―――62―――
ようやく森の入り口が見えてきた。
途中からは牛や羊は2体以上、多いときは4体で出現して大変だったよ。
まあ、その分ドロップアイテムが稼げたともいえるけどね。
それにしても、まさか羊の毛に魔法銃が効かないとは思わなかった。
鎧騎士のように吸収する感じでは無く、弾くような感じだったので、魔力系の攻撃に耐性があると見るべきだろうか?
まあ、そんな理由でイナバとルビーに任せきりです。
勿論注意を引きつける事や、イナバとルビーが1体1で戦えるように補助はしているけどね。
「森に到着ですね!」
「到着しましたね。そういえば、虫は大丈夫ですか? 森では虫の魔物が出る可能性がありますが」
「一部ダメなのもいますが、大抵は大丈夫だと思います」
それは良かった。
この森には、名前からはどう見ても虫としか思えない魔物しかいないのだよね。
まあ、ここで虫が苦手と言われても進んでもらうしかないのだけど。
「それでは、入る前に少し休憩をしていきましょうか」
試練の前にも休憩は取るつもりだが、ここでも取っておくべきだろう。
僕は大丈夫だが、彼は疲れているかもしれない。
それに、イナバとルビーも余裕そうに見えるが、ここまでにかなり戦闘をしたからね。
「分かりました。そういえば、町を出てから休憩をしていませんでしたね。戦ってもらってばかりだったのに、気付けなくて申し訳ないです」
「いえいえ、これ位は日常的に行っていますので問題ないですよ。それよりも、初めての町の外で疲れていませんか?」
「流石に戦っていないので、大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます」
どうやら彼は大丈夫のようだ。
よく考えてみたら、ステータス的にはスタミナに当たる部分は同等になるのだろうか?
いや、加護の加算が無い分負けているかもしれないな。
まあ、慣れない行動なのだし、精神的に疲れているかもしれないからね。
彼の方がスタミナが上でも、休憩は取った方が良いだろう。
あ、森に入るのだからルビーをホークからウルフにしておこう。
「さあ、行きましょうか! 待っていてください、素材達!」
目的は素材。
いや、目的は試練だ。
森で出る2体からなら鱗粉と……糸かな?
まあ、倒してみたらわかることか。
おや?
「止まって警戒してください。イナバが何かを感知しました」
目の前で止まったイナバはある1点を見詰めている。
これは、相手が近づいてきているのかな?
そうなると、あの魔物だろうか?
「わ、分かりました」
うんうん、あまり慌てなくなったようで何よりだ。
おお、ルビーも感知したようで、ある1点を見詰めている。
さて、僕もチャージしておこう。
木々の間を抜けて飛び込んできた蝶に向かって魔法銃を撃つ。
ダメージは……チャージしただけあって3割を超えそうな程だ。
そして、少し体勢を崩したところをイナバが体当たりして地面へと落とした。
ルビーは続く2体目を引っ掻いた。
2体かな?
うん、2体で終わりのようだから、攻撃に参加しよう。
まずは地面に落ちた方からだ。
地面に落ちた個体の方を見てみると、必死に飛び立とうとしていた。
だが、そこへイナバが再度体当たりを当てる。
うん、こちらは任せておこう。
そう思い、もう1体の方へと視線を向ける。
そちらでは、ルビーが引っ掻き攻撃をしているところだった。
蝶は速度があまり速くないようで、引っ掻きを避けられずにいる。
一旦は大丈夫そうなので、まずは識別をしておく。
<魔物>バタフライ Lv1
やはり蝶の方だったか。
まあ、もう1体の方だとしたら、名前に文句をつけたくなるけどね。
識別したところで、蝶へと向かって魔法銃を撃つ。
多少動いているが、ルビーが攻撃した後の体勢を崩したところを狙えば何とか当たるだろう。
う~ん……少し命中率が悪いかな。
いくら小さく、良く動き、空を飛ぶからと言っても、もう少しそう、7割程度は当てたかったな……。
蝶は体長約50㎝で、ミミクリーバタフライを小さくしたような外見だ。
50㎝と言えば結構大きく感じるが、それが空中で動き回るのが問題なのだ。
地上ならば着地点や攻撃前、攻撃後を狙えば当たりやすい。
だが、空中だとそうもいかないのだ。
さらに、自分が攻撃目標ではない為、動きが読み難い。
やはり動きの速い相手への命中率の向上は課題だな。
特に、自分以外を狙っている相手のね。
目の前で地面へと倒れる蝶を見ながら、そんなことを考えていたところ、目の前の蝶へと剥ぎ取りナイフが突き刺される。
そして、羊毛に比べると小さな糸玉が残った。
ミミクリーバタフライは鱗粉を落としたが、こちらの蝶は糸なのか。
似ているからと言っても、ドロップするアイテムは結構違うのだろうか?
いや、ゴーレムも木材と金属で結構違っていたともいえるのか。
「糸ですね」
「はい、糸ですね」
はい、糸です。
何をドロップすることを期待していたのだろうか?
「私としては、そろそろ金属的なものが欲しいですね」
「金属を纏った虫は勘弁願いたいですけどね」
普通の虫から金属が取れたら怖いよ。
それに、金属は西で取れるからここでは取れないのではないだろうか?
あと1種類の魔物もどうみても虫だからね。
「まあ、金属は西で入手できるのでこちらでは難しいかもしれませんね」
「うう……確かにそうですね」
最初から1系統の素材だけを多く出し過ぎるのは良くないからね。
おや?
イナバがどこかへ向かって走っていく。
これは見たことがあるな。
確か、南の森で回復草を見つけた時だ。
「どうしたの? イナバちゃん」
「どうやら薬草を見つけたようです。追いかけましょう」
「はい? 分かりました」
こちらでは何があるのだろうか?
う~ん……HP回復ポーション以外の素材だと、MP回復ポーションの素材しか思いつかないな。
これはもうちょっと調べておくべきだろうか?
まあ、調薬を持っている彼が知っているかな。
予想通り、草が体調に生えている場所でイナバが止まった。
たが、道中の草と同じものに見える。
もしかして、あの中に何かあるのだろうか?
「おお! こんなに沢山! 採取していいですか!?」
「ど、どうぞ」
えらくハイテンションだな。
もしかして、この草は同じに見えても違う草なのだろうか?
鑑定が無いから分からない。
まあ、分かるのなら任せておこう。
そういえば、初めての場所なのに鑑定を装備するのを忘れていたな。
今回は彼がいたから良かったが、次回からは気を付けないといけないな。
「十分採取できました。満足です! さあ、行きましょう!」
どうやら満足できるほど採取できたようです。
あの草の山が8割程無くなっています。
「はい、行きましょうか」
満足げな彼と共に、さらに奥へと向かう。
20141210:修正
誤字を修正しました。