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脱獄

  ◇


「何で信じてくれないんだ!」


「当たり前だろう!貴様の話しはデタラメが過ぎる。追放魔法で飛ばされて少女三人を成り行きで連れて柄の悪い冒険者を懲らしめてきただと?まったく……もうちょっとマシな言い訳をしたらどうだ」



 尋問室に連れて行かれそこで全てを話すがガムラフは信じてくれない。

 確かに……俺がこの人の立場ならとても信じられる話ではないが……。

 だが俺は真剣そのものだ。

 真実のみを話すしか俺にはできない。



「さっき話したことが全てだ……あとルミンやシャルロット、ジブリールは無事なんだろうな!?」


「……我らは憲兵騎士団だぞ?奴隷として売り捌かれようとした少女達を保護するのは当然であろう。身元がわかり次第無事に家族の元へ送り届ける手筈だ。商品に逃げられて残念か?」


「だから俺は奴隷商人じゃないって……」



 ダメだ、一向に話しを聞いてくれない。

 クソッ……どうすれば……。


 打つ手が見つからずにいると室外からガムラフの部下らしき人物が入ってくる。


「ガムラフ殿、その男に関する証言をお渡しします」


 紙をガムラフに手渡される。

 証言とやらが俺に有利に働くといいんだが……。



「ふむ……」


「だ、誰からの証言なんだ?」


「勇者ライア傘下の冒険者連合からの証言だ」




 冒険者連合……あいつらか!

 宿に留守をさせといた奴ら……。

 これは不利なんじゃ……いや、奴隷魔法を掛けてるはずだし大丈夫なはず……。




「……内容を読み上げるぞ。『私たちは獣人を含む三人の奴隷を引き連れる違法な奴隷商を見つけ取り押さえようとしましたが少女達を人質にして私たちを奴隷魔法を掛けて売られそうになりました』……だそうだ」


「あいつら……おい……! 全くのデタラメじゃないか!あいつらがルミンを……」



 俺は重大な点を忘れていた。掛けた奴隷魔法は命令を強制させるものであって意思を変えるわけじゃない。

 “何も喋るな”と命令されたわけじゃないあいつらは必然的に俺の不利になる証言をするに決まっていた。


 ガムラフはため息を吐き椅子から立ち上がる。



「貴様にはこれ以上の尋問は時間の無駄だ。近い内に裁判も行われる。数日間牢屋でその頭を冷やしておくんだな」


「おい、ちょっと待てよ!話はまだ……」



 看守に押さえつけられ連れていかれる。

 光の入らない冷たい牢屋に入れられることになった。

 クソッ……どうすれば……俺にできることはもう何も……。


  ◇


 冷たい夜が訪れる。

 晩飯は一欠片のパンのみ。

 腹が減る。

 暇を潰すものが何もない独房。

 石の冷たさが肌を伝わる。


 いっそ脱獄でもしてやろうか……。

 持ち物はナイフなどの武具や使えそうな物は没収されたが、そのまま使っても空であるシャルロットからもらったポーチは腰に着けたままである。


 しかし脱獄するとなるとまた大変である。

 脱獄に使えそうな物はブラストボムぐらいだが爆発はあまりに目立ち過ぎる。

 脱獄は諦めるか……というか腹が減る……。


 ポーチから収納魔法で食べ物を取り出す。

 生肉と……神秘のソーマか……。



 神秘のソーマを生肉に掛ける。

 生肉で腹を下す心配もソーマが打ち消してくれるだろう……多分。

 心配半分で食らいついたが案外いけたのでもう一つ食おうとポーチに手を入れる。

 神秘のソーマでもう一回……。



「……ん?」



 ソーマの瓶を手に持つと紙が貼られてることに気づく。

 なんだこれ……こんなの付けたっけ。

 それは魔法陣のような紋章が書かれており裏面には文字が書かれている。



 “この紙を燃やしなさい!”



 これは……おそらくシャルロットからのメッセージか?

 ポーチからの取ることを予測して何か策を練ったのだろう。


 しかし、俺の手元には火を起こせる物はない。

 再びポーチに手を入れる。

 火を起こせる物……念じればそれに近い物が出てくるはず。


 取り出せたのは板状にしたマジッククリスタルだった。

 これにもメッセージが添えられてる。



 “どうせ火魔法なんか使えないでしょうしこれを渡すわ。触りながら紙に火を起こすと念じなさい!”



 指示通りに従うと魔法陣の書かれた紙は燃え出した。

 すると燃えた箇所から魔法陣が地面に展開される。



「これで……いいのか?」



 しばらくすると展開された魔法陣が光る。

 輝きから腕が出て来て俺の腕を掴む。

 引き連れられるように魔法陣の中へ飛び込む。



「ちょっ……待て……うわぁあああ!」



  ◇


 輝きの中に飛び込み視界が閉じる。

 目を開けると知らない部屋の中にいた。



「はぁ……何とか上手くいったわね。全く……手間を掛けさせるんじゃないわよ。使い捨て魔法陣とマジックカードを使っちゃったんだから」


「カムイお兄ちゃん!戻ってこれたのだ!シャルお姉ちゃん凄いのだ!」


「あわわ……ホントに脱獄をさせてしまいました……おぉ、主よ。我らの罪をどうか御許しください……!」


「あんた達少しは静かにしなさい。バレたらどうすんのよ……」



 三人がいた。

 ここは何処だ?

 恐らくシャルロットが何かしてくれたんだろうが……。



「ここは……というかお前達、憲兵達に保護されて送還されたんじゃ……」


「ここは街外れの小さな宿屋さんの二階です。私がルミンちゃんとシャルちゃんを保護すると言って説得致しました。神官見習いとしての立場を活かせていただきました」


「いや、それでも護衛とか付けられるだろ……デルタールの神官なら特に……」



 会話を聞いてシャルロットが指先に魔法をちょこっと発生させながら話す。



「あたしがちょこっと変性魔法掛けたから作戦のガバガバ具合は何とかしたわ。このアホ神官にしてはよく考えた作戦だけど。この宿も偽名と魔法であたし達が泊まってるってことを隠してるから憲兵達も一晩くらいなら目を誤魔化せるわ」


「収納魔法内のアイテムに片っ端に使い捨て魔法陣を張るのはいいアイデアでしたね!上手く行きました!」




 脱獄させて助け出す説明をされたあと、シャルロットが真面目な顔つきで話し出す。



「あたし達も憲兵達から事情聴衆されたけど……あんた、前科者だったのね」


「……あぁ、成人まで冒険者として保護観察処分になってた。隠すつもりはなかったんだが……すまん」




 ため息をつかれる。

 やれやれとしたポーズを取りながら語りかけてくる。


「別にあんたの過去なんてどーでもいいのよ。恩もこれからの目的の為にもあんたは必要だしね。だから助けてあげたんじゃないの……」



 ルミンは事情はよくわかってなさそうだがこちらを元気付けるように話しかける。


「よくわかんないけどカムイお兄ちゃんのことだからきっと大丈夫なのだ!」


 ……ホントによくわかってなかった。

 でも、その言葉が俺に安心を与える。



 ジブリールは祈りを込めるようにしながら語りかける。


「カムイさん。償えぬ罪はありません。貴方の人柄を私たちは知っています。主より大いなる天命を授かり大義を背負っていると……数多の善行の為ならばたった一つの罪が赦されるわけではないでしょうが少なくとも償い続けることはできます。主の導きと祝福をカムイさんに有らんことを……」


 相変わらず宗教染みたことを言ってくるが、こちらに気をかけてくれてるは伝わってくる。

 みんな……俺のことを心配してくれるんだな。




「……さて、慰めの言葉はこれでおしまいにして今後のことについて話しましょうか。この街に長居することはもうできないでしょうし日が昇る前には出発しましょう。特にカムイは顔も割れてる上にお尋ね者なわけだから何らかの変装は必要ね……勇者ライアのことは一旦諦めましょう。今はこの街から出ることが目標よ」


「夜明け前か……今のうちにもう寝ておくか」




 部屋を見渡す。

 ベッドが二人分しかない……どうすりゃいいんだ……。



「あ、あたしはルミンちゃんと一緒に寝るわね。カムイはそこのアホ巨乳神官と一緒に寝てなさい……」


 俺はぎょっとする。



「えっ……ちょっ……え!?」


「カムイさんと添い寝ですか……私、鼾がうるさいってよく姉に叱られたのでちょっと心配です……」



 シャルロットはルミンをベッドに連れ込み撫で回しながら横になる。



「じゃあお休み!横で変な声立てて起こしたら承知しないんだからね!あ~モフモフを触りながら眠りにつけるとは最高だわ~」


「ふにゃぁ……お休みなさい……」



 えぇ……ど、どうすれば……。

 気がつけばジブリールは既に横になっている。



「カムイさん……?もしかして私と添い寝するのは嫌ですか……?」


「い、いやいや……そういうわけじゃ……」




 横になるがジブリールの吐息と体温が感じられて緊張して全然寝付けない。


「ん……むにゃむにゃ……お姉様……」


 寝付くの早いな……俺は全然眠れない。

 時々寝返りを打たれて身体が当たる。

 ホントに寝付けない……。




 眠れない夜を過ごしている間、街には夜の闇に紛れ何者かが暗躍していた。


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