何でそうなる?/影
「やはりな。」
最初に口を開いたのは紫乃だった。
「岡崎世良も、女子のリーダー的存在でしょうね。」
真理も感づく。
「三浦と岡崎はグルだな。三浦・・・もとい、遠藤司はなぜ三浦和正と名乗っているか、わかるか?」
京介の問いに、小百合は首を横に振った。
「分からない。でも、岡崎さんは私の事をすごく嫌っています。」
「見えたな。つまり岡崎は鮎川のことを嫌い、三浦は岡崎に手を貸し、全校がお前のことをいじめるように手を回した。教師にも。」
巧がたんたんとまとめていく。
「よし、鮎川、俺達と仲良くなったことは誰にも話すな。どこから主犯の耳に入るか分からないしな。・・・ちょっとの間だけだ。俺達が、やつらを少年院に送るまで。要するに、
潰すまでの間。」
「よーし、明日から反撃だ!!小百合、まだ2時だから!遊びに行こうよ!!」
「え・・・?いいけど、どこへ・・・?」
「ショッピングセンターよ!!ついでにゲーセンよって行こ!」
「あぁもう、ツっこむ気も失せた。」
「おい坂本、お前いい加減に・・・」
「班長もどうです?」
「断る。」
いきなり買い物と言い出した可憐と、珍しくツっこまない巧と、巻き込まれた若宮を横目に、五十嵐と悠樹と京介はコソコソとなにやら話していた。
「おい、やっぱ気になるよな。」
「うん。僕も下から見上げたときから。」
「すげー気になるよな。あの・・・」
『前髪の下。』
それをちゃっかり聞いていた真理は、小百合に声を掛けた。
「小百合ちゃん、ちょっと前髪上げてみて?」
「え、いや、私自分に自信ないから・・・///」
『俺達すげー気になるんだけど。』
「ほら、上げてみて?」
「・・・ちょっとですよ?」
小百合は目をつむり、前髪を右手で掴むと後頭部へ持っていき、ゆっくりと目を開けた。
「・・・わぉ。」
薄い反応を返したのは、紫乃だけだった。
全員、硬直。
本来結構メンバーの女子三人は美人だと思われるのだが、小百合も彼女達と並ぶほど。いや、三人よりかわいいかも。
大きい瞳、筋の通った鼻、ピンクの唇、愛らしい表情、普段の暗い面影はどこへやら。
人って変わるもんだな・・・と紫乃は一人思った。
「小百合ちゃん、すごく可愛いね!!」
「なんでそんな隠してるのよ!!ついでに美容院もいきましょ!ほら、あんた達もいつまで固まってんの!」
と、いうわけで(?)全員可憐の買い物に引っ張り出されたのである。
着いたのは、大規模のショッピングモール。
現地には小学生(仮)九名と大人一名。
小学生だけでは行ってはいけない決まりなのだ。つまり、保護者同伴。
で、例の大人とは、もちろん・・・
「はぁ〜なんで俺、司令官なのに保護者役やってんだろ。」
京介にまたまた言いくるめられて連れてこられた、田辺である。
今回は可憐も加勢して、
「司令官、今ならもれなく私の【絶対モテる、可憐のスペシャルコーディネート】が受けられますよ?」
と、誘惑に負けて、連行されたのだ。
この二人が手を組んだら、恐ろしいことに巻き込まれるなと、紫乃は平然と思った。
「レッツゴー!」
かくして、皆引きずりこまれたのだった。
それを遠巻きに睨む、何人かの影があったのだが。