○第一章 ~プロローグ~
初投稿作品で稚拙ではあると思いますがよろしくお願いします。
「きゃーッ!!」
夜の酒場に女性の悲鳴が響き渡った。
当然同じ建物の同じ現場に居合わせた私達はその恐怖によって発せられた声を真っ先に耳にする。彼女は先程、酔った勇者さんに手を出されそうになった時にも同じように悲鳴を上げていた。
しかし、その時の悲鳴とはまるで違う。
あの時の彼女も、まさか自身が勇者さんに絡まれたことがきっかけでこのような大事件が起こるとは想像もしていなかったのだろう。
無論、それはこの場にいる私達にも言えることだ。
「あ、あぁ……」
突然の事に声が出せない。
仮に出たとしても、言葉が浮かばない。
目の前には数分前まで自身は世界を救う男なのだと大声で怒鳴り散らしていた勇者さんが横たわっている。彼もまた、まさか国公認の勇者である自身がこのような事になるとは思ってもみなかっただろう。
彼の、その人間としては珍しいエルフのような金色の髪は今や彼自身が頭部から流した床のどす黒い血液によって染め上げられ続けている。
私達は皆口には出さなかったがこの勇者さんの横暴を止めることなど、ましてやその勇者さんの素行に異議を唱える人間が現れるわけがないと本気で諦めていた。
ましてや、その勇者さんに手をあげる人間など……
それがどうしてこうなった。
「あー……」
そうしてこの大事件を引き起こした張本人はその自身のしでかした事の重大さを知ってか知らずか、気だるげな声を上げてこう呟いた。
「……人殺しって、こんなもんか」
そこには確かに、一人の”狂人”が立っていた。
その手には小さな金槌が握られていた。