―――67―――
「あ……す……」
ん?
「朝……よ~」
深淵の淵より我を呼ぶものは誰ぞ……?
「朝ですよ~」
……冗談です。
どうやら待っている間に寝てしまったようだ。
「おはようございます。寝てしまっていて申し訳ありません」
「いえいえ、素材集めで疲れていたのですから構いませんよ。テーブルの上に置いてあった薬草は使わせてもらいました。現在は第3試練です。第3試練の素材はもう集まっているので、あとは自由に動いてもらって構いませんよ」
どうやら第2試練も突破済みのようだ。
もしかしてかなり寝てしまっていただろうか?
そう思い、メニューから時計を見てみるが、20分程しか経過していない。
……第2試練は事前に用意していたのだろうか?
まあ、無事突破できたなら何よりだ。
「分かりました。でしたら、西の森へ行ってきますね。何かありましたらフレンドチャットで連絡をください」
「分かりました」
「それでは、頑張ってください」
「はい、頑張ります! 楽しみにしていてくださいね!」
さて、西へ向かおう。
第3試練用のアイテムの作成にどれだけ時間がかかるかは分からないが、どうせ彼の作業を見ていても何もできることもないのだ。
ならば使わないにしろ、素材を集めに行った方が良いだろう。
それに、彼も見られていては集中できないかもしれないからね。
「イナバ、ルビー、西へ行こうか」
2人にそう言い、西へと向けて移動を始める。
目的は勿論メタルパペットだ。
現在ドロップ運が良かったのか魔石が2個ある。
運が良ければあと3個で魔物カード化できるかもしれないのだ!
これは頑張らないとね!
……そういえば、このフィールドで得たアイテムは持って出ることができるのだろうか?
いや、大丈夫のはずだ。
西の試練で得たアイテムは持ち帰れている。
ならばここも持ち帰れる可能性は高いだろう。
まあ、持ち帰れなかったらその時はその時だ。
諦めよう。
メタルパペットはどこに!
さあ、怖がらずに出てくるんだ!
え、ルビーそんなこともできたの?
もしかして、イナバもできたりするのだろうか?
今度検証しておこうか。
大事な事だからね。
これは嬉しい。
まさかのメタルパペットの魔石が合計7個です。
鑑定が無いので確定ではないけど、この石は間違いなく魔石だろう。
そうであってほしい!
それにしても、まさかこんな方法があるとは思わなかった。
いずれプレイヤーにもできるだろうか?
期待しておこう。
さあ、次のメタルパペットよ、待っていてくれ!
もう、嬉しい!
ドロップが良かったのもあり、メタルパペットの魔石が合計18個です。
これは確実に足りると見ていいだろう。
これで足りなかったら?
また集めます。
さて、メタルパペットの魔石はこれで十分だろうから、次はどこに行こうかな?
東に行ってみようか?
いや、確実に無理だろう。
まて、入らなければ何とかなるのだろうか?
よく考えてみたら、中以外にも魔物はいるのだ。
中以外の魔物の魔物カードを作成して、それから中に挑めば何とかなるだろうか?
悩ましい。
北のレア魔物も気になるのだよね。
牛、羊、蝶、蜘蛛。
あ、蝶は南の森にミミクリーバタフライがいるのか。
でも、出現率から言ってレアって気がしないのだけどな。
どうしようか?
考えた結果、東に行こうと思います。
多分あそこが一番辛いと思うので、レア種が出やすいこの試練中に少しでも魔石を集めておきたい。
最初から向かえばよかったかな?
いや、そこまで考え付いていなかったのだ。
仕方が無い。
それに、メタルパペットも十分魅力的だろう。
ゴーレムの稼働時間制限の事を考えると、パペット系も用意しておきたかったからね。
問題はパペットにも稼働時間制限があった場合だが、その場合はラビットやウルフでいいだろう。
できれば人型の似ているタイプで揃えたかっただけなので、無理にパペットに拘るつもりはない。
そうと決まればさっそく東へ向かおう。
おや?
フレンドチャットだ。
『どうされました?』
『作品が完成しました。念の為家まで戻ってきて頂けますか?』
ああ、そうか。
これで試練が終わる可能性があるから、一緒にいた方が安全なのか。
確かにその通りだと思う。
『分かりました。すぐに戻ります』
『お待ちしていますね』
先程家を通り過ぎたばかりだから早く戻れるだろう。
東の魔物はまた今度見ればいい。
今回は試練がメインなのだ。
魔石集めはついでなのだから。
「戻りました。生産お疲れ様です」
「お帰りなさい。それでは、作品を指定の場所においてきますね」
指定の場所なんてあったのか。
あ、そういえば西の第2試練でも薬草を神殿に奉納したのだったか。
「分かりました」
確か掲示板ではここで失敗していたのだったかな?
ならば、相当な難易度なのだろう。
西の試練に当てはめて考えると、ゴーレム戦か。
うん、難しいな。
そうなると、第4試練は気まぐれで行われたようだったから、これでクリアの可能性が高いのか。
少し緊張するね!
<第3の試練のクリアを確認した。おめでとう! これにより、レンとユウの全試練のクリアを確認した。おめでとう! 君達は試練を突破したのだ!>
どうやら無事クリアできたようだ。
流石、だね。
これは頼んでいる魔法銃が出来上がるのが楽しみだ!
<試練突破者よ、これより君達を封印の神殿へと転送する。そこで何を行うかはあちらで聞いてほしい。それでは、また会える日を楽しみにしておくよ>
それにしても僕までクリア扱いになるのか。
いいのだろうか?
まあ、いいのだろうね。
そこまで考えたところで、景色が闇に包まれた。
すぐに闇は晴れ、目の前には女神像が視界いっぱいに移っている。
隣にはイナバとルビー、そして彼がいる。
辺りを見渡すと石で造られた柱や壁が見える。
あれ?
同じ神殿の使い回しだろうか?
まあ、別にいいのだけどね。
「試練突破おめでとうございます」
「いえいえ、ユウさんが素材を集めてくれたおかげですよ」
「そんなことありませんよ。素材は誰でも集められますが、試練を突破できるほどの作品を作り上げるのは難しいですからね」
そう、素材は集めできるプレイヤーは数多といるだろう。
だが、試練を突破できるほどの作品を作り上げられるプレイヤーは一握りだろう。
「そ、そうですか? えへへ~」
おお、照れてるのかな?
若干顔が赤いようだ。
「よくぞ参りました。試練を突破せし者よ」
「ひゃ!」
「お久しぶりですね」
「久しぶりね。あ、お久しぶりですね。そちらの方は初めまして。ここは封印の神殿の1つ。そしてここに封印されているのは、技術です」
知ってる。
そして、素が出てしまったのだろうか?
「はい、初めまして」
「さあ、冒険者よ。私の後ろにある黒色の宝玉を壊せば無事に技術は解放されるでしょう。ですがその前に試練突破の報酬を渡したいと思います」
こちらでも報酬があるようだ。
「ほ、報酬ですか?」
嬉しそうだね。
まあ、試練突破の報酬は楽しみに思うのは無理は無いだろう。
ただ、僕は内容を知っているからね。
「さて、あなたは報酬に何を望みますか?」
予想通りでした。
「ユウさん、どうしましょうか?」
「この試練は貴方が突破した試練だ。なので、貴方の欲しい物を望んでください」
「いいのですか?」
良いと思います。
「はい。それに私は西の試練で貰っていますからね」
「そうですか……。では、お言葉に甘えさせていただきます。少し考えさせてください」
さあ、彼は何を望むのだろうか?
やはり、生産系の何かだろうか?
「ちなみに質問は受け付けられません」
やはりそこも同じなのか。
さて、彼が考えている間暇だから、少し内部を調べようかな。
20141210:修正
誤字を修正しました。