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―――85―――

「本日は呼びかけに応じて集まってくれてありがとうございます。私が責任者のサツキです。まあ、責任者とは言っても説明と進行を行う程度ですが。さて、試練に挑戦する前に、現在判明している情報の説明と役割の決定を行いたいと思います。質問などは後で受け付けますのでまずは話を最後までお聞きください」

 

 少し離れた場所で紫寄りの桃色の髪で紅い目をした少女が説明を開始した。

 あの人が掲示板で呼びかけていたサツキさんか。

 身長は僕よりも少し高い程度なので、姉さんと同い年くらいだろうか?

 武器は腰に掛けている剣だろう。

 そして、防具が小盾に金属鎧か。

 アーネさんと同じ構成だな。

 

「まず、試練の内容ですが、別フィールドに飛ばされた上で、そのフィールドの敵の殲滅がクリア条件となります。他の試練では第1の試練と発言していましたが、こちらでは試練としか発言が無い事から、この1つをクリアしてしまえば試練クリアとなると予想されます。ですが、あくまで可能性ですので、敵殲滅後も気を抜かないようにお願いします」

 

 うんうん、掲示板に書いてあったことの復習かな。

 まあ、すべて読んでいない人もいるかもしれないので必要だろう。

 

「次に出現する敵についてです。まず、皆さんもご存知のウルフ。そして、そのレアであるゲイルウルフ。こちらは出会ったことのない方もおられるかもしれませんね。基本的にはウルフと同じなのですが、前方に限り素早い体当たりや移動を行うことがあります。対策としては、前に立たずに横や後ろから攻撃を加えてください」

 

 ゲイルウルフはそんな感じの認識なのか。

 いや、僕も同じなんだけどね。

 リンカさんなら前から切り伏せそうだ。

 ログレスならばどうだろうか?

 盾で防いで反撃で仕留められそうだ。

 

「そして、今試練の一番の難敵、ボス格のウルフです。スキルレベルが足りなかったのか識別が使用できなかった為、名前は不明です。その為、一旦ボスウルフ、あるいはボスと呼称します。このボスウルフの特徴としては、とにかく強いです。まず、ゲイルウルフの素早い移動と同じ速度で常時動いています。しかも単純に速いだけではなく、森をうまく使いこなしている感じがしました。さらに、攻撃力も高いです。奇襲だったとはいえ、レベル9のプレイヤーが一撃で倒されています。ただ、これに関しては防具の無い部分を狙われている為、鎧部分や盾ならばどうなるかは不明です。そして、どうやら防御力も高いようです。ある方からの情報になるのですが、数時間刀で攻撃を加えたところ、1割もダメージを与えられなかったようです。その方の武器と技量を確認させていただきましたが、両方とも不足は有りませんでした。いえ、かなり高水準でした。その為、攻撃を加えるにしても1人や2人では足りないでしょう。そして、ボスウルフではありませんが、西のボスゴーレムはHPが5割を切った際に素早くなります。そして、強化個体と思わしきゴーレム2型ではさらにHPが4分の1を切ったところでさらに素早くなります。その為、ボスウルフもHPをキーに何かしてくるかもしれませんので注意しておいてください」

 

 ある人はリンカさんだろうか?

 まあ、他にボスウルフと数時間戦える人は知らないけどね。

 

「ここまでが現在判明している情報となります。これらを踏まえて、今回の作戦は数名でボスウルフを引きつけておき、その間に他の全員が周りのウルフを殲滅。そしてボスウルフに一斉攻撃を加えて倒すと言う流れになります。そこで、今から皆さんの能力をお聞きし、役割を決めていきたいと思います。少し時間がかかりますので、ゆっくりと休憩しながらお待ちください」

 

 まあ、妥当だろうか。

 問題は誰がボスウルフを引きつけるかと、一斉攻撃が通用するかどうかかな。

 まあ、前者はリンカさんがいるので問題は無いとして、後者はどうだろうか?

 まず、魔法職が一斉攻撃するとして、その間は誰がボスウルフを引きつけるのだろうか?

 まさか引きつけている人ごと攻撃はしないだろう。

 やはり、交代で攻撃していくことになるのだろうか?

 そうなると、ボスウルフがHP回復系だった場合に若干不味いかな。

 まあ、実際は分からないけどね。

 そして、近接系の一斉攻撃は難しくないだろうか?

 まず、最低条件としてボスウルフの攻撃を避けながら攻撃できること。

 そして、一定以上の攻撃を行えること。

 これは手数でも一撃の攻撃力でもいいだろう。

 そうなると、数が限られてきそうだ。

 だが、共通している一番の問題は攻撃を当てられるかどうかだろう。

 どこまで速いのか見てみないと分からないが、ゲイルウルフの速い時と同等の速度で常時動き回られたら当てるのは難しいと思うのだ。

 あくまで僕基準での考えなので皆は余裕で当てていくかもしれないけどね。

 

 まあ、そこは僕が考えても意味が無いか。

 もしかしたら、現状のプレイヤー達がどこまで通用するか確認する為かもしれない。

 負けたら負けたで更なる情報も得られるので、それでも良いとは思う。

 そして、戦力差を正しく認識し、再度挑戦の時を待つのだろう。

 

 まあ、そんなことを考えていてもしょうがない。

 全力で挑むだけだ。

 

 

 

 おお、イナバ、ルビー、ログレスがシンゲンさんの従魔達と遊んでいる。

 鬼ごっこが流行りなのだろうか?

 まあ、楽しそうだからいいと思う。

 

 

 

 シンゲンさんと情報交換や雑談をして過ごしていると、サツキさんが僕たちの方へと歩いてきた。

 どうやら役割決めは僕たちの番のようだ。

 

「シンゲンさんと、ユウさんですね。本日は参加して頂き、ありがとうございます」

 

「こちらこそ参加させて頂きありがとうございます」

 

「挑戦する機会を作ってくれただけでもありがたい」

 

「それでですね、御二人の役割を決めたいのですが得意なスキル等を教えてもらってもいいでしょうか?」

 

「従魔魔法と回復魔法だ」

 

「従魔魔法と魔法銃です」

 

 お、シンゲンさんは回復魔法を取得していたのか。

 

「分かりました。それではシンゲンさんは従魔がウルフの殲滅、ご本人は危なそうな方の回復をお願いします。ユウさんは従魔と共にウルフの殲滅をお願いします。基本的にウルフの殲滅が終わるまでは自分からボスウルフに近づかないようにお願いします。そして、ウルフの殲滅が粗方完了しましたらボスウルフの討伐に加わってください。ウルフ殲滅状況の確認はチャットでやり取りも行いますが、基本的には殲滅完了の判断は各自でお願い致します」

 

「分かった」

 

「分かりました」

 

 まあ、予想通りかな。

 ボスウルフの相手と遊撃以外くらいしか役割は無いと思うんだ。

 いや、魔法職はできるだけMPを温存するのだろうか?

 まあ、僕は役割をこなせばいいか。

 

「また、この後でレギオンを組みますが、その際はお二人とも1人1パーティでよろしいですか?」

 

「大丈夫だ」

 

「大丈夫です」

 

「了解しました。ありがとうございます。それでは次の方の場所へ行ってまいります。一緒に頑張りましょう」

 

「ああ、頑張ろうな!」

 

「はい、頑張りましょう」

 

 

 

 さて、シンゲンさんとの話も終わったことだし、姉さん達と合流しよう。

 始まるまでに姉さん達の役割だけでも聞いておきたい。

 

「シンゲンさん、すいませんが別の知り合いに役割などを聞いてきたいと思いますので、ここで失礼しますね。試練頑張りましょう」

 

「ああ、わざわざありがとうな」

 

 

 

「ユウ君、お帰り~」

 

「ただいま、姉さん。姉さん達はどんな役割になったの?」

 

「リンカちゃんとアーネちゃんがボスウルフの相手で、私がMPを温存しつつウルフの殲滅。フウちゃんがプレイヤーの支援と危ないプレイヤーの回復でアオちゃんとミドリちゃんがウルフの殲滅かな」

 

 おや、アーネさんもボスウルフの相手なのか。

 そうなると、防御系のスキル構成の人は全員ボスウルフの相手なのだろうか?

 

「そっか。僕は従魔と共にウルフの殲滅だったよ」

 

「やっぱりそうだよね。まあ、予想通りだったかな」

 

「うん、予想通りだったね。まあ、これ以外は無い気もするけどね」

 

「皆さん、お聞きください。役割決めが完了しましたため、レギオンを組みたいを思います。レギオンを組み終わり、確認が終了しましたら試練へと挑戦したいと思いますので準備してください」

 

「もう始まるみたいだね」

 

「そうね。それじゃあユウ君、一緒に頑張ろう!」

 

「うん、頑張ろう」

 

 

 

 少し待っていると、レギオンの参加申請ウィンドウが表示された。

 参加を選択すると、表示がサツキのレギオンに参加しましたと変更されたのでウィンドウを閉じておいた。

 さあ、いよいよ開始かな。

 

 

 

「皆さん、レギオン申請をお送りしましたのでご確認ください。まだ申請がいっていない方がおられましたら手を上げてください」

 

 うん、大丈夫だ。

 

 

 

「大丈夫そうですね。それでは、パーティで1名だけ、レギオンチャットの設定を常時音声を送りあうように変更をお願いします。戦いの最中に念話形式では難しいと思いますのでよろしくお願い致します。何か問題があるようでしたら、レギオンメンバーから私にチャットでお願いします」

 

 そんな設定があったのか。

 えっと……これか。

 よし、変更だ。

 

 

 

「最終確認を致します。レギオンに参加し、チャット設定を変更された方は手を上げてください」

 

 チャット設定を再度確認し、手を挙げた。

 周りを見ると全員手を挙げているようだ。

 

「はい、大丈夫ですね。それでは1分後に挑戦します。最終準備をお願いします」

 

 いよいよ挑戦のようだ。

 さあ、僕はどこまでできるだろうか?

 ボスウルフはどこまで強いのだろうか?

 色々と楽しみだ。

 

 

 

「それでは、挑戦します!」

 

 その言葉のすぐ後に目の前の景色が変わった。

 同じ森の中なのだが、木々の配置が換わっている。

 だが、木々や草木等の種類は変わっていないように見える。

 木々の密度も南の森とあまり変わらない。

 

 さて、これは不味いかもしれない。

 なぜイナバ、ルビー、ログレスが周りにいないのだろうか?

 パーティに入っているのは確認できるので、従魔が強制的に送還されたわけではなさそうだ。

 

 それならば問題は無いか。

 ウルフを倒しつつ、3人を探そう。

 幸い3人ともウルフに負けるようなことは無いだろう。

 そうであれば、とりあえずチャージしておこう。

 

 『これはどうしたんだ! なぜパーティメンバーがいないんだ!』

 

 『同じ場所で始まるんじゃなかったのか!?』

 

 <それでは試練の内容を説明する。試練の内容は敵の殲滅だ。それでは試練、開始!>

20141007:修正

一部言葉を修正しました。

残滅→殲滅

誤字を修正しました。

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