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91/202

―――91―――

イナバ:ラビット

ルビー:ホーク

ログレス:ゴーレム

 『音を聞け。森に響く音は何を示す? 戦乙女は負けていない。戦っている。さあ、恐怖を打ち払い立ち上がれ! なにもボスウルフと対峙する必要は無いのだ』

 

 黒歴史量産中。

 さて、こうは言ったが、どうしようか?

 ハッキリ言って、皆が動き出した後にこの暗闇の中で援護できる自信は無い。

 やはり、灯りが欲しい。

 そうなると、火魔法かな。

 

 『近くには枝がある。皆の中には火魔法を使える者もいるはずだ。皆で闇を照らし、戦乙女を援護せよ!』

 

 これで良いかな。

 さて、僕は枝を集めようかな。

 

 

 

 『皆、聞いた? さあ、火魔法を使える人は声で場所を知らせて。他の人は枝をその人の場所まで届けて。最初は難しいかもしれないけど、そこに希望があるんだよ?』

 

 姉さんがレギオンチャットとは珍しい。

 サツキさんも槍の人もまだ動けないみたいだからかな?

 

 

 

「火魔法使えます。ここに居ます!」

 

 そこか。

 さあ、枝を運ぼうかな。

 

 

 

「枝です。火魔法をお願いします」

 

「わ、分かりました」

 

 少し震えている?

 その状況で自分の居場所を伝えるとは凄いな。

 

 呪文の詠唱が終わり、手に持った枝へと火が灯る。

 その光は暗闇に包まれた森を照らし、辺りを映し出す。

 

 動けている人は5割かな。

 少し時間が経過してこれということは、あの咆哮はかなりの効果があるわけだ。

 次にきたら不味い気がする。

 まあ、それまでに何とか頑張ろうか。

 

 

 

 一つ火が灯るとそれ以降は早かった。

 多くの人が灯りを目印に枝を持って集まってくる。

 そして、火魔法でどんどん枝へと火を灯していく。

 僕も別の枝に火を貰い、ボスウルフへと近づいていく。

 

 『リンカさん、灯りを持って近づきます』

 

 『分かった!』

 

 

 

 灯りに照らされたボスウルフは以前とは違い、黒い体毛、赤い目をしていた。

 これは、強化の結果だろうか?

 何か違う気がする。

 

 そして、その相手をするリンカさんとログレス。

 リンカさんは相変わらず安定した回避と攻撃を行っている。

 ログレスも盾で攻撃を受け流しつつ、攻撃を行っているが、たまに受けきれずに本体へとダメージを受けているようだ。

 そのHPは7割を下回っている。

 

 さて、これ以上は近づけない。

 僕にあれを回避する術はない。

 だが、丁度片手が空いている。

 援護に入ろうか!

 

 おっと、その前に支援魔法を掛け直しておこう。

 

 

 

 それにしても、ログレスの成長が凄い。

 あれだけ速いボスウルフの攻撃を防ぎ、攻撃まで行えている。

 召喚したてでパペットからも攻撃を受けていたころのログレスはもういないのだ。

 これは負けていられないな。

 僕も頑張るよ!

 

 

 

 『あと5%だ! 勝てるぞ!』

 

 レギオンチャットに響くリンカさんの声。

 あと5%なのか。

 速すぎてHPバーが確認できないので、ありがたい知らせだ。

 

 あれから近接職で自信があるものはボスウルフへ、遠距離職は交代でボスウルフへ遠距離から攻撃、その他の物は灯りを持って近くで待機か、近くの木から枝を集めている。

 その甲斐あってか、ボスウルフのHPの減りはかなり加速している。

 だが、それでも咆哮以前よりもかなり遅い。

 単純に防御力が上昇し、さらには速度の上昇で攻撃が当たりづらくなっているのだ。

 僕も体に当てるだけでも精一杯で、誘導までは出来そうにない。

 まあ、ここは無理をせずにダメージ積み重ねていこう。

 

 

 

 『ユウ君、ログレスに一瞬でいいから私の防御を頼めるかい?』

 

 『大丈夫です』

 

「ログレス、少しの間リンカさんを守って!」

 

 その声を聴き、すぐにリンカさんの前へと出るログレス。

 多分耐えられるのは3発ほどだろう。

 だが、十分だろう。

 

 リンカさんはログレスが前に出ると同時に刀を鞘へと納める。

 ボスウルフはリンカさんに飛び掛かるが、ログレスは冷静に盾で受け止めている。

 最初は勢いで少しだけ押されたが、すぐに止まる。

 押し切れないことが分かったのか、ボスウルフは横へと飛び、再度リンカさんへと飛び掛かる。

 ログレスはリンカさんとボスウルフの間に移動し、盾を構える。

 今度はさらにログレスが押されてしまったが、何とか耐えきる。

 そして、ボスウルフは距離取った。

 

「ログレス、ありがとう」

 

 そこにリンカさんの言葉が響く。

 この言葉に、ログレスは頷いた。

 

 どうやらこの戦闘は終了のようだ。

 

 再度リンカさんへと飛び掛かるボスウルフ。

 リンカさんはその攻撃をギリギリのところで避ける。

 そして、リンカさんは刀を鞘へと収めなおした。

 

 リンカさんに攻撃を避けられたボスウルフは着地に失敗し、地面を滑っていく。

 そして、ボスウルフは立ち上がらない。

 

 <試練のクリアを確認した。おめでとう! 君達は試練を突破したのだ!>

 

 <試練突破者達よ、これより君達の中で活躍の大きかった者を代表として封印の神殿へと転送する。そこで何を行うかはあちらで聞いてほしい。そして、他の者は一足先に元の場所へと転送する。代表の帰還を待っていてほしい。では、また会える日を楽しみにしておくよ>

 

 その言葉を聞き、溢れる歓声。

 だが、その歓声を聞き終えることなく景色が闇に包まれた。

 すぐに闇は晴れ、目の前には女神像が視界いっぱいに映っている。

 

 う~ん。

 皆と一緒に騒いでいたかった気がするよ。

 

 周りを見渡すと僕の他に3人とイナバ、ルビー、ログレスがいる。

 僕が活躍が大きかったのは分からないが、他の3人は納得だ。

 1人はリンカさん。

 まあ、当然だろう。

 彼女がいなければ最初すら切り抜けられなかったはずだ。

 

 2人目はサツキさん。

 この人も当然だろう。

 まず、この人がいなければみんなが集まることすらなかった。

 そして、試練中も皆をまとめていた。

 

 3人目は槍の人。

 あ、名前知らなかったよ……。

 しかも、ここでは名前が確認できない。

 何てことだ……申し訳ない。

 

 まあ、それは置いておいて、この人も当然だと思う。

 合流までは集団をまとめ上げ、合流後はボスウルフの相手もしていた。

 リンカさんの実力に隠れて目立たなかったが、この人もかなりの技量がある。

 

 イナバ達はまあ、僕が来たからだろう。

 皆十分に活躍はしてたが、この3人と比べると劣ってしまうのは仕方ない。

 なので、あとで褒めてあげよう!

 

 

 

「よくぞ参りました。試練を突破せし者よ」

 

 いつも通り、女神像に色が着き話しかけてきた。

 何で最初は女神像になっているのだろう?

 まあ、いいか。

 それよりも、僕の方を見て一瞬だけ悲しそうな顔をしていなかったかな?

 もしかして、何か悪い事をしてしまっただろうか?

 前回は友好的だったように見えたし、依頼通りに南の試練へ挑戦もした。

 うん、気のせいだろう。

 だが、機会があったら聞いてみよう。

 

「ここは封印の神殿の1つ。そしてここに封印されているのは、力です」

 

 知ってた。

 

「私の後ろにある黒色の宝玉を壊せば無事に力は解放されるでしょう。ですがその前にあなた方に試練突破の報酬を渡したいと思います。ですが、報酬は1個。皆さんで話し合って報酬を決めてください。ちなみに質問は受け付けません」

 

 おっと、北の試練も複数人いたのに、発言が違いませんか?

 まあいいけどね。

 

「皆さん、どうされますか?」

 

 話を切り出したのはサツキさんだ。

 流石、まとめ役。

 

「俺はあんたに任せるよ。できれば皆で分け合えるものを頼む」

 

「私もそれで良い」

 

「僕もそれでお願いします」

 

「では、皆で考えましょう」

 

 そう言い、ニッコリと笑うサツキさん。

 どうやら丸投げ失敗のようです。

20141014:修正

一部セリフを修正しました。

・私の後ろにある黒色の宝玉を壊せば無事に情報は解放されるでしょう。

・私の後ろにある黒色の宝玉を壊せば無事に力は解放されるでしょう。

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