―――87―――
イナバ:ラビット
ルビー:ホーク
ログレス:パペット
さて、そろそろいいだろうか?
そろそろ、1人で危険なプレイヤーは合流しきっているだろう。
そして、いくらリンカさんが強いとは言っても、長時間任せきりなのはよくないだろう。
なので、ルビーを呼び戻してリンカさんのところまで案内をお願いしよう。
「すいません、皆さん。後1人の従魔がそろそろ帰ってくるのでボスウルフのところまで案内してもらおうと思うのですがどうでしょうか?」
「ボスウルフか。確かにそろそろ向かった方が良いだろう。先程からウルフが襲ってくる頻度も低くなっていることだしな」
「そうですね。私も賛成です」
「よし、ボスウルフのところに向かうことに異議があるやつは手を上げろ!」
誰も手を上げないな。
まあ、最終的にボスウルフを倒さなければいけないのだから、異議もないか。
「よし、それじゃあボスウルフに向かうぞ! では、頼む」
「はい、了解しました。少し大声を出しますがよろしいでしょうか?」
「構わんだろう。どちらかと言えば、ウルフが寄ってきてくれた方が良い」
「ありがとうございます。では。ルビー、戻ってきてくれ!」
これで届かなかったらパーティチャットを試してみようかな。
まあ、パーティチャットだと僕の場所が分からないんだけどね。
少し待つと、ルビーが空から降りてきた。
流石ルビー。
時間から言って、声の届くギリギリの距離だったのだろうか?
それとも、ホークは聴力も良かったりするのだろうか?
まあ、それは置いておこう。
「ルビー、リンカさんのところまで案内をお願いできる?」
そう聞くと、ルビーは頷き、空へと飛びあがった。
さて、ルビーが戻ってくるまでの間に感知範囲外にいるウルフも寄ってきてくれると嬉しいのだけど、どうだろうか?
「お帰り、ルビー」
結局来ませんでした。
もしかして、近くのウルフはもう全滅しているのだろうか?
まあ、それならばその方が良いのだけどね。
「ルビー、リンカさんは見つかった?」
そう聞くと、ルビーは頷き見つけたことを教えてくれた。
ならば、行こうか。
「お待たせしました。それではご案内いたします。ルビー、お願いね」
「おう、頼む」
腕の中に抱いていたルビーを空へと放つ。
するとルビーはすぐに空へと上がり、ある方向へと飛び始めた。
そして、こちらから見える位置をゆっくりと飛んでいる。
「あちらです。さあ、行きましょう」
ルビーに案内をしてもらい進んでいくと、前方に大きなウルフの相手をしている人物が見える。
その人物は刀を手に持ち、攻撃を避けつつも反撃を行っている。
そして、少し離れた場所に10名ほどの集団が武器を構えて周囲を警戒している。
どうやらあそこがボスウルフとリンカさんが戦っている場所のようだ。
移動していた時間は予想よりも短かったが、それは一直線に進めていたからだろう。
戦闘も途中で1回だけウルフの群れが襲ってきただけで、その戦闘も数が少なかったこともあり、槍の人とログレスがすぐに倒した。
『こちらキドウ。30名程と共にボスウルフの地点へと到達した』
『了解しました。ウルフの出現も少なくなっているようですので、他の方もボスウルフを探して移動してください』
『了解』
『分かりました』
この集団って30名もいたのか。
まあ、そこはいいかな。
返事をした声の数からいって、残りの集団は2集団なのだろうか?
いや、サツキさんも含めて3集団かな。
『従魔のホークを向かわせて案内をしましょうか?』
『それなら俺も手伝えるな。こちらもホークを向かわせられる』
『御二人ともお願いします。それでは、各集団の代表1名の方、集団の人数をお願いします』
『52名です』
『5名です』
『辿り着いていないのは残り2集団ですね。こちらは73名ですので、少ない集団からお願いします』
『分かりました。それでは、こちらは5名の集団の方を担当させていただきます。従魔の名前はルビーです』
『こっちは52名の方だな。従魔の名前はカリュウだ』
『位置を特定したいと思いますので5名の集団の方、空へ向けて大声を出して頂けますか?』
『分かりました』
オーイ
「ルビー、お願い。声のしたところにいる人達をここまで案内してきてほしい」
『こちら大丈夫です』
『ありがとう』
『それじゃあ、こっちも空へ向けて大声を頼む』
『了解』
オーイ
その声のすぐ後に空で旋回していたホークが飛んでいったのが見えた。
どうやら無事に聞こえたようだ。
まあ、近くにいたのだし当然か。
『こちらも大丈夫だ』
『助かった』
『それではどちらか早く案内が終わった方は私達の方もお願いします』
『了解です』
『分かった』
さて、これでここへ全集団が集まるだろう。
問題はここからどうするかだ。
先程から僕達の集団の人がリンカさんの援護をしようとして、躊躇している。
まあ、分かる。
あれは手を出しにくいだろう。
逆に邪魔をしかねないからね。
多分先に来ていた人達もその結論に辿り着いて辺りの警戒しているのだろう。
まあ、そのおかげでリンカさんはボスウルフと1対1で戦えているわけなので判断は間違っていない。
だが、それでは事態が進展しない。
ボスウルフのHPはまだ1割どころか5%も削れていないのだ。
お、誰かが矢を撃った。
だがその矢は地面へと突き刺さった。
やはり、ボスウルフが速すぎるのだ。
普通のウルフ相手であれば十分すぎる程の速度と命中精度を誇った矢だったはずだ。
だが、ボスウルフには届かない。
これは魔法も当たらないのではないだろうか?
初期の魔法しか見ていないが、どう見てもあの矢の方が速かった。
そうなると、ボスウルフは魔法を確認してから余裕で避けてきそうだ。
それどころか、リンカさんの移動範囲を制限しかねない。
さて、どうするか。
まあ、僕が今の状態で攻撃をしてもリンカさんの邪魔になるだろうから、ボスウルフの動きを見ておこう。
そして、それは従魔達も同じだろう。
イナバもログレスもあの速度を長時間相手には出来ないだろう。
だから。
「イナバ、ログレス、今はボスウルフの動きをよく見ておいてね」
おっと、ルビーが帰って来た。
どうやらこちらの集団の方が近かったようだ。
『5名の集団、ボスウルフの地点へ到着しました』
『了解しました。それではユウさん、私達の方へお願いします』
『了解です。それでは空へ向けて大声をお願いします』
『はい』
オーイ
「ルビー、もう一度お願い。声のした場所にいる人たちをここまで案内してきたほしい」
ルビーは空中で鳴いて了解を示すと、声のした方角へと飛んでいった。
どうやらもう1集団も戻ってきたようだ。
姉さん達はこちらの集団にいたのか。
いや、アーネさんがいないか。
ということは、アーネさんは最後の集団かな。
「姉さん、あそこに援護できそう?」
「大丈夫よ。ただ、私一人ができても仕方が無いでしょ?」
「まあ、そうだよね。僕はもうちょっと時間が欲しいかな」
「そうなの? イナバちゃん達は?」
「イナバは回避専門だから。ログレスは多分難しいかな」
「じゃあ、イナバちゃんは回避だけなら問題は無いと言うこと?」
「多分ね。まあ、攻撃もできるのだけど、ラビットの体当たりでは体勢さえ崩せそうにない気がする」
「そうだと思うわよ。まあ、もう少し見ていましょう。まだアーネちゃんも来ていないことだし」
「アーネさんも援護できるの?」
「うん。リンカちゃんの動きに合わせられるからね」
と言うことは、姉さんも合わせられるのか。
まあ、当然か。
それならば、もう少しボスウルフを見させてもらっておこう。
直接相手は出来なくても、できることはあるからね。
さらに少し経過し、最後の集団が帰って来た。
そこにはサツキさんとアーネさんの姿が見える。
「ルビー、お帰り。そして、お疲れ様。少しの時間だけど休憩をしておいてほしい。それと、疲れているところ悪いのだけど、その間はボスウルフの動きを観察しておいてね」
20141009:修正
誤字を修正しました。