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回復《ヒール》の神官

 青髪の……スタイルのいい女神官らしい行き倒れている子にスープを渡すと神だとか導きだとかよくわからないことを抱きつきながら呟いてくる。



「スープのおかわりが遅いじゃない……って、なにやってんのよ?」


「……腹が減ってそうな女の人を見つけたからスープをわけてあげたら……こうなった」


「あぁ、私の天使様……! 迷える私をお導きください……!」



 俺を空腹から救った天使か何かと勘違いしてるみたいだった。

 べったりとくっついてくる。



「随分なつかれてるじゃない。良かったわね」


「冗談言うな……どうにかしてくれ……手に負えない」



 シャルロットしょうがないわと言わんばかりにやれやれとしたポーズを取り神官服の女を揺さぶって問いかける。



「ほら、あんた。その男は天使様なんかじゃないわよ。おかわり欲しいならそいつに作ってもらいなさい」


「あら! 可愛い天使がもう一人も! ジブリールはとても幸運です……! あぁ、主よ……迷える子羊を見捨てない主の慈悲に感謝します……!」


「ちょっ……やめ……あぁ、もう! 面倒ね!!」



 ジブリールと名乗る女神官らしき人物はシャルロットにハグをする。

 抵抗しシャルロットが事情を説明しようとするも遮られることが何回も続いた。

 しばらくしてようやく落ち着いてくる。



「貴方達は天使様ではないのですのね……失礼いたしました。ですがこれも神のお導きの通り……空腹に飢え死ぬ運命だった私を救いになられました。これも主の御意志……」


「……これ本当に通じてるのか? 宗教家は皆こんな感じなのか……」


「多分、この子ぐらいだと思うわ……こんなのが何人もいたら疲れるわ。そういえば、あんたは何でこんなとこで行き倒れてたのよ」


「……! 失礼致しました……助けて頂いたのに自己紹介もまだだったなんて……神よ、どうかお許しを……」



 コホンと呼吸を整え胸に手を当てて自己紹介をし始める。



「私はジブリールと申します。出身はデルタールで、神殿において神官見習いとして神に使えていた者です。行き倒れていた理由は……一年前失踪した姉を探して奔走していたところ、食料も尽いて自分自身に回復(ヒール)を掛けながら体力を補ってたのですが魔力も尽きてしまい倒れていたのでございます」


「デルタールって……あの!? それに神官って……護衛も付けずに出歩いていいの!?」


「デルタール……聞いたことがある……というか行ったことがあるぞ……!“勇者”の天啓を司ってる世界最大の神殿都市じゃないか……それにそこの神官って……超エリートの家系じゃないか!?」


「神官と言っても見習いですし……それに次期神官長は姉のほうがずっと適任のはずですし……私なんかが居座る地位じゃないです。魔法も回復(ヒール)しか使えませんし」


「しかも神官長かよ!? ……駄目だ、理解が追い付かん」





 詳しく内容を聞く。

 探しているのは双子の姉のガブリエラという人である。

 姉のガブリエラが失踪したのは前触れもなく突然失踪してしまったらしい。

 姉のほうが次期神官長として選ばれる予定だったのだが妹のジブリールが継ぐことになってしまったみたいだ。

 ジブリールは姉が失踪してしまった理由を突き止めようとしたが手掛かりは掴めなかったらしい。

 ……そして誰にも内緒で一週間前失踪した姉を探しに飛び出してきたらしい。



「……今すぐ帰ったほうがいいんじゃない? 今頃デルタールは神官長候補が二人も失踪して大混乱だと思うわよ。ていうか、探すアテなんてないでしょ?」


「私達は双子です。私の顔がアテですよ! 双子ならわかりやすいですし街から街へ聞き込みに行ったのですが……未だに行方は掴めてません」


「……カムイ、この子やっぱりバカよ。それも筋金入りの」


「な……確かに私はグズでドジですが……うぅ、否定できませんね。やっぱり私なんかじゃ…………いや、でも私は一度決めたことを曲げるつもりはありません!絶対に姉を探し出してみせます!」


「意思は固いみたいだな……でもよく今日まで生きてこれたな……」




 ジブリールは俺の一言を聞いて自分の持つ杖を掲げながら少し得意げに微笑む。


「大丈夫ですよ! 私には回復(ヒール)しか使えませんが回復(ヒール)なら誰にも負けない自信があります。主が私に与えてくれた才能ですからね」


「いや、ヒールってただの回復魔法じゃ……それだけでモンスターと戦えるわけが…………うぉっ!?」




 会話をしている最中にモンスターが襲いかかってきた。

 匂いに誘われて来たらしい虎型の大型モンスターだ。

 不意を突かれた俺たちは身構える暇がなかった。



「やばっ……!」


「危ない……! 再生成(ヒール)……!」



 ジブリールが杖を地面を突くと地面が突如壁のように隆起しモンスターの攻撃を防ぐ。



「ちょっ……あんたそれ錬成魔法じゃない……!ヒールしか使えないって……」


「下がっててください!ここは私の過剰回復(ヒール)でなんとかします……!」



 杖を掲げ魔力を込めてモンスターに突き刺す。

 当たった部分からどんどん壊死していく。

 モンスターは堪らずその場から離れるが今度は中距離から素早く動きこちらに予測させないように動き回る。



「モンスターの声が聞こえたけど二人共どうしたのだ!? ……あ、知らないお姉さんがいるのだ。こんにちはなのだ」


「まぁ、お連れの方ですか。私はジブリールと申します。しがない神官見習いをやっておりまして……」


「呑気に挨拶してる場合か…………! あいつ口に火炎弾を……」



 モンスターの口から火炎弾が吐き出される。

 まずい……直撃する……!



還元(ヒール)……!」


 杖先に直撃するが瞬く間に火炎は収束され消える。



「何でもアリかよ……」


「……これ、あたしの魔法要らなくない?」


「ジブリお姉さん凄いのだ!」


「今、モンスターに止めを差します! バレずに近づくので援護を頼みます!」


「お、おう……」


変身再生(ヒール)……!」



 ジブリールは透明になる。

 ……ホントに何でもアリだな!

 俺とルミンはモンスターの周りを駆け回りながら牽制していく。

 シャルロットは空中から魔法弾を発射して動きを止める。



「……過剰回復(ヒール)!」


 突如モンスターの正面に現れたジブリールは額目掛けて杖を突き刺す。

 モンスターは頭から溶け出して完全に沈黙した。




「やりましたね! これも皆さんの協力有っての勝利です! 神の御加護が我らを死から遠ざけてくれました……感謝致します……!」


 笑顔でこちらと神への感謝を述べてくる。

 シャルロットがなんとも言えない顔で愚痴る。



「……一周回って嫌味に聞こえるわね。何あのヒール……どんだけ応用力あんのよ……」


「アレって実際ヒールなのか……?」


「一つの魔法適正が高いと他の系統に似た効果の魔法ができるって例は無くはないけど……あれは異常よ。魔法も全部回復属性だったし……」



 ジブリールが突然倒れ出す。


「だ、大丈夫か!? やっぱりあんな魔法は身体に負担が……」


 震える手でこちらに訴えかける。


「お、お腹が空きました……」


 思わずガクッとなる。

 魔力を使いすぎると空腹になる体質なのか。



「あんたのヒールは凄いけど、ヒールを使うのに絶大な魔力を消費するみたいね。さっきみたいに連発するのは身体に毒よ?」


「……私にはこれくらいしかできません。行き倒れてた私を救ってくれたのは貴方方ですし、せめてもの恩返しがしたかっただけです」



 俺はジブリールの中の危うさを感じる。

 自分のことをどこか軽く見てるような……。



「……君は優し過ぎる。その優しさがこの先誰かに利用されてしまうかもしれない。やっぱり帰るべきだと思うぞ」


「カムイさん……」





 ジブリールがキリッとした表情になる。



「私、決めました! 貴方方に着いて行きます!」


「……え?」


「姉を探すアテはありません! どうせなら貴方方の目的を果たす為に役に立ちたいんです! きっと姉も……この旅の中で見つかる気がします!これはきっと神の御意志です! お供させてください!」


「お、おい……どうしよか……」


「……介護は任せたわよ」


「よくわかんないけどまた仲間が増えたのだ!」


「それにカムイさんのスープ本当に美味しかったです! また食べさせてください!」



 半ば無理矢理着いてこられるようになってしまった……。

 女三人が椅子に座り待っている中で俺一人スープを煮込み続けるのだった。


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