YAZAWA最強への道!!! 第二の能力発動ォォオオオッ!!!!!!
「………」
「黙ってないで、何とか言ったらどうだああああ!!!!」
「ああん! YAZAWA様ぁあん! マルスこっわ~いんんっ!!!」
「何……だ……と……マルス……だと?」
先程から、YAZAWAに対して怒鳴り散らしていた近衛騎士団副団長プルートは、あまりの出来事に言葉を失ってしまった。
プルートの目の前に“居る”のは老人男性と中年婦人であり、かの勇猛果敢で知られるマルス団長の姿など、どこにも見つけられない。
しかし……プルートの聞き間違いでなければ……確かに目の前の中年婦人は、自身の事をマルスと称していた。
つまり、中年婦人の言い分が正しいと仮定した場合、少年時代からプルートの憧れであったマルスはこの世から抹消されている事に。
「違う…違う……違うううう!!!! そんな筈はない!!! マルス団長が女になんかなる訳がっ!」
「残念ねプルートおん。私は身も心も女に変えられてしまったのよん! YAZAWA様のお力によってねぇ……ああんっ! YAZAWA様ぁあん!!!!」
「そんな馬鹿な……そんな馬鹿なそんな馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿あああああああ!!!!!!!」
絶望的状況に追い詰められ、発狂寸前まで行きかけたプルートだったが、諸悪の根源たるYAZAWAが目の前に“居る”事を思い出した為、正気に戻る事ができ、改めて因縁の相手と化したYAZAWAを睨みつける。
「貴様が、団長を女に変えたんだな!!」
「あ?」
プルートの怒気を含んだ問い掛けに、マルスの気持ち悪さから現実逃避気味に呆けていたYAZAWAは漸く目を覚ました。
「貴様さえ! 貴様さえいなければ!」
「待て落ち着け!! 俺はただ単に正当防衛(貞操)を行っただけだっ!!!」
剣を抜いたプルートにビビリ上がり、説得を試みるYAZAWA。
「ふざけるなぁ!!! 正当防衛(決闘)で女にするなど聞いた事も見た事もないわ!」
「今聞いたし、今見ているじゃないか!?」
「黙れ! 貴様さえ貴様さえいなければ! 団長はっ! 俺の憧れた団長はっ!」
「ああん! YAZAWA様ぁあん!」
「さっきからうざったいんだよババー!!!」
バキィッ!!
思いっきりグーパンチでマルスを殴り倒すYAZAWA。
「ふにゃ~~~」
「ハアッ! ハアッ! ようやく黙り込んだか糞ババー!! ハッ! ハッハッハッ! はっ!?」
マルスを殴り倒し、黙らせた事で、一時的に高揚感に包まれたYAZAWAであったが、明らかに怒気が増したプルートに気付き、恐る恐る顔を向けると、
「き、貴っ様ぁ――――――!!!! 団長を殴ったなぁ――――!!!!」
「まっ、待て!!」
「黙れ―――――――!!!!」
プルートが剣を上段に構え振り下ろそうとした瞬間、ビビった振りをしていたYAZAWAによる正当防衛(生命)が決まる。
「性 転 換!」
「なっ!? ああっ! 身体がっ! 身体が女になっていく――――――!!!」
「馬鹿め! 糞ババー何ぞに憧れているからそうなるのだ!」
「くっ、くそう!!」
YAZAWAはプルートに触れていない。つまりマルスの時より能力が強くなっているという事だ。
戦慄。今まで見ていただけの兵士達は動けなかった。ラック王国にて五本の指の二本を無力化したYAZAWAに恐怖を感じていたからだ。
「はーはっはっは! 俺は強い!」
強そうな戦士を二人連続で女に変化させた事に加え、こちらを怯えの表情で伺う兵士達という構図が重なった結果、YAZAWAは謎の全能感に包まれていた。
元来、男とは強くてナンボであり、強くて沢山の女を侍らせる事こそが男の力の象徴であるからこそ、いくら八十歳になりただでさえ老い先が短くなっているYAZAWAであってもそれに変わりはないのだ。
しかし、YAZAWAは一つだけ重大な勘違いをしている。
性転換能力は性別を変化させるだけであり、別に精神にはそれ程影響を与えない。精神も性別に伴うだけであり、以前好きだったものは好きなままだし嫌いだったものは嫌いなまま。
つまり、変化前に恨んでいた人間はそのまんま恨んでいるという訳で、
「死ねぇ―――――――――!!!!」
再び、今度は女戦士となったプルートが、合わなくなった鎧や服などを全て脱ぎ捨て、豊満な胸を揺らしながら剣を振りかぶってYAZAWAを仕留めようと接近してきた。
「なっ! なんで?! あ」
YAZAWA最大の勘違い。それは能力の最初の被験者がマルスという一点である。
YAZAWAが初めて能力を使用したのはマルスという老け専の変態。これにより絶体絶命(貞操)の危機を脱したYAZAWAは『性転換能力は変化だけではなくYAZAWA自身に心酔する最強能力』だと認識。
故に、プルートにもその認識を当て嵌めてしまったのだ。
「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
プルートは既にYAZAWA必殺射程圏内に足を踏み込んでおり、あと三秒程で絶命は確実という人生最大の緊急時に、YAZAWAは二度目の走馬灯を見る。
あった。
あったぞ!
この絶体絶命の危機から脱出出来る能力が、あったぞおおおお!!!!!!!!
至近距離に居るプルートにしか気付けない程の、微妙な変化であったが、YAZAWAの雰囲気が変わる。
「今更、小細工をしても、無駄ぁ――――――――――!!!!!!!」
が、プルートは容赦なく剣を振り下ろすも、
「第二の能力発動!!!! 奴 隷 ハ ー レ ム!!!!」
「なっ、何ぃ―――!!!!!!」
ガランッ、カタカタカタ。
YAZAWA第二の能力が発動した事により、剣を取りこぼし、自分の心臓の辺りを苦しげな表情で掴むプルート。
「やったか!?」
「きっ、貴様ぁ~。なっ、何をしたぁ~」
「クソ! 効いてない…… のか?」
「いやだいやだあああああああ!!!!!!!!!」
「やはり失敗か!」
絶叫しながらヨタヨタとYAZAWAに近寄るプルートを見て、後退るYAZAWA。
「来るなぁ!!!!!!」
「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
「来るなぁあああああああ!!!!!!!!!!」
「あああああああああああああああああああああ!!! あんっ!!!」
「何ぃ!」
「ああん! 悔しい! 殺したい程憎らしいのに感じちゃううん! YAZAWAァアン!!!」
「え」
ガシィッ!
プルートに抱き付かれ、クンカクンカと匂いを嗅がれるYAZAWA。
「YAZAWAァアン!!! YAZAWAアアアーンンッ!!!」
「ハッ! ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!」
上手くいった。上手くいってしまった。今度こそ完全にプルートを下した事により、YAZAWAの謎の全能感は復活! 更に高まりまで見せる始末である。
そして、全能感が最高調に達したYAZAWAは、残りの兵士達を性転換させ奴隷ハーレムの一員とする。
「ハッ、ハッ、ハァ――――――!!!!!!!!!!!」
二つの能力の強力さを改めて実感したYAZAWAは完全に調子に乗っていた。そんなYAZAWAは八十歳にしてとんでもない野望を抱いてしまう。ハーレム帝国を作る、というとんでもない野望を。
GO! GO! YAZAWA!!!