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勇者パーティの汚点

 

「うぉりゃあああ!!」


 大男の巨大な剣の一振りでゴブリンが一刀両断される。

 ゴブリンの仲間達はその様子を見て逃げ惑う。


火炎(フレイム)!!」


 女魔法使いは逃げ惑うゴブリンに追い討ちで火炎魔法を放つ。

 ゴブリンは一瞬で黒焦げになる。


「グゴォォ!!」


 周りのゴブリンより一回り大きいリーダーのゴブリンが手持ちの棍棒で振りかぶる。


「……見切った!」


 それを金髪の女勇者が剣を抜き出したかと思うと瞬く間に切り刻み勝負が着いた。


  ◇


 俺は職業盗賊のカムイ、先ほどの戦闘をした冒険者達のパーティに入れてもらってる冒険者だ――だが見ての通り俺の出番はない。



 彼らは異常な戦闘力の持ち主で他の冒険者パーティとは比べ物にならない。

 特に国から“勇者”の称号をもらっているリアンは俺の知ってる限りでは一番の冒険者だ。

 そんな俺のパーティとしての役割は――簡単に言えば主にはアイテム取得。

 ゴブリンとかの巣を作る奴らからアイテムを掻っ払ってきたり倒したモンスターの死体から使えそうなモノを回収したりと……溝さらいのような役割だ。


 勿論、戦闘で何もしないわけじゃない。

 先制で奇襲を仕掛けたり罠を置いたりすることもあるが……ぶっちゃけ俺が居なくても三人がどうにかしてくれる。



 じゃあ、何でそんな片身が狭い思いをするパーティに所属してるかというと……単純に俺一人だと冒険者としてやっていけないから。


 俺は元々は身寄りのない孤児でスリで生計を立ててたんだが捕まってしまった。

 当時は8才ほどだったんで投獄は免れたんだが更正として冒険者ギルドでの冒険者登録をする羽目になった。

 ただ、俺には戦闘の才能はなかったらしく結局、スリ時代とあまり変わらない盗賊として冒険者をしていく羽目になった。

 前科者の俺をパーティに入れてくれる奴らなんてそうそういない。

 ずっと孤独だった、心にぽっかりと穴が空いていて空虚だった。

 そんな時、俺を8年前にパーティに誘ってくれたのは当時見習い剣士だったリアンだった。



「そこの君! 私のパーティに入らない!?」


「えっ、でも俺……前科者の盗賊だぞ? 他の奴を誘ったほうが……」


「いいの! 私は一番最初に目があった人をパーティに入って貰うって決めたの! それに君、私と同い年ぐらいだよね? ゼンカモノ……ってよくわからないけど過去なんて関係ないから……ね!?」



 彼女は無茶苦茶だったが眼に希望のような光を宿していた。

 こんな俺を誘ってくれたことに感謝してもしきれない恩。

 その後何度パーティを編成しても俺をパーティに置いてくれた。

 辺り魔物の主を倒した時も呪いにかかった村を救った時も魔神を倒して勇者の称号をあいつが授かった時も俺は居た。

 ――だが年月を重ねるにつれて俺達の距離は日に日に遠くなっていった。


 戦闘の経験を重ね成長していくリアン。

 戦闘に大した貢献が出来てない俺。



 パーティが強くなるほど周りの奴らはこう噂した。

 “盗賊のあいつはリアンパーティの汚点、前科者の癖にコネで入れてもらっている”と。

 当然、リアンにもその陰口が耳に入る、そのたびにあいつは口を出して俺なんかの為に喧嘩沙汰になることもあった。


 今も俺はリアンのことをずっと側で見つめていたい。

 だが、俺には彼女の力になれないどころか足手まといだ。

 冒険者として――あるいは一人の男としてリアンの為になれることがあるのだろうか。



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