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―――63―――

 魔物だろうか?

 ただ、何かがおかしい。

 先程イナバが立ち止ったので、魔物かと思い警戒しているのだが、魔物が来ないのだ。

 蝶ならばもう飛んできているはずだ。

 だが、来ない。

 そうなると、もう1体の方だろうか?

 多分そうだろう。

 名前通りだとすれば、戦法は奇襲か待ち。

 そして、イナバの視線の方向が変わっていない。

 ならば、待ちなのだろう。

 

 「……来ませんね」

 

 「少し先で待ち伏せの可能性が高いですね。ただ、警戒は怠らないでくださいね」

 

 「待ち伏せ!?そんなことをする魔物もいるのですか?」

 

 「西でウッドパペットが木の上から奇襲してきましたから、可能性は十分にあると思います」

 

 奇襲と言えばホークもだけど、あれはまた別の奇襲だと思う。

 

 「そんなことまで……。よく無事でしたね」

 

 「そこはウルフで召喚していたルビーが感知してくれていたので、逆に木の上から落としました」

 

 「優秀ですね。ルビーちゃん」

 

 そう、ルビーは優秀なのだ。

 勿論イナバも優秀だけどね。

 今のところ、感知と回避はイナバ、攻撃はルビーが優っていると思う。

 まだ差は少しだけど、個性が出てきたのだろうか?

 

 「さて、待っているわけにも行きませんから進んでもいいでしょうか?」

 

 「はい、進みましょう」

 

 

 

 やはり待ち伏せの方だったか。

 だが、待ち伏せされていたのは僕達では無いようだ。

 視線の先では、木と木の間に張り巡らされた糸に引っかかった蝶が、蜘蛛から噛みつかれている。

 そしてこのゲーム、魔物が魔物を襲うこともあるのか。

 覚えておこう。

 それにしても、あの蜘蛛大きくないだろうか?

 蝶の大きさから考えて、蜘蛛は2mは超えていそうなのだけど?

 まあ、魔物としては特別大きいということもないのだろうけどね。

 

 「イナバ、ルビー、蜘蛛が蝶に注意を向けているうちに一気に近づいて攻撃してしまおうか。糸には出来るだけ触れないように気を付けてね」

 

 蝶を食べ終えて隠れられてしまうと面倒だ。

 幸い、蜘蛛は巣を挟んで反対側にいる。

 

 魔法銃をチャージしつつ、蜘蛛へと走る。

 そして、少し近づいたところで、識別を使用しておく。

 

 <魔物>スパイダー Lv2

 

 レベル2ならば問題ないだろう。

 問題は糸の方だけど、巣を迂回して裏側に回り、側面から攻撃すれば何とかなるだろうか?

 高さもイナバとルビーの攻撃が届かないほどではない。

 まあ、他に方法もないのだからやってみるしかないだろう。

 

 

 

 イナバ、ルビー、速いって!

 追い付けないよ。

 まあ、いいのだけどね。

 よく考えてみたら、僕は巣を迂回する必要は無い。

 糸に触るわけではないのだから、裏から攻撃すればいいのだ。

 

 そして、イナバとルビーが攻撃するのに合わせて、魔法銃を撃つ。

 勿論、蜘蛛に避けられてもイナバ達に当たらないような位置を狙っている。

 

 蜘蛛は蝶に夢中で攻撃されるまで気が付かなかったようで、体当たり、引っ掻き、魔法銃の弾を受け、そのまま動かなくなった。

 どうやら防御力はあまり高く無いようだ。

 それとも、どの攻撃か弱点に当たっていたのだろうか?

 イナバの体当たりが当たった、足?

 ルビーの引っ掻きが当たった、頭?

 魔法銃の弾が当たった、腹部?

 一番可能性がありそうなのは、頭だ。

 だが、腹部は普段は攻撃を受けない位置なので、こちらも捨てがたい。

 う~ん……両方試してみればいいか。

 

 おっと、そういえば蝶はどうなったのだろうか?

 そう思い、蝶を見てみると、ルビーが引っ掻いてました。

 そして、その攻撃でHPバーが空になったようだ。

 やはりあちらも倒す必要があるのか。

 

 「倒せたようので、行きましょうか」

 

 近くの木に隠れているはずの彼に安全を伝えておく。

 

 「もう大丈夫です?」

 

 「はい、大丈夫ですよ」

 

 もうしゃべっても大丈夫か、という意味だろうか?

 それとも、近づいても大丈夫か、という意味だろうか?

 まあ、どちらも満たしているので問題無い。

 

 木の陰から出てきた彼と共に、蜘蛛の巣へと向かう。

 蜘蛛からはやはり糸だろうか?

 そうなると、糸が3種類になるな。

 いや、よく考えてみたら金属と木材も2種類で、さらに名前からあと1種類はあるはずだから、3種類で同じ数になるのか。

 ……皮が1種類しかないな。

 東エリアにはまだ行っていないので、そこにあるとは思うのだけど、どうだろうか?

 まあ、行ってみれば分かることだ。

 

 あれ?

 よく考えてみたら、町でも素材は買えるのか。

 ならドロップするアイテムの種類が偏っていても問題は無い?

 うん、無いな。

 おっと、そういえば……。

 

 「あ、待ってください。剥ぎ取るのは蝶からにしてください」

 

 そう、特殊ドロップの可能性だ。

 危なかった。

 もう少しで、蜘蛛に剥ぎ取りナイフが突き立つところだった。

 今までの傾向から、本体は最後に残したほうがいいと思うからね。

 

 「どうしてですか?」

 

 「西の森で、ウッドパペットを倒した際に持っていた武器から剥ぎ取ると特殊ドロップを得られるのですよ。その際に、先に本体を剥ぎ取ってしまうと、武器は消えてしまうので、武器から剥ぎ取る必要がありました。その事から、今回も蝶や巣から剥ぎ取った方が良いと思いまして」

 

 「そうだったのですか。分かりました。蝶、巣、蜘蛛の順番でいいですか?」

 

 「はい、それでお願いします」

 

 色々なパターンを試すにしても、一番最初は可能性が高い方法を試したいからね。

 最初が巣では無く蝶な理由は、蝶が巣につかまっているからだ。

 そして、捕まっている蝶が消えれば残りは巣の作成者と巣。

 そうなると、自然と蝶、巣、蜘蛛の順番になる。

 

 剥ぎ取りナイフを突き刺された蝶は、光の粒子となり、地面へと何かが落ちた。

 そして、巣と蜘蛛はまだ残っている。

 どうやら順番は大丈夫のようだ。

 

 そして、彼の手に取られた何かを見てみると、蝶がドロップした糸に見える。

 これは通常ドロップと見ていいのだろうか?

 う~ん、まだわからないな。

 

 「巣は切りつければ大丈夫でしょうか?」

 

 「多分それで大丈夫だと思いますよ。僕も初めてなので、失敗したら次は他の方法を試せばいいだけですよ」

 

 「分かりました。では、いきます」

 

 彼の手に握られた剥ぎ取りナイフが巣を切り裂く。

 すると、巣が消えて蜘蛛と何かが地面へと落ちた。

 これは正解と見ていいのだろうか?

 まあ、他の順番を試してみないと分からないか。

 

 「これは糸ですね。蝶とはまた違う糸の様ですが」

 

 どうやら蝶の糸とは違うもののようだ。

 見た目は同じ毛玉なのだが……。

 まあ、それ以前に蝶の糸をあまり良く覚えていないのだけどね。

 並べてみたら違いが分かるのだろうか?

 

 「最後に蜘蛛いきますね」

 

 空気に消えていく蜘蛛。

 残るは空気。

 残念です。

 

 「さあ、先に進みましょうか」

 

 「はい」

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