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―――97―――

お蔵入りを考えていましたが、3章開始までに期間があるので投稿します。


20150104:追記

※別視点です。ご注意ください。

 なぜだろう。

 なぜ売れないのだろう。

 今日38人目の来訪者が商品を見て帰っていく。

 

 

 

 友達に誘われ、応募したところ全員揃って見事に当選したゲーム。

 私にとっては初となるVRゲームだ。

 当選日には喜び、期待に胸を躍らせていた。

 だが、それと同時に不安もある。

 私は運動音痴なのだ。

 戦闘がメインのゲームでそれは致命的だろう。

 

 その事を友達に相談すると、生産職を勧められた。

 まだあるかどうかは分からないが、それならば私にもできそうだ。

 昔から手先は器用なので、自信はある。

 戦闘には武器や防具、道具がつきものだ。

 これなら皆と一緒に楽しめるよ!

 

 ゲーム開始日、期待と共にキャラクター作成を始める。

 容姿はある程度決めてある。

 名前ももう決めてある。

 

 加護……メインで使用するスキルと考えていいのかな?

 それならば迷わず生産系!

 鍛冶と、調薬と……錬金術でいいかな。

 これなら武器、防具、アイテムの全てを作れるはず。

 

 ギフトアイテム?

 どうやら初期アイテムが選べるみたい。

 鍛冶セットと調薬セットと錬金セットに決まってる!

 

 これでキャラクター設定は完了みたい。

 あとは12時まで待機するんだって。

 ああ、待ち遠しい!

 

 

 

 12時5分前。

 ログインをしておく。

 あと5分。

 まだかな、まだかな。

 

 

 

 12時!

 早速皆に……チュートリアル?

 え、早くみんなと合流したいのに。

 でも、受けておいた方が良いよね?

 皆も受けるだろうし、私も受けておこう。

 うん、そうしよう!

 

 

 

 チュートリアルの人?が困ってる。

 なんでも、攻撃方法を持っていないことが問題みたい。

 あ、剣を貰えるみたい。

 え、これで案山子を切るの?

 大丈夫かな?

 でも、やってみるよ!

 

 

 

 ここまで酷いとは思わなかった。

 いくらなんでも、左右に動いているだけの案山子に当てられないなんて……。

 やっぱり生産系にして正解だったよ。

 

 

 

 チュートリアルも終わったし、皆と合流しないと!

 場所は……町の中央だっけ?

 確か町は必ずあるはずだからその中央で落ち合おうって。

 道は……聞いてみようかな。

 あそこのオジサンに聞いてみよう。

 

 

 

 何とか中央広場まで辿り着けたよ。

 人が多い多い。

 まあ、初日だから仕方ないよね!

 あ、皆だ!

 やっぱり私が最後になっちゃったか。

 う~、案山子のせいだ!

 

 

 

 なぜか皆も生産職だった。

 でも、運が良かったのかスキルは被ってなかったよ!

 良かった。

 それで、皆でギルドに登録に行くことに。

 そういえばチュートリアルで勧められたような。

 急いでいたから忘れかけてたよ。

 

 

 

 どうやら職業ギルドに登録しなければならないみたい。

 職業ギルドで皆と一旦お別れだ。

 

 

 

 とりあえず、調薬のギルドに仮登録してみたよ!

 何か説明があるみたいだけど、一定人数が集まってからみたい。

 時間が掛かりそうだから、まずは皆と合流しよう!

 

 

 

 少し待っていると、皆が来た。

 今度は私が最初だったよ!

 

 

 

 話し合った結果、ここからは分かれて行動することになった。

 皆、本登録に向けて色々としないといけないみたい。

 私も本登録を目指して頑張ろう!

 ところで、本登録の条件は何だろうか?

 

 

 

 受付で聞いたところ、本登録の条件は一定以上の品質のポーションを目の前で作成する事みたい。

 じゃあ、まずは練習からだね!

 皆に負けないように急がないと。

 

 

 

 ここでポーションの材料を買えばいいのかな?

 材料は……何だろうか?

 あ、相談所がある。

 ここで聞けばいいかな?

 

 

 

 相談所で聞いたら基本的な素材と作成方法を教えてくれた。

 それ以上に詳しく知りたいならそのスキルの窓口を勧められたよ。

 そう言えば、説明があるって言ってたような。

 まあ、素材も作成方法も分かったからいいよね?

 

 

 

 うう、低品質になっちゃった。

 まあ、最初だから仕方ないよね?

 

 

 

 うう、全部低品質に……。

 これはもっと練習しないといけないかな。

 でも、もう材料が……。

 あ、そう言えばギフトアイテムに露店商の敷物が入ってたっけ?

 これで露店が出せるはず!

 方法はギルドで聞いてこよう。

 

 

 

 露店出したよ!

 材料費は100サカフィ位だったから120サカフィでポーションを並べてるよ!

 でも、お客さんが全然来ない。

 まあ、初日だから皆町の外に夢中だよね。

 仕方ない。

 

 

 

 今日も売れなかったよ。

 町を歩く他の人達はは皆楽しそうだったよ。

 私も戦闘系にした方が良かったのかな?

 ……いや、まだ2日目だ。

 それに戦闘系はダメだって完全に分かったじゃない。

 明日はきっと売れるよ!

 そして、次こそは品質のいいポーションを作るよ!

 

 

 

 39人目……。

 でも、この人もきっと帰っていくのだろう。

 もう、ダメなんだろうか。

 皆はもう本登録の試験を突破したみたいだし、私は才能が無いのだろうか。

 ……みんなの足を引っ張りたくない。

 でも、今のままじゃあ……。

 

「すいません、失礼だとは思いますが……もしかしてギルドで販売しているポーションの価格を知らないのでしょうか?」

 

 え?

 ギルドでも売ってるの?

 

「ギルドで……販売……!?幾らで売っているのですか!」

 

 いや、よく考えてみれば売っていないわけないじゃない。

 

「低品質じゃないHP回復ポーションが100サカフィで売っていますよ。一応確認してきた方がいいと思います」

 

 私のポーションより安くて品質が良い?

 そんな……。

 

「すいません、店番お願いします! 行ってきます!」

 

 そんな!

 

 

 

 本当に100サカフィだ。

 そして、品質も悪くない。

 これじゃあ、売れるわけないよ……。

 

 

 

「う~……なんであんなに安いのですか……これじゃあ売れるわけないじゃないですか……」

 

 安くて品質が良い物が売り切れなく売ってあれば、こちらは売れないですよ……。

 私の作り方が悪かったのでしょうか?

 でも、聞いた通りの作り方をしたはず。

 そうだとすると、私の腕が絶望的に悪いのかな……。

 

「落ち込んでいるところすいません。ギルドのポーションが普通の値段なのではないのですか?」

 

 そうなの?

 でも……。

 

「材料費だけでも100サカフィ近くするのですよ……なんでそれをあんな価格で……」

 

 NPCが材料費と同額で売ってたら適わないよ。

 

「すいませんが、少し聞かせてもらってもいいですか?」

 

 この質問に答えたら、帰ってもらってログアウトしようかな……。

 

「はい、何でしょう……」

 

「調薬ギルドには登録されましたか?」

 

「仮登録ですがしましたよ~……」

 

 それが何だと言うのだろう。

 

「ではどこで材料を買われましたか?」

 

「普通に生産職ギルドで買いましたが?それが何か?」

 

 この人は何か聞きたいのだろう?

 

「そうですか。では最後に、調薬ギルドでHP回復ポーション作成の依頼はありませんでしたか?」

 

 貼ってあった気がする。

 

「はい、常駐依頼で貼ってありましたが報酬が低くて……ああ、そう言うことですか!」

 

 そうか!

 それならギルドとしては作る手間は必要無い。

 そして、低い報酬で納品された物を安く売ればいい。

 

「はい、多分ギルドで販売しているポーションはその依頼で作成された物です」

 

 だよね!?

 あれ、でも……。

 

「確かにそうですね……あれ、でもあんな依頼受ける人がいるとは思えないのですが?」

 

 報酬が低すぎる。

 あの報酬ならば、自分で90サカフィで売った方がまだ良いはずだ。

 

「そうでしょうか?スキルのレベル上げに材料が要らない依頼だったら僕なら飛びつきますが」

 

「え?材料が要らない……?」

 

 何を言っているのだろうか?

 聞き違いだろうか?

 

「ちゃんと受付で話を聞かれましたか?基本講習があったはずですが?」

 

「え?基本講習……?」

 

 基本講習?

 もしかして、あの説明が……。

 

「やはりですか。先ほど待っている間に掲示板を見ていたのですが、調薬メインの方はその依頼を利用してスキルレベルを上げているようですよ。そしてその依頼については基本講習で勧められたと書いてありました」

 

「え?つまりは……」

 

 私は……。

 

「ちゃんと基本講習を受けていればこんな場所で品質の低いポーションを売っている必要は無かったわけですね」

 

「……泣いていいですか?」

 

 焦って一番大事な事を見逃していわけだ。

 そのせいで2日間も無駄に……泣きたい。

 

「泣く前に調薬ギルドへ行ってみることをお勧めしますが?」

 

 それもそうだ!

 泣いているよりも行動をした方が良いよね!

 

「それもそうですね、行ってきます!」

 

 急げ!

 まだたった2日じゃない!

 

「待ってください!露店はどうするつもりですか?」

 

 おっと、そうだった!

 それにお礼も言っていないじゃない!

 こんな親切な人にお礼を言わないなんて、あり得ない!

 

 途中から絶望に浸ってお客さんの顔さえ見ていなかった。

 これから生産職でやっていくのならば、これではダメじゃない!

 まずは目の前の人をちゃんと見て、お礼を言おう。

 

「ああ! 忘れてました! ありがとうございます!」

 

 改めて見たその人の足元には白い兎と灰色の狼。

 白いローブを纏い、少女にしては短めな真っ白い髪に吸い込まれるように赤い目。

 

 まるで、空に浮かぶ雲から太陽が覗いているような人だ。

 全然色が違うはずなのに、その赤い瞳が太陽に思えてしまった。

 助けてもらったからかな?

 

 あっと、急がないと!

 わざわざ教えてもらった上に、店番までさせてしまったのだから、今日中にこの状況を解決しないと!

 今度必ずお礼はしますね!

 

 

 

 あ、お礼をするにしても、どうやって会えばいいのだろうか?

 このゲームはログイン時間制限のせいで偶々あった人と再会するのは難しい。

 うう、フレンド登録をさせてもらっておけばよかったよ……。

 どうしようか……。

 毎日探し回る?

 いや、それで出会えたとして、今の私にお礼ができるだろうか?

 無理だと思う。

 

 ……うん、生産職として有名になろう。

 そして、あの人が訪ねてきたら最高の物を作ってあげるんだ!

 勿論、それまでに会えたならばその時にフレンド登録をさせてもらって、腕が良くなったからお礼をしよう。

 

 さあ、そうと決まれば頑張るぞ!

 まずは調薬ギルドの本登録だ!

 

 

 

 翌日、友達へ開始日からの流れを話してみると怒られた。

 どうして私達を頼らなかったのかと。

 昔からそうだった。

 この人達は私が困っていると、いつも助けてくれた。

 だからこそ、今回は一人でしたかったのだ。

 だけど、それは裏目に出てしまったかな。

 こんなことに涙まで流して怒ってくれる友達を困らせてしまったのだ。

 まったく、私には勿体ない友達、いや、親友達だよ!

 

 ついでに白い少女についても聞いたが、誰も知らないそうだ。

 なので、もし見かけたら声を掛けて貰うようにしておいた。

 これで少しは確率が上がるかな?

 まあ、それよりも腕を磨かないとね!

 今日も頑張るぞ!

 

 

 

 そう言えば、なぜあの人は見知らぬ私にあそこまでしてくれたのだろう?

 もしかして、そこまで酷い状況に見えたのだろうか?

 いずれ聞いてみよう。

 でも、それはお礼をしてからだよね!

20141026:修正

誤字を修正しました。

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