魔王軍の暗躍
ジブリールと俺は街の裏路地を駆け回る。
「あれは……!」
小さな悪魔のような姿で腕と頭が蟻のようなモンスター、アントインプが謎のアイテムを持って飛び上がり各建物の上に次々と設置している。
「あれが街の人達を操っているのでしょうか……」
「間違いなくな……でもあれは使い魔モンスターだ。つまり、あいつらを使役してる親玉モンスターは別にいる」
「倒してしまいましょうか?」
「いや、なるべく目立つ戦闘は避けたい。あいつらの目的とボスを探し出すことが優先だ。……大丈夫、街の人達を見捨てるわけじゃない。あいつらも命が目的ってわけじゃなさそうだしな」
話と監視に夢中になっていると後ろから物音が聞こえる。
「グギィイイ……?」
マズイ、後ろか……!
攻撃すべきか……いや、でも迂闊な戦闘は仲間を呼ばれる危険がある
ここはあえて操られたフリを……。
「過剰回復……!」
ジブリールは杖先に魔力を込めてアントインプに突き刺す。
「グギョオオオオ……!」
アントインプは断末魔の叫びを挙げて体が内側からドロドロに溶けていく
「あっ……すみません!私、攻撃しちゃいました……どうしましょう……」
「やってしまったのは仕方ない。恐らく即死して仲間を呼ぶ信号は出せてないだろうが……断末魔を聞いた奴はここに来るぞ。……迎え撃つ準備はできてるか?」
「……はい!」
瞬く間に三体のアントインプがやってくる。
今度は臨戦態勢だ。
油断はできない。
ブラストボムを使うか……いや、あれは周りの建物に被害が及ぶし何より目立つ。
それならアレを……!
俺は牢屋で使ったマジックカードを取り出す。
「行け!火炎……!」
板を持って唱えるとアントインプの一匹が燃え上がる。
仲間の一人が燃え上がるのを見てモンスター達は狼狽える。
その隙を逃さずにジブリールは杖を地面に向けて回復魔法を唱える。
「成長促進……!」
地面のタイルの隙間から植物が急成長していく。
下からアントインプ達を絡め取っていき首や腕などを拘束する。
「止めだ……」
ナイフで頭を切り落とす。
今度は断末魔を挙げさせずに倒すことができた。
「やりましたね! ……でもこれ私のせいで戦う羽目になってしまったんですよね……」
「気にするな。ドロップアイテムも手には入るし何よりジブリールが居なきゃ俺一人で勝てたのかさえ怪しい。さて、漁るか……」
アントインプからは牙や羽などが入手できた。
が、これだけがドロップアイテムじゃないだろう。
レアな物を確実に持ってるはずだ。
「これか……?」
先ほど倒した三体から緑色の球体のような物を発見する。
「なんとも不思議な物体ですね。ぶよぶよとした風船のような。あっ……!」
ジブリールが触っていると誤って指先の爪で球体を裂いてしまう
裂けた隙間から何とも言えない香りのガスが俺達を包む
「ゴホゴホ……な、何度も何度もすみません。これは……毒ではなさそうですが匂いは身体に染み付きますね」
「だ、大丈夫だ。これは結局、何のアイテムなんだ……?」
匂いにまとわりつかれた俺達は背後の存在にまたしても反応が遅れる。
アントインプの一匹がこちらを見つめている。
「あ、あれは……またあのモンスターですか!」
「クソッ……キリがないな」
俺達は身構えるがアントインプのほうが何か様子がおかしい。
俺達を見て戦闘態勢にならないのだ。
「…………?」
そのまま近づいてくる。
すると横を通り過ぎる直前にこちらを見て敬礼のようなポーズをとり、その後通り過ぎてしまった。
「……え、あれは何だったんでしょうか」
「待てよ、いつの日か聞いたことがある。昆虫型の群れを作るモンスターは自分達を見分ける為に匂いで判別していると。もしかしたら、さっきの匂い玉が俺達を仲間だと認識させたんじゃないか?」
さっきの匂い玉の効果がこんな形でわかるとはな。
「あの匂い玉にそんな効果が……もしかしたら私達裏からコソコソしなくても堂々とあのモンスター達に混ざりながら調査できるのでは……!?」
「いや、使い魔が一種類とは限らないぞ。それにこの匂いもどれくらい持つかわからないからまだ迂闊な行動はするべきではないと思う」
「そ、そうですよね。軽率で安易な発言をしてしまいました……」
「でもこれは大きな収穫だぞ。これもジブリールのお陰だ。ありがとう」
「カムイさん……」
気を取り直し街を見回る。
徘徊する人々も続々と噴水広場に向かっている。
ただ俺達は今のところ情報を掴めていない。
アントインプ達の親玉を探すには……あいつらの行動をもっと観察すべきか。
空を滑空するアントインプが地上に一匹降りてくる。
キョロキョロと見回していると何かに反応したのか裏路地まで飛んでいく。
「……あれについて行くか」
「行きましょう!」
アントインプを尾行する。
しばらくしているとまた別の数匹が集まってくる。
何かを待っているのだろうか。
何が目的で集まっているのかを調べる為にしばらく待つ。
そしてアントインプ達の集まりの所に何者かが姿を現した。
あれは……恐らく悪魔族だ。
魔王の配下の種族である。
悪魔族の男はアントインプ達を集め話し出す。
「街中に呪いは置き尽くしたな。いよいよ我らの魔王様へ捧げる人間共を魔王国領まで輸送する計画は最終段階に入る。さぁ、アントインプ共よ急げ! ガルーダの持つ鉄檻を用意するのだ!」
アントインプ達が一斉に羽ばたく。
悪魔族の男は飛び去った使い魔を見送るとこちらを見つめる。
「……さて、そこの人間共よ。無駄なあがきは止めておけ。貴様らは魔王様に捧げられる身。抵抗などせずにおとなしくしておくのが身のためだぞ」
……!
まずい……こっちの位置がバレてたのか。
相手は魔王の配下の悪魔族。
それもかなり強そうな相手だ。
でも戦う他なさそうだ。
俺達は臨戦態勢をとる。
悪魔族の男は両手に魔力を込めながら名乗りを挙げる。
「フン……愚かな。我は魔王様の忠実な下僕、悪魔アスタトだ!貴様等の命を魔王様に捧げる為に我が貴様等を魔界に送り届けてやる!」




