3話・旅立ち
地上編は基本的に狐視点です。
~宿屋~
若干薄汚れた窓から、朝の白い光が部屋に差しこむ。僕はまだ重いまぶたを開けて、かごから音を立てないようにそっと飛び降りる。あの子を起こしてしまったら悪いし―――。
「あ、おはよう!きつねさん!」
―――心配なかったかな。まぶしいほどの元気な笑顔で挨拶してくれる。もうすでにこの子は、ご飯も食べて着替えも済ませているみたいだ。
昨日僕を拾ってくれたときは白いワンピースを着ていたが、今は純白の細剣、白銀の軽鎧を身にまとっている。見た目は小学生ぐらいなのに、雰囲気は強く凛々しい感じだ。
この世界には魔物がはびこっているが、それらと戦う冒険者も存在する。ここは所謂剣と魔法の世界だ。もしかしたら彼女も冒険者なのかもしれないな~。あ、いくら世界のことを知らないっていったって、一応10年間神様の国で勉強してきたんだ!これくらいはわかる。実際見るのは初めてだけど。
そういえば、おなかが減りました。神だっておなかはすくのです。それに今はあくまで魔物(?)です。昨日から何も食べてないのだから、おなかがすくのは当然・・・ぐう。
そんな僕の状況を察したのか、ブーツを履き終わるやいなや、「ご飯持ってくるね~。いい子で待っててね?あっ、名前・・・えーっと、コンちゃん!」と、小走りに部屋を出て行った。
・・・今、僕は新しく「コン」という名前をもらった。まあいつまでも「きつねさん」じゃ不便だからね。それに名前じゃないし。ありがとうございます。若干適当だけど。あ、まだ彼女の名前聞いてないなあ。でもまあ、どっかでわかるかも。
○○○○○
「ごめんね~。いきなり食堂のおばちゃんにお願いしたから、これしかなかったんだよね」
僕の前には、えさ箱いっぱいに盛られた謎の生肉があった。彼女が少し申し訳なさそうに微笑みかけてくる。くんくん。・・・・・・うん、体に悪そうなものは入ってない。顔を近づけ、一口かじってみる。
「・・・わふっ!?」
「どう?すっごくおいしいでしょ!食堂の人気メニュー・・・の、余りものなの!」
口に広がるうまみの凝縮された肉汁、引き締まった適度な歯ごたえの謎肉!夢中でかみ締め、全てを忘れあぐあぐしているうちに、肉はキレイさっぱりなくなってしまった。もっと味わって食べるべきだった・・・。残念・・・。
「そんな、しゅんってしなくても今日のお昼ご飯に持ってくから・・・。じゃ、コンちゃんも食べ終わったことだし、そろそろギルドに行きますかね!コンちゃんの登録もしないといけないし」
「わうん!」
ギルド・・・この世界の冒険者たちが集まる場所か。やっぱり彼女は冒険者みたいだ。登録ということは、僕も冒険できるのだろうか。僕はこの辺りから、なんとなく、この子と一緒にいろんなところに旅が出来たらな、と思うようになった。餌付けされたのもあるかもしれないけどね。
お知らせ・・・仕事の都合上、しばらくの間執筆を中断せざるをえなくなってしまいました。読者の皆様、大変申し訳ございません。