が……その様子だと遺産を受け取っただけでその全てを頭に仕舞い込んだわけではないのだろう? 自分に必要そうな魔法の知識だけ覚えて難解なオーパーツの技術や古くさい伝説などは後回しにしたと見える……そして今日までそれらを覚えることなくノコノコと俺の前まで来たみたいだな」


 するとシャルロットは地面に頭を叩きつけるように土下座をする。



「申し訳ありませんモルドフ王! どうか命だけは御勘弁を……!」


「シャルちゃんさん!? あぁどうしましょう……! 首が跳ねらてしまいます……!」


「あわわ……どうすれば許してもらえるのだ?」


「……貴様等の首を跳ねてもこの庭を汚すだけだ。やれやれ……手間のかかる客人だ」



 そう言うとモルドフ王は指をパチリと鳴らす。

 するとテーブルの上に分厚く何も書かれていない本が召喚される。


「それに手を触れろ。貴様の中に刻まれた賢者としての知識が書き写される。貴様自身が覚えてなかろうと賢者として受け継がれたモノは身体に染み付いておるからな。……これ以上手間を掛けさせるな、さっさとしろ」


 シャルロットは分厚い本に手を触れると次々とページに文字が記されて行く。

 分厚い本にぎっしりと文字が書き連ね尽くすとモルドフ王はその本を手に取る。

 どうやら何とかなったみたいだけど……モルドフ王は昨日と比べると随分甘い対応をしてくれているな。



「……フム、これで一先ずは良かろう。あとは……そこの男の要件か。昨日のこととは別の要件があるのであろう? この俺の力が必要なほどのものか……聞かせてもらおうではないか」


「……はい、ですがその要件には昨日申し上げた物と繋がりがある物でもあります。どうかご了承ください」



 俺は緊張しながら話し出す。







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