6話
「ん……」
亞鬼の目が覚めた。窓からは太陽の光が差し込んでいる。どうやらこの日差しに当てられ自然と起きたようだ。上半身を起こして首を回す。
「えっと……またか」
地獄に来てすぐの似たような朝を思い出す。あの時も気づいたら寝ていた、というか起きていたのだ。しかし今回は違う、少しばかりこうなった経緯が想像できる。
「確か、死依と実戦訓練?することになって……」
起きたばかりでうまく頭がまわらない亞鬼だった。角を避けて自分の頭に手をやり、思い出す。
「そうだ腕……ッ!」
すぐに手を頭から離し、腕に目をやる。死依にちぎられたと記憶していたが、その腕は傷一つなかった。むしろ不自然なくらいに綺麗な腕をしていた。
「確か、その先は……どうなったんだ…?」
亞鬼は必死に思い出そうとするが、腕の記憶違いのせいでよけいと混乱し、気分がわるくなっていた。
「とりあえず、居間行くか…」
ふらりと立ち上がり居間へと向かうべくふすまを開ける。
「おはよー」
「お、おはようございます……」
冥と血華がいつもどおりに亞鬼に接する。
「おはよ…」
「どうしたの?元気ないわね」
「ん、ああ、悪い」
一番新しい記憶が腕をちぎられたこととなれば、元気がなくなるのも当然だろう。
「しょうがないよ……あんなことがあったんだもん……」
「あんなこと?」
亞鬼が血華の発言に聞き返す、やはりなにかあったのだろうと感じたのだ。
「えっと、その……」
口が達者ではない血華ではすぐには説明ができない様子だった。
「わたしが話すわよ。」
血華のことを察して自らが説明すると冥が名乗りでた。
「おう、頼む」
・・・
亞鬼は全てを聞き終えたが、実感がまるで無かった。
「本当かよ…」
信じられない内容に、疑問を抱かずにはいられず、つい言葉にする。亞鬼の問には二人共答えなかったが、目が言葉以上に真実を語っていた。
「本当みたい、だな…」
「ま、まあ気落とさないでよ、私たちにはなんにもなかったんだしさ」
あきらかに気落ちした亞鬼を冥がフォローする。
「いや、でも迷惑かけちまった」
「い、いいんですよ……亞鬼さんは何も悪くありません」
「そんな…やめてくれ、俺は最低だ……」
亞鬼は気を使われて余計に自分が嫌になった。
「ここに来てから、2人にはおんぶにだっこだな、死依にもか……ハハッ」
徐々にネガティブが強くなってくる。
「それに天国にいきたいだなんてわがままも聞いてもらって、そのための特訓も全部考えてくれて、それなのに、俺…」
冥も血華もそろそろめんどくさい、という顔になってくる。
「俺ってやつはさ……グチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチ…」
「……グチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチ…」
「……グチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチ…」
「……グチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチ…」
「うるっさいわねーーーーーっっ!!!男が小さいことをぐちゃぐちゃと!!!」
耐えられず冥が切れる。
「さっきからいいって言ってんじゃない!!もう黙んなさいよ!!」
いきなり怒鳴られて亞鬼は唖然とした。
「ご、ごめんなさい」
つられて謝る。
「わかったらさっさと気分転換でもしてきなさい!!!ほら着替えて!!」
冥が亞鬼に着替えを思いっきり投げつける。
「え?え?」
急展開に亞鬼は戸惑うが、すぐに冥が続ける。
「早くしなさいよ!!!」
「は、ハイッ」
そそくさと着替えると、服の襟をぐわしと冥が掴んで玄関まで運んで外に放り投げる。
「夕方まで戻んじゃないわよ!!!」
バタンッッ!!
大きな音を立てて亞鬼は閉めだされた。と、思ったがすぐにドアが開き、ぽんと財布が投げられ、ドアがまた勢い良く閉まった。




