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鏡館殺人事件  作者: 東堂柳
インターローグ
41/63

4

 雉音を殺し、夜熊を殺し、更に結にまで手を掛けた影は、悠然とコレクションルームに佇んでいた。

 皆寝静まり、行動は容易い。実際、誰にも気づかれることなく、やすやすとここまで来ることができている。


 ――長かった――


 無事に一山越えた影は、安堵の息を漏らしつつ、これまでのことを回顧した。

 殺人の計画を立てた時のことを。殺意を固めた日のことを。今まで殺した人間のことを。

 しかし影の顔は、すぐに険しいものへと変貌していく。


 ――気を抜くな。まだ終わったわけではないのだ――


 計画犯罪と言うのも楽ではない。

 これまでいくつもの推理小説を書いてきた影だったが、当然それを実行に移したことなどなかった。影は作中の犯人の辛さをようやく知って同情した。

 彼らはトリックのために人体の切断をいとも容易く行う。だが、実際のそれはそんなに簡単なものではなかった。肉はともかく、骨を断つのには影も苦心惨憺を要したのだ。

 その感触を思い出し、影は顔を顰めた。


 ――いつまでも想像上のことにかまけている場合ではない――


 影は右手に持ったその紙を――鏡館殺人事件の原稿を――コレクションルームのテーブルに滑らせるように置いた。そして、左手に携えた人間の頭部を、コレクションの一部として装飾した。

 冷たくなった頭部。影は一歩離れてそれを眺めながら悦に浸った。

 肌白い人形のようだ。さながら作り物のようで、石膏の像ともよく調和が取れている。

 それを見ているうち、この先のことに想像を巡らせて、影に蓄積されていた疲労も消し飛んでいった。


 ――復讐劇もまもなくクライマックスだ――

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