4話 続
亞鬼の血華の呼び方が固定されてなかったので修正しました-6/16
「さて、そろそろいいかしら?」
横で2人を見ていた冥が言葉を発する。そうだ、まだ互いの名前を知っただけだ。本題はこれからであると、亞鬼も身構える。
「ああ」
そう返答し、首を縦に振る。続けて冥がしゃべる。
「えっと、まずこうなった理由だけれど……実は亞鬼は地獄に来るべき魂じゃなかったのよ」
「やっぱり、そうなのか!」
「え、ええ」
亞鬼の食いつき具合にちょっと冥が弱る。
「で、どうして俺は地獄にいるんだ?」
「そ、それは、その……」
「それは……!?」
亞鬼が昂ぶりを抑えられず、身を乗り出して聞いた。冥は嘘をつくつもりなので少し口ごもるが、話さないわけにはいかないと続ける。
「その、私と友達で、昨日は一緒にいたんだけど…、えっと、天国に行くべきだった魂が手違いで地獄に送られるっていう話を聞いて……、だから、可哀想だなと思って、せめてその人の地獄での生活くらいは支えてあげなきゃと思ったの……それで転生する場所で亞鬼をみつけて、連れ帰ってきたのよ。その、ごめんなさい勝手に」
「そうだったのか……何を謝る必要があるんだ。むしろ俺が冥とその友人に感謝しないと。それより許せないのは俺がここに来ることになった『手違い』を起こしたやつだな。ほんと許せねえぜ」
罪悪感により、冥の顔が一層暗くなる。バカは嘘が下手なのだ。
「そ、そうよね、ほんとごめんなさい……」
「?……だから謝るのはいいって、ありがとな!」
「うっっ……」
冥にとどめの一撃が刺さる。罪悪感で胸が押しつぶされてしまいそうになっていた。汗がダラダラ流れ目は虚ろになっていく。
「それじゃ冥の行為に甘えるよ。この家に当分は世話になるな。なにか俺にできることがあれば遠慮なく行ってくれ。血華ちゃんも、よろしくな」
「は、はい……え?当分は……?」
「ああ、その、これは俺のわがままなんだが、やっぱりここにいるのは嫌だ。天国に行きたいんだ。誰かのせいでこのままここに居座って冥と血華ちゃんに迷惑かけるくらいなら、俺は自分の居るべき場所に行きたい。もちろん2人にはツケを払ってからな」
笑顔で亞鬼が語る。申し訳無さで胸がいっぱいな冥は、せめてその夢に手を貸そうと心から思った。
「天国か、多分ムリだけど可能性はあるかな……」
「本当か、どんな些細なものでもいいんだ!教えてくれ」
「えっと、なんていったけ、あの、地獄仕切ってる奴ら」
「十王……」
ぼそっと血華が冥のしゃべりに手を貸す。
「そう、十王。地獄は十王って奴らが仕切ってるのよ。だから、その、そいつらを……」
「そいつらを……?」
食い気味に亞鬼が聞き返した。
「そいつらを、殺すのよ」
「……は?」
いきなり話が殺伐として亞鬼はつい返してしまった。よく聞こえなかったなどということではない。何故殺さなければいけないのかがわからないのだ。
「ここでは、力が全てなのよ……」
冥が話を続けた。
「力あるものに無いものは屈しなければならない。これが地獄での大前提よ」
「まじかよ……」
いきなり地獄らしさが出てきて亞鬼は呆然とする。
「まあだからって、常日頃戦争状態ってことじゃないわ。ちゃんと公式に認められた戦いで勝敗が決まった際に、その試合にかけていたものを取引したりって感じよ」
「ああ、なんだ少し安心したよ。……でもそれなら十王ってのは殺す必要はないんじゃないのか?」
「いえ、殺さないと十王には勝てないと言われているわ。十王を打ち倒したいのならば、殺す気で挑まなければ話にもならないって」
「そんなに強いのか、十王は……」
「なにせ地獄を仕切ってる奴らだしね」
「えっと、名前から察するにそいつらは10人ってことでいいのか」
ちょっとした疑問を亞鬼が聞く。敵の人数は知っておいて損は無いだろう。
「ええ、10人だったわ」
「だった?」
つい聞き返す。今は違うということなのだろうかと、考えを巡らせる。
「えっと確か……血華」
「え……うん。えっと、十王っていうのは元々地獄を統括していた10の鬼だったんです。その名を、秦広王、初江王、宋帝王、五官王、閻魔王、変成王、泰山王、平等王都市王、五道転輪王といいます。いくつか聞いたこともある名もないでしょうか……?」
「うん……」
地獄は閻魔大王様が仕切っているイメージしかなかった亞鬼だったが、偉大な十王の
一人であったとは思いもよらなかった。
「そして……今から何千年も前です……その中の3名、初江王と宋帝王、平等王が他のメンバーの政治に腹を立てて反乱を起こしました……結果は多数対少数なので明らかでした。ですが反乱した理由は地獄の民を思ってのことだったと言われています……敗北した彼らは、殺されずに、永遠とその身を隔離させられました……今でも彼らはこの地獄の深くそこに眠っているとされています……」
「へぇ……」
「それから残った王達は、反乱を起こせばどうなるかということを地獄に知らしめ、やはり最後にものをいうのは力であるということから、今のような状況になってしまいました……だから十王といっても、今は7名です……それにその中の2名は自主的にその事件後から王を降りたので、実質この地獄を統括しているのは5名になります……」
「なるほどね、で、その5名は?」
「秦広王、閻魔王、変成王、泰山王、都市王……以上です……」
「ありがとう。じゃあそいつらを……その、殺せばいいんだな」
亞鬼は『殺す』というのに素直に賛成できなかった。どうにか他の方法は無いのか探したいところだが、地獄に住んでいる冥が言ったのだ。きっとそれしかないのだろう。と自身の感情を押さえつけていた。
「まあ、そうなるんだけど、実際簡単じゃないのよこれが」
血華の説明が終わると冥が会話を挟んだ。
「だろうな、相当強いんだろう」
すこし違う、というように冥が首をかしげる。
「いや、それもそうなんだけど。まず戦えないのよ」
「戦えない?武力が全てとか謳ってる奴らが、戦おうとしないってのか?」
「自分が最強であるという自信があるからよ、要は自分ら以外雑魚だから戦うまでもないってね」
「はぁ?自分たちだけはそのルール外で仲良く暮らそうってか!?」
亞鬼はその十王たちの勝手な理由に無性に腹が立った。
「仕方ないわ、実際そうだもの。でもそのルールは絶対に揺らがない。だから十王に戦いを挑めることができて、その上勝つことができれば、天国に行く方法も見つかるかもしれない」
「それでもかもしれない、か」
「まあ、理論上天国と地獄は繋がっているらしいからほぼ確実と考えていいわ」
「そっか、じゃあまずそいつらと戦う方法はあるのか?」
ふぅ、と一息ついてから冥が口を開く。
「まあ、これもできるかもってとこなんだけど……」
「なんだ?」
「えっと、実は地獄は力が強ければいいっていうルールを押すために、数年に一度大きな大会が開かれるのよ。そこで優勝した者にはどんな望みでも叶えてあげるってやつよ」
「なるほど、それであいつらと戦うってわけか。ん?まてよ、そこで天国に行きたいって言えばいいんじゃないか?俺は手違いで来たんだって」
苦い顔をして冥は返答する。
「駄目ね、現実的じゃないわ。まずその話を信じるはずがないもの。それに地獄にいるやつが天国に行きたいだなんて、鼻で笑われるわよ。そしてこう言われるわ『俺達を倒せれば、考えてやろう』みたいにね」
「ああ、結局同じになるのか」
「そう思うわ」
うーんと少し頭に考えを巡らせた後、亞鬼が聞き始める。
「じゃあ、その大会に参加しないとな。誰でもできるのか?」
「いえ、そうじゃないの。この大会に出るのは、学校ごとのトップ3の部活のメンバーだけよ」
「へ??学校?部活?」
いきなり話が地獄らしくなくなってきたので亞鬼は表情を変えて驚いた。なぜここで学校や部活などのキーワードが出てくるのかわからなかった。
「まず、亞鬼くらいの歳だと、ジュニアの部での大会参加になるわ。ジュニアの部では学校推薦での受付しか行ってないの。学校に入れない奴は大会に出る資格すらないってことよ。学校に入っていることはどんな大会でも最低の必要条件なの」
「え?いや、なんでそこで学校が出てくるんだよ。すごい強い奴が学校に行ってないことだってあるだろ」
まだ理解できなかった。学校でくくらないほうが強い奴らが集まるのではないかと亞鬼は思ったのだ。
「まあ、かなりの物好きならありえるかもね。でもそれは0に近いわ。学校に入っていることは強さの指標なのよ。部活はその学校の中での強さって感じかしらね」
「学校って勉強するところだろ、強さは関係無いじゃないか」
亞鬼の疑問にすぐに血華が答えた。
「地獄では違うんです……地獄での学校は強さを学ぶところ……8割は戦闘に関する授業になっています……そして、部活ごとに学校内で争って……年ごとに強い部活をランキング化しているんです……」
「あーなるほどね、じゃー俺もすぐに学校に入学すればいいってことだな」
「いえ、学校に入るには、試験があるのよ。武力の試験。それを突破しなくちゃいけないの。だから大会に参加できる最初の条件が学校に在籍していること、なのよ」
「そういういうことか」
「理解してもらって助かるわ」
そしてやはり、強くならねばならないと亞鬼は確信する。
「それじゃまず鍛えないとだな。2人に頼めるか?」
「もちろんよ。あと半年後に丁度編入試験があるから、それに向けて必ず亞鬼を鍛え上げるわ」
「頼もしいな」
「わ、私もがんばります……」
この日から亞鬼は特訓の日々へと、戦いが全てであるこの地獄に身を移していくことになるのだろう。その覚悟をもう一度、深く心に刻んだ亞鬼だった。
設定を書くと矛盾点とかがないか怖くなってきます。ミスはしないよう気をつけたいです。




