2話・少女と出会いました。
地上・狐視点
「がぼっぼごぼぼぼ!!(誰かああああ!)」
降臨早々、僕は海でおぼれていた。泳げないのである。というか、神の世界では泳いだことが無いのである。別に必要がなかったのだ。必死に前足後ろ足とばたつかせてみるも、思うように動けず逆に沈んでいくような気さえしてくる。
(そういえば地上って7割海なんだっけ・・・別についてないってことは無いか・・・ああ冷静に考えてる場合じゃない・・・意識が・・・落ちる・・・・・・)
最後に見た光景は真っ黒だったが、それが海の中の色だったのか気絶する瞬間だったからなのかはよくわからない。すぐに体に力は入らなくなり、僕は意識を失った。
○○○○○
「わっ!何この白い毛玉!生き物!?大丈夫!?生きてる!?」
突然のまくし立てるような大声に僕はうっすら眼を開けると、目の前に可愛らしい女の子がいた。どうにか助かった・・・というか僕に「生きてる・死んでる」って当てはまるのかな?まあいいや。もうどうがんばっても全身に力が入らないし、とりあえず助けてくれそうな人な気がするし、そのまま脱力。
「くうー・・・(生きてます・・・)」
一応生きてるアピール。死んでるとか思われて埋められたらたまったものではないし、そこから脱出しても見られたら大騒ぎになる気がするし。今更だけど、何故かしゃべれなくなっている。降臨したことで物理法則に縛られるようになったからだろうか?少なくとも神の世界に居たときはそんなことは無かった訳だし。
うーん・・・どうしよう、これ。おぼれたことといい、しゃべれないことといい、本格的にただの狐になってしまったのかなあ?いやでもちゃんと毛は白いままだし、自分の魔力は感じるから、「ただの狐」では無いかな、たぶん。でもそれって要するに「魔物」じゃない?この世界には動物と同じように「魔物」が存在する。その身に魔力を宿し、理性は動物と同レベルかそれ以上で、人間に危害を加えることもある存在。た、助けてくれるかな・・・?
「魔物・・・っぽい、けどまだ生きてる・・・つれて帰らなきゃ」
良かった・・・ここに放置はしないでくれるか・・・。僕はあいまいな意識の中、金髪ロング青目の少女にどこかへとお持ち帰りされた。
○○○○○
僕は、小さな宿屋と思われる家の一室で、応急処置され水で簡単に洗われた後、タオルの入ったかごの中に入れられた。ううう、疲れなんて無縁のとこで暮らしてたからすっごい眠い・・・。これが疲れというものか・・・。
「はあ~・・・この部屋、動物(?)オッケーでほんと良かった~。今はゆっくり休んでね、きつねさん」
「くうん・・・(ありがとうございます・・・)」
「疲れる」という初の感覚を全身で感じながら、僕は少女に暖かく見守られながら、ふわふわのタオルの中で再び眠った。海とは違って、物理的にも精神的にもここはとても暖かかった。