6話 止
心地の良い風が吹いた、辺りの草木がゆらゆらとなびき、耳に鳥の声を運んでくる。
亞鬼は状況を整理してとりあえず行動に出ることにした。そばに置いてある冥から渡された財布をしっかりとデニムの後ろポケットに仕舞い、歩き出す。
「出てけって言われてもなぁ…」
ゆっくりと歩きながら辺りの景色を見渡していく。日本街江戸地区というだけあって、その外見は前世の時に資料で目にしたような江戸の風景そのものであった。ずらりと瓦屋根の家が続いていて、大通りを大勢の人々が行きかっている。どうやら江戸っぽいのは見た目だけのようで、ちらほらある店などはスーパーに家電量販店などと現代的なものばかりだった。
「あれ?」
それらの建物の中に一つ、江戸らしい店があった。いわゆる団子屋というやつだろう。入り口にはのれんがかかり、表には赤い布のようなものが被せられた長方形型の椅子がいくつか並ばれていて、日除けの傘が経っていた。
「よってみるか」
一応財布の中身を確認してから、店の中に入る。
「すいませーん」
「…はーい!」
返事が聞こえてから少しして、奥から着物姿の女の人がパタパタと出てくる。
「あれ?亞鬼君?」
「へ?…って、死依!」
出てきた女性は死依だった。着物がよく似合っている。
「なんでこんなところに?」
「えっと、ここ私の家なんだ。一人だよね?亞鬼君こそどうしてここに?」
「ん、ああ。実は冥に追い出されちゃって」
「あー、冥ちゃん怒らせたんでしょ」
「まあ…正解」
「駄目だよー、女の子には優しくしなきゃ」
腕を組んで頬を少し膨らませて死依のお叱りを亞鬼が受ける。
「そう…だよな」
「元気ないね?もしかして昨日のこと聞いたの?」
「ああ、死依にも迷惑かけたよな。本当ごめん」
「なるほどねえ、追い出された理由ちょっとわかったかも」
「うっ…」
亞鬼は図星をつかれて心臓の辺りがズキッと傷んだように感じた。胸の辺りを抑えつつ会話を続ける。
「とりあえずそいうことで夕方までは戻るなーって言われちゃってさ」
「あ、それならこの街案内するよ!」
「いいのか?今から家の手伝いとかじゃ?」
「いいの、もともと朝の仕込みだけ手伝うつもりだったし。それに今日は私も暇だったんだ」
にこっと死依が楽しそうに笑う。亞鬼はそんな笑顔に少し見とれる。
「あ、照れてる~」
「ち、違えよ!これは…」
「まあまあ、とりあえず表で待っててよ。すぐ着替えて行くからさ」
また死依が戻っていく。亞鬼はからかわれたままで少し負けた気がしたが、言われたとおりに表にでて椅子に座って待つことにした。
「おまたせ~」
本当にすぐに来た。
「早いな…」
「有言実行ってやつかな」
死依自慢気に腰に手を当てて胸を張る。先ほどの着物とは打って変わって洋服を着ていた。
「それじゃいこっか」
「おう」




