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賢者マーリンの遺産

 

「単刀直入に言うと……あなたの“奇跡”の力、それが“勇者”のモノかどうか確かめさせて欲しいのよ。“賢者”であるあたしの使命は来るべき勇者様に天啓を与え覚醒させること。そして勇者の使命を全うする為のサポートをすることなのよ」


「……俺は勇者じゃない。世界で同時期に現れる勇者は三人まで。それにもう世界には勇者は三人揃ってる。女勇者リアン、騎士勇者王モルドフ、そして魔導勇者ライア……枠がそもそもない。外の情勢のことを知らないのか?」


「……それが変なのよ。勇者が三人揃ってるはずなのに“勇者の石盤”が起動しないの」



 シャルロットが指を差す方向を見る。

 何も書かれていない灰色の石盤がある。



「アレはあたしの師匠のマーリン様が生前から勇者様を導く為に使っていた予言書のようなものよ。……あたしが正式な賢者じゃなかったとしてめアレは勇者が揃えば何かしらの予言が刻まれてるハズの代物。アレが起動してないってことはまだ覚醒してない勇者がいるってことなの」



 勇者や石盤の説明をされてる中で俺はあることが引っ掛かる。



「……ちょっと待て。今、先代の賢者が死んでるって……それに正式な賢者じゃないって……」


「し、仕方ないじゃない……! 5年前に死んじゃったんだから……。それに20年以上賢者としての訓練はしてたんだから賢者としての素質は十分に……」


「あんた今幾つなんだよ!?」


「レディに年齢を聞くなんて失礼ね!! ……まだ20代よ。」



 少しヒートアップしてしまったがしばらくして落ち着く。

 脱線した話から元に戻す。



「……つまり、世界にはまだ勇者は覚醒仕切ってないのよ。三人の中で誰かが偽物の勇者なのか……ただ勇者として覚醒仕切ってないだけなのかわからないけどね。……つまり、まだ枠はあるのよ」


「そんな穴埋めの補欠みたいに……というか候補とかが複数いていいのか?」


「別にあり得ない話じゃないわ。何らかの理由で勇者が欠けても才能があるなら勇者になれるわよ。そして、あなたは“奇跡”の力を持ってる。天啓を授かる前から持ってるケースは聞いたことないけど才能はあるってことよ」



 俺が……勇者?

 いや、そんなバカな……。

 リアンと並ぶ存在……? 俺なんかが……?




 シャルロットの話は続く。


「……ここまでが勇者の話よ。もう1つはあたし個人のお願い。というかこっちが本命ね……これを見て」



 地下室まで案内される。

 巨大な装置があった。

 巨大な水晶の板を中心に幾つものクリスタルとそれらをセットする土台があった。



「……あたしが高純度クリスタルを大量に求めた理由よ。これは師匠のマーリン様が残した記憶媒体。あらゆる魔法知識が詰まってる。……そして、ここには……師匠の……ううん、お父様の遺言があるはずなの……」


 暗い表情をして語る。

 遺言……それがこの装置に……でも一体何故ここに……?



「……5年前、この森に魔王の大軍が来たの。お父様はあたしを戦わせなかった。一人で大軍を相手して……そして殺されたわ。魔王軍は置き土産にこの森に呪いを残したわ。クリスタルの輝きを活発にさせる為の太陽光。それを射し込ませない為に深い霧の森に変えてね……」


「森がやけに霧が濃かったのは呪いのせいだったのか……」


「……悲しみに暮れてる暇はなかったわ。賢者が世界から居なくなったら世界はこの森のように光が射し込まない闇の世界になってしまうわ。あたしは賢者の使命を継がなきゃいけなかった……」



 装置に手をかけながら話は続く。


「でも、一つアクシデントが起きた……装置そのものは加護によって守られたけど……エネルギー源のマジッククリスタルが殆どが砕かれたの。おまけにマジッククリスタルの輝きも霧で十分に発揮できない。引き継ぐ為の知識、魔法……お父様が残したはずのメッセージもわからなくなったわ」




 今度はふざけた素振りを感じさせない真摯な気持ちが伝わる頭の下げかたをしてきた。


「……お願い!! 本当に賢者として覚醒するために…………お父様の最後のメッセージを知る為にマジッククリスタルを譲って欲しいの…………!! 埋め合わせは絶対にするわ……! お願いよ…………」




 ……断る理由も意味もない。

 ここまでされて断るなんて俺にはできない。



「……カムイお兄ちゃん?」


「あぁ、わかってる。シャルロット、お前にクリスタルを全部譲るぞ。……そして師匠の……親父さんの最後のメッセージを聞いてこい」


「ほ……本当? いいの……?」


「これでいいんだろ?」



 台座にクリスタルを次々に乗せていく。

 中央の水晶が輝きだす。

 そして……。



「これで……よし……! 全部の台座にセットしたぞ。出力は十分か?」


 シャルロットは指先で水晶の板に触れる。


「多分……大丈夫。いける……! このプロセス通りに……起動!!」




 水晶が一段と輝きを増す。

 そして次の瞬間、辺りに文字や映像が投影される。



「すごいのだ! 魔法の力っておとぎ話みたいなのだ!」


「……ホントに凄まじい量の知識だな。流石は賢者様の記憶媒体……」



 辺りの文字や映像に夢中になってる俺たちとは対象的にシャルロットは一心不乱に一つの物を探しているみたいだった。

 そして、ある一つの物を見つける。



「…………“親愛なる愛娘へ”。これかしら…………?」


 恐る恐る起動する。

 すると、ある一人の老人が写しだされる。



「……シャルロットよ。これを見てるということはワシはもうこの世にはおらんということだな。今からワシの遺言を話す。心して聞いてくれ……」






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