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「ユウ君。南の試練のレギオンは参加するの?」
南の試練のレギオン?
一昨日の調査報告以来掲示板を見ていなかったが、何かあったのだろうか?
「何の話?」
「あ~、知らなかったか。内部掲示板と外部掲示板でレギオンを組んで南の試練を攻略しようって話が出ているんだよ」
「そうだったの? ごめん、知らなかった。だけど、約束したし参加はしようと思う」
「良かった! 凛ちゃんが負けるレベルで強いからね。南の試練のボス。ところで約束って?」
やはり、リンカさんでも勝ってないレベルなのか。
まったく、どこまで強いのだか。
まあ、楽しみだけどね!
「北の試練をクリアした時に、封印の神殿にいた女性と南の試練に挑戦するって約束してたんだ」
「ん~? 何かのイベントかな?」
「どうだろう? イベントって感じじゃない気がしたんだけど」
「というか、ユウ君。北の試練もクリアしてたんだね。誘ってくれなかったんだね……」
……忘れてた。
「い、いや、北の試練は武器の強化を依頼した人の頼みで突然だったからさ……ごめんなさい」
「いいよいいよ……おねえちゃんなんか忘れて楽しめばいいんだよ……」
ま、不味いぞ。
完全に忘れていた僕が悪いのだけど、どうしようか?
……よし、これでどうだろうか?
「じゃ、じゃあ代わりに2回、楓姉さんの好きなタイミングで、楓姉さんのパーティに参加して手伝うよ」
「本当?」
「うん、本当」
「ありがとう!」
満面の笑みでのありがとうだ!
流石に1回ではお詫びにならないから2回にしておいたが、無事に機嫌を直してもらえたようだ。
まあ、元から機嫌を悪くしてはいないだろうけどね。
まあ、それは置いておいて、南の試練だ。
姉さんもパーティに参加していたと思うので、試練の様子を聞いておこう。
「ところで楓姉さん、南の試練はどうだった?」
「これは掲示板にも書いてある内容だけど、まず、試練の内容は敵の全滅。敵はウルフの大群とその中にレアのゲイルウルフが少し、そしてボスらしきウルフが1体。フィールドは南の森を広くした感じみたい。ちなみにボスウルフは識別できないらしく、名前、レベルも不明」
うん、ボスウルフが1体だけというのはありがたいことだ。
そして、大群と表すということは、数えきれないレベルでいるのか。
流石にリンカさんもボスと大群相手は無理なのだろうか?
「それで、ここからが私達の挑戦してみた感想ね。まず、凛ちゃん以外のメンバーだけど、相手の数が多すぎて無理だったよ。常時5体以上からは狙われてたかな。ウルフと言えど、流石にあの数は避けきれない。それで、残った凛ちゃんだけど、ボスウルフの相手をしていたみたいだよ。勿論周りのウルフとセットでね。それで、回避しながらどうにか攻撃していってたみたいなんだけど、数時間掛けて与えられたダメージが1割に届いていなかったんだって。そこでログイン時間を考えて諦めたらしいの」
いや、まずボスウルフとウルフ数体を相手にしながら避けつつ攻撃できるリンカさんが凄い気がする。
もし、もっと良い武器があれば勝てていたのだろうね。
まあ、それは置いておいて、常時5体のウルフを相手にするのか。
それは流石に無理だ。
イナバならできるかもしれないが、回避で精一杯になるだろう。
だからレギオンなのか。
数には数で。
あと、気になるのはやはりボスウルフの防御力だろうか。
リンカさんが数時間かけて1割もダメージを与えられないとなると、ゴーレムに近い防御力が予想される。
だが、ゴーレムと違いスピードもあるのだ。
これは脅威と言っていい。
そうなると、誰かがボスウルフを引きつけている間にウルフを全滅させて、そのあと全員でボスウルフに攻撃だろうか?
それとも、一気にボスウルフ?
いや、それは無いか。
「楓姉さん、情報ありがとう」
「いいよいいよ! それじゃあ、一緒に試練頑張ろうね!」
「うん」
さて、外部掲示板でも募集をしていたと言っていたので、一応ログイン前に外部掲示板を見ておこうかな。
新たに情報が追加されているかもしれないし、レギオンの募集の詳細も見ておきたい。
やはり先日情報を書き込んでいた人だったのか。
そして、募集開始日は……今日だったのか。
姉さん情報が早すぎない?
まあ、おかげで早く知れてありがたいのだけどね。
やはり北の試練のように、1人が条件を満たしていれば他のメンバーも挑戦できるようだ。
そして、北はどうだったかわからないが南はレギオンメンバーもそれで挑戦できるらしい。
えっと、挑戦日は……明後日か。
うん、十分準備も間に合うね。
時間は現実時間で午後2時に集まって、説明と役割決め。
そして、説明が終わり次第、挑戦開始か。
アイテムの分配はボス以外は均等分配。
端数がでたらじゃんけん。
そして、ボスもじゃんけんと。
うん、問題なさそうだ。
そうなると、気を付けるのは前日に移動を済ませておく事と、アイテムをしっかり準備する事くらいかな。
移動は良いとして、アイテムは今日か明日にもう少し買っておこう。
あとは……うん、大丈夫かな。
じゃあ、情報収集はこれで終了にしておこう。
あとは当日頑張るだけだ!
ログインしました。
さて、今日はログレスにとって、1人では初めてのゴーレム戦です。
とても、楽しみです。
「ログレス、今日は初めてのゴーレム戦だけど、慌てず頑張ってね!」
ログレスの相手は通常ゴーレムです。
勿論、狙って出現させています。
さあ、ログレス。
どんな戦い方を見せてくれる?
殴り合いでした。
いや、ほぼ一方的に殴っています。
ログレスが。
相手の攻撃を回避しつつ機会をうかがい、訪れた機会を逃さず、渾身の一撃を当てる。
実にログレスらしい。
そして、だんだんと回避よりも攻撃の割合が増えて行っている。
実に成長が早い。
そして、攻撃の度に相手のゴーレムのHPが減っている。
これでゴーレムは自分の攻撃以外でもダメージを受けるということが判明した。
つまり、ゴーレムは高防御力とHP回復を併せ持っていたからダメージを受けないように見えていただけのようだ。
おお、HPが半分を切っても強化するのか。
もしかして、イナバの時もこのタイミングで強化していたのだろうか?
いや、イナバの場合はそこまでダメージを与えるのは早くなかったはず。
ならば、このタイミングでの強化は今が初なのかな?
あとで掲示板に書き込んでおこう。
さて、強化されたゴーレム相手にログレスはどう出る?
ログレスも強化しました。
まあ、両方強化したならば、状況は変わらないだろう。
残念だったね、ゴーレムよ!
あ、ログレスがオーバードライブを使用した。
やはり、試したかったのだろう。
僕も見てみたかった。
うん、圧倒的になったよ。
相手が攻撃をできていない。
ゴーレムが体勢を崩したところに、さらに攻撃を加えて体勢を整えさせない。
これはもう決まりだろう。
結果は、余裕でログレスが勝ちました。
掛かった時間は、驚きの30分だ。
まさかここま圧勝するとは思わなかったよ。
でも、嬉しいな。
これならば、強化個体とも十分に戦えそうだ。
まあ、もう少し通常個体と戦って、経験を積んでもらうけどね。
少なくとも、同レベルになるまでは通常個体で訓練してもらうつもりだ。
まあ、今は圧勝したログレスを称えよう。
「ログレス、お疲れ様。見事な戦いぶりだったよ!」