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う~ん……レア種が出やすいのだろうか?
森に来てから1時間程人形狩りをしているが、メタルパペットが5体以上は出てきている。
嬉しいのは嬉しいのだが、気になってしまうのだ。
西の森では全く見なかったメタルパペットが、この試練の森では圧倒的に出現する。
これはこの試練ではレア種が出やすいのか、西の森ではそもそもメタルパペットが出ないのか、一体どちらなのだろう?
後者ならば問題は無いのだが、前者の場合は問題だ。
何せ、この試練は1度しかクリアできないのだ。
勿論失敗する気は無いが、この美味しいフィールドに来れないと思うと微妙な気持ちだな。
今まで一度もレア種と出会っていないことを考えると、1時間でレア種が5体以上はかなり嬉しい。
そう、1時間で……。
「イナバ、ルビー、急いで帰ろう!」
2人にそう言い、急いで家へと向かう。
「お帰りなさい。ちょうど鍵をすべて集め終わったところです。木材は取れましたか?」
「はい、結構取れましたよ。さらに金属まで取れました」
そう言いつつ、部屋の隅へ行き、素材を取り出していく。
この辺なら邪魔にはならないだろう。
それにしても、危なかった。
危うくいつもの調子で狩り続けるところだった。
このゲームは生産がスキルを使用して一瞬で完了する訳では無く、多くを手作業で行わなければならないのらしいのだ。
ならばスキルは何をするかというと、その作業の補助をする。
熱した金属の温度を下げづらくしたりとかね。
まあ、図書館で入門書を流し読みした程度だから、詳しくは知らないけどね。
「おお、結構取れましたね。これなら余裕で第1の試練はクリアできそうです」
「それは良かったです。次はどこで何を採取してくればいいですか?」
「南の森で回復草を採取してきてください。20個もあれば足りると思います」
南の森で回復草か。
やはり町をこの家に置き換えた見ていいのだろうか?
ただ、そうなると往復だけで1時間はかかるのかな。
これは急がないといけないな。
「分かりました、行ってきます。生産頑張ってください」
「はい、頑張ります」
「イナバ、ルビーお待たせ。次へ行こうか」
早速家を出て、駆け回っていた2人を呼び、南を森を目指す。
布陣はラビットとウルフでいいだろうか?
いや、ルビーはホークで再召喚しよう。
森にはホークが出現するのだ。
ならば空の対策は必須だろう。
そう思い、ルビーを送還し、ホークで召喚する。
さあ、出発だ。
草原を駆けて10分、目の前に森が見える。
予想外に近かった。
おかしいな、結構遠くに見えてたと思ったのだけど……。
まあ、近い分には嬉しいので問題は無い。
そんなことよりも、道中でラッキーラビットが出現したのだ。
そう、10分を一直線で走った道中に、チュートリアルでレア認定されたラッキーラビットがだ。
これはこのフィールドはレア種が出やすいと見ていいのだろうか?
いや、まだ早いかな。
たまたま1体だけ出てきたかもしれないのだ。
「イナバ、回復草を探してほしいのだけど、いけそう?」
そう言い、イナバを見る。
イナバはこちらを少し向いた後、森へと走って行った。
どうやら大丈夫のようだ。
流石イナバ!
まさか1か所で集まるとは思わなかったよ。
イナバに案内された場所には大量の回復草が生えていた。
そう、大量のだ。
一応半分ほど残して採取したのだが、それでも30個は採取できた。
どうしよう、もう少し集めるべきだろうか?
いや、彼が20個で十分と言ったのだ。
ならば20個を早く届けることを優先しよう。
そう思い、森の外へと向かおうとすると、突然イナバが警戒を始めた。
空を見上げると、ルビーが見えない。
ホークが出現したのだろうか?
いや、イナバは地上を向いている。
ならば同時に出現したのだろう。
空はルビーに任せておけばいいので、僕達は地上の魔物を倒してしまおう。
目の前に現れた狼を魔法銃で迎え撃つ。
そして、体勢を崩したところへイナバが体当たりを当てる。
さらに後ろから2体の狼が現れる。
右の狼へ向けて魔法銃を撃ち、左の狼が飛び掛かってくるのを右に少し動いて避ける。
そして、さらに出現した狼2体の内、1体を魔法銃で撃ち、すぐに後ろを向く。
体当たり直前の狼が視界に入り、それを右に避ける。
そして、着地地点を予想して後頭部へと魔法銃を撃つ。
予想は当たり、無事真っ直ぐに飛んだ弾が狼の後頭部に当たる。
さらに追撃しようと思ったが、先程攻撃した狼が体勢を立て直し、こちらへと飛び掛かろうとしているのを見て急いで避ける。
そして、狼が着地するであろう位置を予測し、後ろに向けて魔法銃を撃つ。
まあ、これは当たらなくてもいい。
そして、先程後頭部へ攻撃を当てた狼へ接近し、足へ向けて魔法銃を撃つ。
体勢を整えた狼はそれを余裕で回避するが、そこをルビーが空中から強襲する。
近づく際にイナバの方も見えたが、狼が1体地面に倒れ、さらに2体を相手取っていた。
あれならばイナバなら余裕だろう。
そう思い後ろを振り向くと、こちらに近づいてきている狼が見えた。
狼が止まり、飛び掛かるのに合わせて、右へ避ける。
そして、着地地点を予測して魔法銃を撃つ。
弾は後頭部へ当たり、狼は体勢を崩した。
そこへ魔法銃で追撃し、狼のHPバーは空になる。
こちらの相手はすべて倒せたため、イナバの方を確認すると、最後の1体へイナバが体当たりしているところだった。
多分あと1体はルビーが倒したのだろう。
体当たりに当たった狼は少し吹き飛ばされ、何とか着地はできたが体勢を崩している。
そこへ魔法銃を撃ち、さらにイナバの追撃の体当たりも当たり、狼は地面へと倒れた。
やはり5体相手は楽じゃないな。
もし、途中でイナバから僕へと目標を変えられて、3体以上になれば回避しながら攻撃をすることは難しいだろう。
これも何とかしないといけないな。
まあ、それは追々でいい。
今は彼の試練だ。
早く回復草を持って帰ろう。
やっと家に着いた。
まさか森を出るまでに4回も戦闘になるとは思わなかったよ。
しかも、その内1回はゲイルウルフが混じっていたのだ。
2体も。
もうこれはレア種が出やすいと見ていいと思うのだ。
それだけに、勿体ないな。
この試練が1回しかクリアできないというのは。
まあ、クリア後に西の神殿のようなものが現れる可能性もあるのだから、それに期待しよう。
玄関を開け、家に入るが、誰もいない。
多分どこかの部屋で作業をしているのだろう。
さて、どうしようか。
声を掛けて邪魔をするのも悪いからね。
うん、ここは待っていよう。
どうせ彼から次に必要な素材を聞かなければならないのだ。
ならば、この時間は休憩に当てるべきだろう。
頑張っている彼には悪いが、休憩も必要だ。
それに、そろそろイナバ達にも休憩を取ってほしいからね。
「イナバ、ルビー、少し休憩にしよう」
おっと、その前に薬草をテーブルの上に置いておこう。