5話
すいません、体調崩してて更新が遅くなりました。まだ全快じゃないのでペースは落ちそうです。
亞鬼が地獄に来てからおよそ1周間が経っていた。学校に入学すべく強くなる必要があったため、亞鬼は毎日丸一日を修行に費やしていた。修行には冥と血華が付き合ってくれ、死依も暇があればと、時間を割いて亞鬼に協力してくれていた。彼女らの学校は丁度長期休暇の時期だったため、修行には持って来いの環境だった。
「よっし、そんじゃ準備運動からだな」
亞鬼が修行場に来てから第一声を発する。冥らの家から数キロ歩くと大きな森があり、そこのある一帯の木をなぎ倒して修行場としていた。すぐ近くに小さな泉もあり、理想的な場所であると血華が判断したのだ。
「そうね、今日は30分でお願い」
気だるげに冥が答える。手にはスマートフォンが握られ、視線はそれに釘付けである。
「へ?30分!?」
「うん」
「無理無理無理!!」
毎日の修行は準備体操から始まる。これは血華と死依が考えたスケジュールの一環である。準備体操と、名前からすると簡単そうに思えるがその内容は壮絶なものだ。約30kmのランニングを行い、インターバルはほぼ取らずに上体起こし、腕立て伏せなどの筋トレを各200回ほどこなすというものだ。今まで早くても準備体操を終えるのには1時間近くかかっていた。今回はそれを30分で行なえと冥に言われたのだ、当然厳しい。
「私だってさせたくないわよ、でも血華が言い出したのよ。とりあえずやりなさい」
早くやれ、というように手を亞鬼に向けてひらひらする。
「ち、違うよ……少し短くしても大丈夫かなって……その……ごめんなさい……」
オロオロしながら血華が答える。きっと血華は何も悪くないのだろう、と亞鬼は様子を見て判断する。
「いや、いいんだ。血華ちゃんは悪く無いよ、それも俺のことを思ってのことだろ。行ってくるよ」
飛んで行くように亞鬼がランニングに行った、ほぼ全力疾走である。
「だ、大丈夫かな……」
「大丈夫よ、徳が高いってことは鬼としての初期ステータスも相当高いってことだからね。成長度もそれなりなはずよ」
そう、鬼として転生した者は徳に応じたそれ相応の能力を持って生まれる。亞鬼は徳が2000もあったため、それなりに鍛えれば地獄でも戦えるようになれる。
「そうかな……でも、亞鬼さんの2大能力は結局なんなんだろうね……」
「そういえばまだわからないままね、私達のは単純だからすぐにわかるけど、亞鬼のがまだわからないってことは相当地味なんじゃ……」
「戦闘に不向きなものだとすこし厳しいかもね……」
しゅんと血華が亞鬼のことを思って落ち込む。鬼には2大能力というものが存在していて、どんな鬼だろうと必ず2つは突出した能力を持っているというものだ。これの強大さももちろん徳によって変わる。他の能力と比べて大きいというだけで、転生したばかりの鬼の2大能力などはステータスが低く、気づけるようなものではないが、亞鬼は例外なのでその能力もすぐに分かるというのが摂理である。
ガサガサッ
「「!?」」
突然の不自然な木々の音に冥と血華がその方向を向き警戒する。
「やっほー」
そこに現れたのは、死依だった。
「なんだ、脅かさないでよ」
「あ、ごめんね。予定がなくなったから私も手伝おうとおもって」
「死依さん、おはようございます……」
「おはよー」
血華と死依が挨拶を交わす。この3人は小さい時からの仲なので、人見知りな血華が信用している数少ない鬼である。
「亞鬼ならそろそろ戻ってくるはずよ、今日は急ぐように言ってあるから」
「うわー、相変わらず鬼だね」
「そうよ鬼よ」
当然だ、というように冥が返答した。そのとき丁度亞鬼がランニングから戻ってきた。
「ハァッ、ハァッ、終わったぞ……」
「おっけー、じゃ引き続き筋トレね」
「よっしゃ」
言われるがままに亞鬼が準備運動を続けようとする。
「まって」
が、死依がそれを阻む。
「どうしたのよ死依」
「いや、結構出来上がってきてるね」
「そうかしら、まだまだじゃない?」
「一体どっちだよ……」
亞鬼が2人の会話にツッコミを入れた。
「そろそろメニューも変えていいと思けどな。別に冥ちゃんみたいに筋肉バカにする必要はないんだよ?」
「き、筋肉バカ……」
冥が乙女らしくないその称号に不満を抱く。
「じゃーどうするんだ?」
「えっとね、私と実戦しよっか!」
「「「え?」」」
死依の一言に他の3人が声を揃えて聞き返した。
「早すぎるわよ!まだ基本的なこともできてないのに!」
「そ、そうですよ……」
「そうかな?大丈夫だと思うよ?それに痛い目見といたほうが後で楽じゃない?」
「痛い目って……」
想像した亞鬼が顔を青ざめた。それにいきなり実戦と言われても、死依の実力もよくわからない亞鬼には想像がつかず、恐怖を感じる。
「はぁ、わかったわ。でも危なかったらすぐ止めるからね」
「うん、ありがと!」
結局すぐに実戦訓練が始まる事になった、円状にひらけた場所全体をリングとしての勝負だ。亞鬼の反対方向の指定位置についた死依が小声で冥に聞く。
「まだ何色かわからないんだよね?」
「そーね、それと2大能力も不明だわ」
「じゃ、片方でも知っといたほうがいいよね!」
「え?アンタまさか」
死依の思惑を理解した冥は驚きを隠せずにいた。
「大丈夫だよ、うまくやるからさ」
にっこりと冥に笑顔を振りまく、こんな顔されては止めさせにくい。
「ほんと、どうなってもしらないわよ」
冥は嫌々ながらも死依のやろうとしていることを了承した。
「それでは……そろそろ……」
中央に立った血華が両者に確認をとる。
「おう、もういいぜ」
「わたしもいいよ~」
「では……始めっ!」
血華の一声により戦闘が開始する。訓練と言えどこれは戦いであると、亞鬼は考えていた。まずは相手の様子を伺うため、最初は動かずに相手の動きを待つと決めていたのだ。だが亞鬼が気づいいた時には、死依は亞鬼の目の前にいた。
「は……?」
理解が追いつかないままに、死依が亞鬼の両手を掴む。そのまま腹に蹴りを入れた。
「……ッ」
亞鬼がこれまでに受けた痛みの中でも一番の痛みだった。亞鬼の内蔵が潰れて口から血が噴き出る。それだけでは終わらず、腕を掴んだまま死依は蹴り込んだ足をそのままに力をこめる。
ブチブチブチブチ
聞いたこともない音が亞鬼の耳に入り込んでくる。状況は未だつかめず、目には自分の腕が千切れていく様が映っていた。時間をかけようやく腕が全てちぎれたように感じたが、まだ戦闘が開始して数秒と経っていない。腕がすべてちぎれ、亞鬼がふっ飛び、何本か木をなぎ倒してようやく止まる。激しい攻撃により亞鬼の周りには土煙が舞っていた。数秒経って、ようやく冥が言葉を発する。
「な……何してんのよーーーーーッッ!!」
「え?大丈夫だよ、このくらいじゃ死なないって」
想像以上の死依の行動で冥は混乱していた。
「死なないとかじゃなくて!!」
「まーまー、本番はこれからだよ」
と、死依がじっと亞鬼の飛ばされていった方向を見つめる。すこし経ったが、何も起きなかった。
「で、本番は?」
「やりすぎちゃった☆」
下をペロッと出して死依が謝るが、そんな状況ではない。
「もうっ、とにかく助けないとっ」
冥が手当するべく移動しようとし、亞鬼が飛ばされた場所に目を向けた。丁度土煙が晴れていたが、亞鬼の姿はなかった。いや、正確にはあったのだが、あるべき場所にいなかったのだ。瀕死の状態で横たわっているはずが、亞鬼は立ち上がっていた。
「なにあれ……白い、鬼?」
その光景につい口ずさむ。亞鬼のちぎれたはずの腕はすでに再生していて、角は変化し、髪と目は白く、虚ろな表情をしていた。そして、亞鬼が動いた。
一瞬で死依のすぐそばまで移動していた。その速さは死依が最初に見せた動きとほぼ同じだった。
「うそ……」
死依は驚いた。まさか本気を出していなかったとはいえ、自身の2大能力の一つは速さだ。そのレベルで亞鬼が移動できるとは思ってもいなかった。
死依が防御の態勢を取ろうとするが、もう遅かった。亞鬼はすでに拳を握り、それを死依の顔面に向けて放っていた。
ゴッ
鈍い音が響いた。態勢を崩し、拳を食らった死依が数メートル飛ぶ。一瞬意識も飛んだが、すぐに正気になる。とっさに受け身をとり、着地する。
「いったいなぁ~」
頭から血を流した死依がイラつく。たかが転生した鬼に一撃食らわされるのは屈辱だった。すぐに相手と同じ土俵に上がるために巡りを発動する。青黒い炎に包まれ、角は変化し、髪と目は青く変色した。突き刺さるようなその目は、亞鬼のみを捉えていた。
ありがとうございました。鬼の色については今後説明を入れたいと思います。




