夜の終わり
「ちょっと待った!」
物陰から人が出てくる。
ガムラフさんだ……!
「……俺の逮捕なら後にしてくれませんかね。見ての通り取り込み中なんですよ」
「わかっている。お前達が駆け出してからずっと追っていたからな。……そして見たぞ。リアン勇者パーティの歪みを……」
「ガムラフさん……」
「お前を縛る罪はもうない。俺が保証してやる!そして、あいつらが生み出したモノを共に成敗しようぞ!!」
ガムラフさんが俺達を認めてくれたみたいだ。
「浸ってる場合!? さっさとやっつけるわよ!」
シャルロットが魔神に向けて火炎魔法を放つ。
その布のような身体は見た目とは裏腹に火は通さない。
魔神は火炎を腕で払いのける。
「こいつ……中々ヤバいわね……」
シャルロットの方を向いた魔神はその腕を一度バラバラにさせて鋭い槍のような形状に形を変える。
あの魔神は確かリアンと共に戦った時に……!
「気をつけろシャルロット! そいつの腕は伸縮自在だ!」
俺の言葉のすぐ後に槍のような形状の腕がシャルロットまで伸びる
シャルロットは間一髪で避ける。
腕は地面を貫き、さらに追うようにシャルロットに迫る。
「てやぁ!!」
飛び込んだルミンの爪が無数の包帯のような物で構成させた腕を切り裂く。
ルミンはシャルロットを庇うように構える。
「大丈夫なのだ?」
「えぇ、ありがとうルミンちゃん……こっから反撃よ!」
「わかったのだ!!」
前に戦ったのと同じモノならこの魔神には斬撃が有効だ。
身体を構成する布らしき物は斬撃に弱い。
リアンもそう対処していた。
「ガムラフさん、乗ってください!」
ジブリールが地面に再生成を掛ける。
ガムラフがいる場所が盛り上がり魔神の上を取る。
「くらえっ!!」
ガムラフは剣技で斬撃を放つ。
翼らしき部分と腕は細切れになる。
魔神は落下するがすぐに再生していく。
やはり明確な決定打を与えないと。
俺は魂を使い悪魔形態になる。
魔神の心臓部……灰色の球体に決定的な一撃を入れてやる……!
魔神の懐に潜り込む。
このまま一撃を……。
「ぐはっ……!」
魔神は突如球体から布を鋭く尖らせて生成する。
そして引き抜かれると俺は地面へ落下する。
傷が塞がらない……。
こいつ……見た目とは裏腹に聖属性なのか!?
俺の変身は解除される。
隙を見て魔神は俺達の元から飛び立つ。
方向は人のいる住宅街付近だ。
「ま、マズイぞ……!奴は自分の仲間を人間から生成する能力があるんだ……! 行かせてはいけない……」
「なんですって!?」
そう……あの時もそうだった。
突如、街に現れた魔神の討伐。
それがリアンが勇者になったきっかけともいえる出来事だった。
もうすぐ倒せる……。
そんな時に一人の小さな女の子が犠牲になった。
リアンは討伐に成功した。
……元が女の子であった魔神も一緒に。
彼女は凄く後悔していた。
自分の力不足で女の子が救えなかったこと。
女の子を魔神になったとはいえ殺してしまったこと。
彼女は功績を称えられた。
けれどあの場の彼女の心は後悔で一杯だった。
勇者になる資格を貰えてから真っ先に受けたのは自分の弱さのせいで失う命の数を少しでも減らしたかったのだろう。
一人でも多く救いたいのだろう。
あの時の女の子のような人を。
そして今……俺は同じような局面を迎えようとしている。
だが……今度は救えるはずだ。
俺だけじゃない、こんなに頼れる仲間もいる。
俺は叫ぶ。
「シャルロット! 俺を上空まで連れていってくれ!」
「はいはい……じゃあ、頼んだわ……よっ!」
上空から飛び降りて魔神の背中部分まで飛び乗る。
そして素早くナイフで翼を切る。
そのまま魔神は落下していく。
足音が響き渡り街の人々に魔神の姿が確認される。
その姿を見て逃げ惑う人々。
魔神は逃げる人を捕まえようと触手のように伸ばす。
「させない……!」
「のだ!」
ガムラフとルミンがそれぞれ剣と爪で断ち切ってくれる。
だがしかし、すぐに再生させられてしまう。
このままでは伸びては斬るのいたちごっこだ。
リアンはコアを一刀両断して倒していた。
だが、それを今の俺達にできるだろうか……。
俺はふと思い返す。
今晩だけでどれだけの敵と戦ってきただろうか。
アスタト、ベリアル、ベグゼン……そしてエリザベス。
どれもギリギリの戦いだったが切り抜けられたじゃないか。
今さら諦めるわけがない。
そして……俺は生き抜かねばならない。
リアンを……助ける為に。
その為に俺は持てる最大限のことをやるだけだ。
俺はソーマとアスタトの魂を取り出していた。
そして、それらを併用して使用する。
「うぉおおおおおお……!!」
魔力を十分に溜めた状態で両手に魔力を込める。
そして、タイミングを見計らいそれらを一気に放つ。
「…………!」
魔神は身構えるが間に合わない。
強力なエネルギー波は魔神の身体を呑み込む。
エネルギー波が終わった跡には魔神の核部分がまだ残っていた。
しかし、その核にヒビが入ってあるのを確認する。
「今だ、全員あのヒビに攻撃しろ!」
シャルロットがわかってますよと言わんばかりの表情で空中から魔法をチャージする
「雷の槍!」
ヒビ目掛けて雷の力を宿す槍が投擲される。
それらが直撃して魔神の再生を少し遅らせて更にヒビが入る。
「再生しようとする力が強いなら私が……!」
ジブリールが駆け出す。
そして杖の先に魔力を溜めてそれをヒビまで当てる。
「過剰回復!」
ヒビから一気に割れ目が広がり球全体が崩れかける。
もう少しだ……。
「うぉおおお……フンッ……!」
ガムラフが剣を投擲する。
剣が突き刺さり球はもう崩壊寸前だ。
「任せるのだ!」
ルミンは突き刺さった剣にラッシュを叩き込む。
剣は深く差し込まれていく。
核はボロボロになってついに……。
「………………!」
物凄い閃光を放ち魔神が決壊する。
その輝きは不思議と神秘性に溢れていた。
ついに魔神に勝利した。
空を見ると朝日が昇っていた。
長く辛い夜の戦い全てに終止符を打ったと実感した。




