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90/202

―――90―――

イナバ:ラビット

ルビー:ホーク

ログレス:パペット

 おっと、イナバが何かを感知したかな?

 そうなると……。

 

 『皆さん、従魔が何かを感知しました。外周より敵が接近してきている可能性があります。注意してください』

 

「イナバ、ルビー、ログレス。外の魔物をお願い!」

 

 今ならばログレスも外に向かわせるべきだろう。

 ゴーレムの力はまだ必要ない。

 ならば最適な場所へ。

 

 

 

 やはり、速くなっている?

 あの遠吠え以降、ボスウルフの動きが速くなっている気がする。

 もしかして、あの遠吠えはステータス強化も含んでいたのだろうか?

 そうなると、恐怖を与える効果に加え、ウルフの出現、ステータス強化と3つも効果を持っているのか。

 いや、遠吠えは恐怖を与えるだけで、他の2種類は同時に発動しただけかもしれないか。

 

 だが、そうなると遠吠えをあれ以降使用していないことが気になる。

 何か制限があるのだろうか?

 まあ、あまり効果が出なかったから使用してこないだけかもしれないかな。

 確かに恐怖を与える効果は強力だが、硬直時間があり、その硬直時間にあれだけ攻撃を受ければ使用するのを躊躇もするか。

 

 

 

 うんうん、順調だ。

 だが、もうそろそろかな?

 ボスウルフのHPは現在3割を切っていると思われる。

 そう、もうすぐ4分の1を切りそうなのだ。

 ゴーレムと同じだとは限らないが、試練の際、ゴーレムは4分の1を切ったところでさらに強化を使用してきた。

 だとすると、こちらが使用しても不思議ではない。

 

 『HPが3割を切った!』

 

 おっと、今切ったところだったか。

 やはり動きが速いと確認が難しいな。

 

 『皆さん、もうすぐボスウルフのHPが4分の1を切ります。確実とは言えませんが、5割を切った時にもゴーレムと同じく、何かが起こりました。そうなるとゴーレム2型と同じく4分の1を切ったところで再度何か起こる可能性は高いです。十分注意してください』

 

 今度は何が起こるだろうか?

 怖くもあるが、楽しみでもある。

 さあ、どうなる?

 

 

 

 『4分の1を切った』

 

 何も起こらない?

 

 

 

 『何も起こらないようですね。ですが、気を抜かずに行きましょう』

 

 何も起こりませんでした。

 少し期待していただけに、残念だ。

 まあ、何も起こらない方が良いのだけどね。

 

 いや、もう1パターンあるじゃないか。

 そう、鎧騎士はHPが1割を切った時に特殊行動をした。

 そうなると、少し対策をしておこうかな。

 1割ならば時間は大丈夫だろうからね。

 でも、準備はもう少し後だ。

 

 

 

 『外周のウルフが襲ってこなくなった。おそらく全滅したと思われる』

 

 『了解しました。外周で戦っていた方の半分はそのまま警戒を行い、残り半分はボスウルフの場所まで戻ってきてください』

 

 もう全滅させたのか。

 早いな。

 そうすると、もうログレスを呼び戻しても問題ないだろう。

 

「すいません、少し離れます。すぐに戻ってきます」

 

「おう!」

 

 

 

「ログレス、来てくれ!」

 

 少し離れた場所で、外周で狼と戦っているログレスを呼んだ。

 その声を聞き、すぐに外周からログレスが戻ってきた。

 

「ログレス、鎧騎士で再召喚する。そして、ボスウルフのHPが1割を切ったら参戦してくれ」

 

 その言葉にログレスは強く頷く。

 うん、気持ちも十分なようだ。

 

 ログレスを送還し、鎧騎士で再召喚する。

 目の前には黒味が強い灰色で光沢を放つ全身鎧の騎士。

 片手には剣を片手には盾を持っている。

 

「ログレス、自由に戦ってほしい。武具も自分が一番いいと思ったものに変えればいい」

 

 そういえば武具の材料は足りているだろうか?

 

「武具の材料は足りている?」

 

 そう聞くと、ログレスは首を横に振り、剣を掲げた。

 そうか、十分足りているか。

 

 では、その時まで待っていくれ。

 

 

 

 『HPが1割を切りそうだ。注意してくれ』

 

 『皆さん、もうすぐボスウルフのHPが1割を切ります。私は確認できていませんが、西の神殿でゴーレム2型2式のHPが1割を切った際に特殊な行動をしたようです。十分に注意してください』

 

 さあ、何が起こるのだろうか?

 そろそろ僕も準備をしておこう。

 

「ログレス、もうすぐだ。準備しておいてね」

 

 

 

 『HPが1割を切る。注意してくれ』

 

 

 

 突然ボスウルフは動きを止め、天を仰いだ。

 これは咆哮かな。

 今回は位置が良く、十分に口の中を狙える。

 ボスウルフの口の中を狙い、チャージされた魔法銃を撃つ。

 そして、次に起こる何かに備える。

 

 

 

 その咆哮は夜を呼んだ。

 その咆哮は力を生んだ。

 その咆哮は恐怖を与えた。

 

 まるで、何かを悲しむような。

 まるで、何かを決心したような。

 

 森に響くその咆哮に僕は恐怖で縛られた。

 月の明かりも無い夜の森に視界を奪われて恐怖が増す。

 光り輝く大きな狼に畏怖を覚える。

 

 そして、ボスウルフを覆っていた光はすぐに消えて、闇に溶け込んだ。

 

 聞こえる音は1つ。

 皆、動けていないのだろう。

 そして、視界の隅に映るログレスもまた、動けていない。

 まあ、仕方が無いとは思う。

 明らかに上位の敵。

 ほぼすべてのプレイヤーが恐怖で動けない状況。

 

 ならば、示すべきだろう。

 召喚したものとして。

 ともに戦うものとして。

 

 

 

 恐怖に縛られた心は、後ろを向き、逃げたがっている。

 だが、そんな考えは捨て置けばいい。

 

 震える手は狙いを定められない。

 だが、問題無い。

 当てる必要は無い。

 

 1つの音が支配する世界。

 その音の少し上へと魔法銃を撃つ。

 暗く輝くのその弾を。

 

 さあ、これでどうだ?

 だが、弾が描く光の線には何も映し出されない。

 

 目を瞑り、深呼吸する。

 1回、2回、3回と。

 ようやく、震えは治まった。

 だが、恐怖は消えない。

 

 目を開け、2つの音へと魔法銃を撃つ。

 2度、3度と。

 

 そして、その光に照らされ、微かに見えた大きな狼と少女。

 その大きな狼は、漆黒の体と赤い目をしていた。

 その黒髪の少女は目を瞑り、狼の攻撃をギリギリのところで避けていた。

 

 さらにもう1度、目を閉じて深呼吸する。

 もう、大丈夫。

 恐怖は無い。

 

 そして、集中するために最後に1回深呼吸をする。

 

 

 

 目を開ける必要は無い。

 位置は音とこれまでのボスウルフの動きから考えればいい。

 

 音の感じからして、ステータスもかなり強化されているようだが、問題無い。

 最初は当てるのではなく、援護できればそれでいい。

 

 まずは1発目。

 これは当たっていない。

 

 2発目。

 これも当たっていない。

 だが、少しだけボスウルフの動きが乱れた気がする。

 

 3発目。

 ボスウルフに当たったようだ。

 だが、ボスウルフの動きは乱れない。

 やはり、先程だけか。

 

 4、5発目。

 両方とも当たった。

 だが、ボスウルフの動きは乱れない。

 この当たり方から考えて、ボスウルフは避ける気が無いな。

 これは面倒なことだ。

 

 そして、近くから聞こえる待望の音。

 

「ログレス、行ってくれ」

 

 その音は先にある1つの音へと駆けていく。

 

 6、7発目。

 やはり避ける気が無いか。

 だが、この状況で弱点は狙えない。

 なので、少しでも邪魔をすることしかできない。

 

 先の音が1つから3つに増えた。

 どうやらログレスが辿り着いたようだ。

 これでリンカさんも少しは楽になるだろう。

 

 そして、音が増えたということは、リンカさんも攻撃を開始したのだろうか?

 これは事態が一気に進む?

 まあ、僕は次の行動に移ろう。

20141009:修正

一部セリフを修正しました。

・皆さん、もうすぐボスウルフのHPが4分の1を切ります。

・皆さん、もうすぐボスウルフのHPが1割を切ります。

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