4話・使い魔と名前
僕は今少女に抱っこされて、草花広がるのどかな街道を進んでいる。時折柔らかな暖かい風が吹き、彼女の長い金髪が風になびく。とてもやわらかい、いい香りがするのだが、油断しているとたまに彼女が背中にいきなり頬をすりよせてくることがあり、少しびっくりする。まあ、当の彼女は「んん~♪もっふもふぅ、ふわふわ~♪」なんて言ってくれるから、僕もまんざらではないが。
「あ、ほら~、あの大きな建物がギルドだよ?」
気持ちよくてうとうとしていた目を開け、そっと前を見てみる。すると、いつの間にかあたりは広場になっていて、多くの人でにぎわっていた。そして、彼女が指さした方向を見ると、そこには周りの家や店より一回りほど大きな石造りの建物が建っていた。
「くおーーん・・・(おおー)」
「すごいでしょ?ここでコンちゃんも”使い魔”に登録すれば一緒に冒険できるんだよ!」
まあやったことないけどね、と照れくさそうに微笑む。不覚にも見惚れたけど、かわいいから許す。一瞬彼女の眼が細まった気がしたけど、きっと気のせいかな?まあいいや。ギルドの閉ざされていた扉の前で彼女は僕を静かにおろし、両手で扉を開ける。
「いらっしゃーい!・・・お、リンちゃん!おはよう!」
掃除をしていたらしい短い茶髪の店員さんが朗らかな笑顔で迎えてくれる。そういえばこの子、リンって呼ばれてるんだね。リン、リン・・・うん、覚えた。しかし、店員さんに名前を覚えられてるってことは、ギルドの中では有名なほうなのかも。あるいは友達とかかな?
「おはようございまーす!ねえおねーさん、仕事中悪いんですけど、受付やってもらってもいいですか?なんか今どこも空いてないみたいだし・・・」
リンはどうやら受付らしい奥のカウンターを見てつぶやく。奥にあるカウンターは、どこも人で溢れかえり、賑わっていた。
「ああ、この時間は混んでるんだよね。今日はいつもよりここに来るのが遅かったじゃない。ま、理由はなんとなくわかったけど」
店員さんは僕のほうをチラッと見てから、僕らにどこかのテーブルに座るよう促して書類を取りに行った。
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「で、たぶんその白い狐を使い魔に登録しようとしてるんだよね?」
「おお、さすが。そうなんです。でもこの子の種族名わからないんですよね。昨日動物図鑑とか魔物図鑑とか見てみたんですけど、どこにも載ってないし。確か、種族とかいろいろわからないと登録できませんでしたよね?」
「それについては大丈夫だよ。ステータスとか確認できる道具があるから。それにしても、今更新種かもしれない魔物なんてね~。ここ辺境だし、もうあらかた見つかったものだと思ってたんだけど」
・・・僕はどうやらいろんなことで目立ちそうですね?良いけど。別に良いんだけど!心の片隅にこう・・・目立たずに居られればと思ってた部分がですねえ・・・・・・・。はい、考え止め!目立っても良いよね別に!と思考を切り替える。だってしょうがないじゃない、曲がりなりにも神なんだから。臨機応変ってやっぱり大事なのかな、と改めて実感した。
お待たせしました、久しぶりの投稿です!ほかにも全話編集しなおしたりしました。大筋は変わっていませんが。
かなり不定期の投稿になりますが、よろしくお願いします。