ピストル
「がはっ・・・ぐっ・・・」
ゴッ ガンッ
「調子に乗るなって、言ったでしょ!」
「こんな洒落た髪型して来ていいって、誰も許可をあげてねーよ!」
ドカッ
「がっ・・・」
一人の少女の手首足首を、縄で縛りつけ、暴力を加えている者達がいた。
その数、男女十数名。
さらにその周りにはもっといる。
それを眺めているのは、お分かりだろう、三浦和正と岡崎世良。
殴られ蹴られ、少女・・・小百合は朦朧とする意識の中、後ろ手に携帯を隠し持っていた。
それは昨日、八人の「友達」から貰った物。
信用してくれるなら、持っていてくれ。このボタンを押せば、すぐに駆けつける。
助けてやるからな、心配せずに持っていろよ。
そういって渡され、別れた昨日。
本当に、頼っていいのだろうか。
厚かましく思われないだろうか。
でも、あの人たちの眼はまっすぐな眼だった。
こんな私を受け入れてくれた。
失いたくない友達。
だからこそ・・・頼るね。
小百合は、ボタンを押した。
ピピッ
若宮の携帯に、着信が入った。悠樹からだった。
「なんだ!!見つかったか!!」
「班長、小百合ちゃんからSOS来ました!いま探ってますから、皆連れてF海岸周辺に来てください!!」
「わかった、すぐ行く!!」
七人が海岸に着くと、ものすごい速さでパソコンキーを打っている悠樹がいた。
悠樹はかなりのプログラマーなのだ。
「どう!?小百合の居場所、出た!?」
「もう・・・ちょっと・・・。・・・出た!K河岸沿いのB3倉庫だ!!!」
「よし、いくぞ!!!」
「ふふっ、いい気味。」
高みの見物と言ったところか、声を漏らしたのは岡崎世良である。
「ありがとう、遠藤君。おかげで気分が晴れるわ。」
「ハハッ、いいんだよ別に。俺もあいつ邪魔だったしさ。」
「でも、どうやってこんな人数そろえたの?」
「簡単だ。あのへんの中学生は金バラ撒いたら着いてきたし、あとはがっこのボンクラ連れてきただけだぜ。」
「さすがね。ああ、ほんーっといい気味!アーっハハハハ!!!」
「ハハハハハ
ガラガラガラ ガッシャアン!!!!
いきなり閉めていたはずのシャッターが上がって、辺りは静まり返った。
浮かぶのは、八人のシルエット。
最初に、三浦が口を開いた。
「なんだよ。お前ら。たったの八人で殴りこみかァ?」
「三人は女よ?ばっかじゃないの?アハハッ」
途端に笑いが広がる。
「女なめんじゃないわよ!!!!!」
し・・・ん
可憐が怒鳴った。
今度は五十嵐が怒鳴る。
「ソイツいじめるのは、俺達倒してからにしろよ!!!!!」
「かかって来いやァ!!!!!」
京介の一声が運動会のピストルのように、8対50の戦いが始まった。