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―――89―――

イナバ:ラビット

ルビー:ホーク

ログレス:パペット

 休憩しつつ、ボスウルフとプレイヤーの攻防を見ているが、皆十分に攻撃ができているように思える。

 急所へ攻撃が当たることは少ないが、当たる場面もある。

 その多くはリンカさんの攻撃だが、槍や矢等も当たっている。

 

 やはり、ここまで残っている人は技術があるのだろう。

 最初はリンカさんとボスウルフの戦闘に飲まれて参戦することを躊躇していた。

 だが、切っ掛けがあれば、その躊躇は取り払われ、自分の長所を生かして攻撃をできている。

 良いことだ。

 

 

 

 さて、そろそろ準備しておこうかな。

 動きが速く正確には確認できないが、現在のボスウルフのHPは6割を切っている。

 ならば、そろそろ何かある可能性が高い。

 それに、何もなかったとしてもそろそろ交代した方が良いだろう。

 

 ただ、問題は何が起こるかだ。

 ボスゴーレムはHPが5割を切った時に能力強化を行ってきた。

 ならば、ボスウルフは何をしてくる?

 

 すぐに思いつくのは、仲間であるウルフの再出現、ボスウルフのステータス強化、新たな攻撃の追加、1番強いリンカさん以外への攻撃だろうか?

 夜であれば、狼男もあるだろうか?

 いや、あれは逆か。

 

 そうなると、思いついた中で危険性が高いものはリンカさん以外への攻撃だろうか。

 前衛の人ならば短時間ならば大丈夫だろうが、魔法職等の後衛職は回避すら危ういかもしれない。

 対策としては、前衛の盾持ちが庇うのが効果的か?

 まあ、そうなれば秘蔵のゴーレムを出すとしよう。

 ただ、30分しか持たないけどね!

 

 それ以外はどうだろうか?

 ウルフの再出現は大丈夫だろう。

 全員がここに集まっているのだ。

 余程の数に常時襲われない限りは大丈夫だろう。

 

 ボスウルフのステータス強化はリンカさんならば大丈夫だろう。

 今でさえ余裕が見えるからね。

 本当に、リンカさんは何者なのだろうか?

 まあ、今はいいか。

 

 新たな攻撃の追加はどうだろうか?

 ……よく考えてみたら、これも危ないな。

 もし、回避不可能な範囲攻撃が追加されてしまうとリンカさんでも長時間の相手は辛いかもしれない。

 ダメージは1撃でなければ回復役がいるので大丈夫だが、体勢を崩すと危ない。

 もしかしたら攻撃を受け、体勢を崩しても避けられるかもしれないが、それに期待するのは間違いだろう。

 対策としては、範囲外にいる遠距離職が攻撃をして、注意をそらすかウルフの体勢を崩せればいけそうかな。

 ただ、狼の範囲攻撃や回避不可能攻撃は何があるだろうか?

 魔法や属性攻撃は今のところ確率は低そうだ。

 ……遠吠えかな?

 単なる遠吠えでも、大音量で動きが止まるかもしれない。

 うん、警戒はしておこう。

 他は何かあるだろうか?

 ……思いつかないな。

 

 

 

 さて、色々と考えたところで、5割を切った瞬間のボスウルフの行動を見て、攻撃をしようと思う。

 ウルフが出現してきても周りを警戒している人がいるので問題無い。

 あとは、遠吠えがありえそうなんだよね。

 レギオンチャットで伝える?

 いや、止めておこう。

 可能性が低い事を言って、動きを鈍らせても不味い。

 

 だが、姉さんとリンカさんには伝えておこうかな。

 あの2人ならば動きが鈍ることは無いだろう。

 あ、先程の動きを見た限りアーネさんも大丈夫かな。

 ならば3人に伝えよう。

 

 

 

 『サツキより皆さんに連絡をします。もうすぐボスウルフのHPが5割を切りそうです。警戒をお願いします。予想ですが、ウルフの再出現、ボスウルフの強化、新攻撃の追加、攻撃パターンの変更等が考えられます。また、それ以外にも可能性はありますので、各自なにか思いつきましたらレギオンメンバーから私にチャットでお願いします。ですが、現在戦闘中の方はできるだけ戦闘に集中してください。』

 

 おっと、これはサツキさんに伝えようか。

 えっと、レギオンメンバーから……。

 

 『ユウです。ボスウルフの新たな攻撃の追加に関して、遠吠え等による音の範囲攻撃が予想されます。検討をお願いします』

 

 『分かりました。検討させていただきますね。ありがとうございます』

 

 よし、これで良いかな。

 少ししてレギオンチャットで何も無かったら姉さん達3人に伝えよう。

 

 

 

 『皆さんの意見でも多かったものを通達させていただきます。一番多かったものが遠吠え等の音による範囲攻撃です。次に、各種魔法、属性攻撃です。十分注意してください』

 

 やはりその辺りが妥当なのだろうね。

 まあ、これで姉さん達には伝えなくていいかな。

 

 さて、そろそろ構えておこう。

 多分リンカさんならば5割を切る前に教えてくれるとは思うが、絶対ではないからね。

 

 

 

 『警告。そろそろ5割を切る。注意してくれ』

 

 レギオンチャットに響くのはリンカさんの声。

 やはり教えてくれたか。

 さあ、何が来るだろうか?

 楽しみでもあり、怖くもある。

 

 

 

 突然停止する狼。

 そして、頭を天へと向かせた。

 その動作を見た瞬間、目へと魔法銃を撃つ。

 

 位置が悪かった。

 ここからでは、ギリギリ当たるかどうかの位置にある目を狙うしかない。

 だが、多分あれは吠えるだろう。

 ならば、ボスウルフの次の行動を遅らせるためにも、外れたとしても攻撃はしておきたい。

 

 そして、天へと向いた口から森へと音が広がる。

 その音量は凄まじい。

 近くに居れば聴覚を一時的に封じられてしまうだろう。

 

 だが、それよりも問題がある。

 なんだ、この恐怖感は。

 足が竦む。

 腰が引ける。

 体が震える。

 

 だが、それだけだ。

 足は竦ませておけばいい。

 腰はひかせておけばいい。

 体の震えは止まってね?

 

 さあ、いまだ動かない巨狼へと魔法銃を撃つ。

 それだけで良い。

 外れてもいい。

 当たったら運が良い。

 

 魔法銃から放たれたチャージされた弾はボスウルフの顎へと真っ直ぐに飛んでいく。

 やはり震えも止められなかったか。

 まあ、仕方ない。

 だが、悪い位置ではないだろう。

 

 そして、弾が飛んでいくのを確認した後、目を閉じ、深呼吸を行う。

 すると、体を支配しようとしていた恐怖は地面へと吸い込まれるように消えていった。

 

 目を開け辺りを見渡して、状況を確認する。

 尻餅をついている人が5割、動こうとしているが動けない人が4割、行動を始めた人が1割だろうか。

 そして、ボスウルフの周りで止まっている人が数名。

 まあ、ボスウルフの周りの人は仕方が無い。

 不味い?

 まあ、不味いか。

 そうなると、もう1回するのか。

 ああ、黒歴史が増えそうだ……。

 

 『怯むな! 深呼吸せよ! そして、目の前の敵を確認せよ! 目の前の敵は何も変わっていない! それに、我らが戦乙女は既に戦っているぞ! 皆の者、それでいいのか!?』

 

 これで良いかな。

 試練初めの事で、参加している人がこんな感じの言葉が好きなのは理解した。

 勿論、僕も好きだよ!

 

 そして、リンカさんには悪いけど、戦乙女になって頂いた。

 まあ、こちらも勝利の女神にさせられたのだからいいよね?

 

 それにしても、あれを受けて攻撃を続けているリンカさんはどうなっているのだろうか?

 まあ、動きが鈍っているのは分かるのだけど、それでも正確性は十分だ。

 

 さて、魔法銃が飛んでいったとき、同時に水の玉も飛んで行っていたから、多分姉さんだろう。

 そして、既にボスウルフへと接近したアーネさんも見える。

 流石だね。

 さあ、僕もリンカさんの援護に入ろう。

 

「皆の者、勝利の女神の言う通りだ! いくら強いとはいえ、少女一人に戦わせていいのか? 男なら気合を見せろ!」

 

 槍の人か。

 相変わらず仕切るのが上手い。

 だが、それでは女性には届かないのでは?

 まあ、いいのだけどね。

 そして、勝利の女神は定着なの?

 できれば忘れてほしいのだけど。

 

 『皆さん、先程の遠吠えには弱点があります。遠吠えをした直後に硬直を確認しました。十分立て直せます。脅威ではありません!』

 

 サツキさんは理由付きで勝てると説くのか。

 流石です。

 

 そして、それらの言葉の影響か、周りでは尻餅をついていた人は立ち上がり、止まっていた人は多少ぎこちないが動き始めた。

 ボスウルフの周りの人達も動き出し、こちらへと向かってきている。

 やはり切っ掛けがあれば十分動ける人たちばかりなのだ。

 ここまで効果があると僕も黒歴史を増やした甲斐があるというものだよ!

 でも、できればサツキさんあたりにこの役目はしてほしかった……。

 

「負けてたまるか!」

 

「女神さまに続け!」

 

「回復しますよ~」

 

 うん、やる気は十分。

 さあ、第2幕の始まりだ!

20141009:修正

誤字を修正しました。

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