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―――60―――

 やはり予想通り、名前そのままだったのか。

 前方に見えるのは、どう見ても牛だ。

 まあ、色は白黒では無く、茶色なのだが。

 そして、後ろから近づいたためか、まだこちらに気づいていないようで、ゆっくりと草を食べている。

 まずは識別しておこう。

 

 <魔物>バッファロー Lv2

 

 レベル2か。

 やはり町周辺の魔物はレベル1~3に収まっているのだろうか?

 ボスゴーレムはボスだから例外としてもいいだろう。

 幸い近くには1体しかいないので、ここはルビーに奇襲をお願いして、耐久力や移動速度を確認しよう。

 

「ルビー、空から奇襲をお願い。攻撃後は一度戻ってきて。そして、牛が近づいてきた後、止まるか速度が遅くなったところで2人とも攻撃をお願い」

 

 2人に指示を出し、牛に集中する。

 もしかして、奇襲の為に伏せたほうがいいのだろうか?

 いや、それではルビーに任せきりになってしまいそうだ。

 やはりこちらに連れてきてもらって戦闘かな。

 

 ルビーが空から急降下し、牛の頭に攻撃を加えて、そのままこちらへ向かって飛んでくる。

 牛のHPバーはまだ見えないので、ダメージは確認できないが、ホークのあの攻撃を受けても耐えるのは凄いな。

 牛はルビーに気づいたようで、ルビーを追ってきた。

 よしよし、そのまま近づいて来てね。

 

 少し牛が近づいてきたところで、ようやくHPバーが確認できた。

 ギリギリ5割を切っているくらいだろうか?

 単純に考えて、ウルフの2倍は耐久力があるのか。

 移動速度はウルフよりも遅いのだが、たぶん逃げきれる速度ではないかな。

 そして、多分攻撃力も高いのだろうな……。

 

「ゆゆゆ、ユウさん、来ましたよ!」

 

「分かっていますよ。落ち着いてください。それと、危ないので少し離れていてください」

 

 まだ牛が突進してくるのを見ていることしかできない。

 この距離では魔法銃の弾は消えてしまうので、攻撃はできないのだ。

 こう考えてみると、魔法銃って案外射程が短いのだろうか?

 まあ、他の遠距離武器の最大射程を知らないので、判断はつかないのだけどね。

 

 それにしても、彼はなぜあそこまで慌てているのか?

 もしかして、狩りに出たことが無いとか……後で聞いておこう。

 

 よし、牛は彼では無く、こちらに向かってきているな。

 正確には、ルビーにだけどね。

 

 もう少し、もう少し……よし、このくらいだろうか?

 牛がかなり近づいてきたところで、魔法銃を撃つ。

 弾はまっすぐに飛び、牛の頭へと当たった。

 ダメージは……少し減っているのが確認できる程度だ。

 5%?

 いや、それよりも低く見える。

 やはり攻撃力不足だろうか?

 まあ、魔法銃の強化が完了すれば解決できるだろう。

 多分ね。

 

 近づいてくるまでに3発撃ち、回避に移る。

 ギリギリでいいだろうか?

 いや、初めは大きく回避しておこう。

 

 突進してくる牛は、ルビーからこちらにターゲットを変えているようだ。

 その迫力はかなりのものだが、残念ながらゴーレムの振り下ろしにはかなわない。

 

 余裕をもって、突進を避けてみるが、やはりというか軌道修正が少しだけ入っていた。

 余裕を取りすぎたようなので、今度はもう少し近づいてから避けた方が良いだろう。

 通り過ぎた牛の尻に魔法銃を撃ちながら、そんなことを考えていると牛が向きを変える為に減速し始めた。

 そこへ追いかけていたイナバが横腹へ突進を当て、さらにルビーが空から攻撃を行う。

 牛は耐えきれず、HPバーが空になり地面へと倒れた。

 

「や、やりましたね!」

 

 なぜ彼はこんなに興奮しているのだろうか?

 やはり……。

 

「さあ、剥ぎ取りに行きましょうか」

 

「はい!」

 

 倒れた牛へと向かいながら、気になることを聞いておく。

 

「ところで、もしかしてチュートリアル以外での戦闘は初めてですか?」

 

「よく分かりましたね。その通りです」

 

 やはり……。

 いや、まあ予想しておくべきことだったか。

 普通は、生産職が狩りに出ることは珍しいのだろう。

 ミドリさんは普通にゴーレム戦に来ていたので勘違いしていた。

 

 

 

「剥ぎ取りますか?」

 

「いいのですか!?」

 

 いや、雰囲気がどう見ても剥ぎ取りたいと語っていましたが……。

 それに、この先何体も倒すのだから問題は無いだろう。

 

「で、では、行きますね」

 

 マジックポーチから取り出して剥ぎ取りナイフを両手で握り……牛に刺した。

 牛は光の粒子となり、空気中に消え、後に残ったのは……。

 

「まあ、こんなこともありますよ」

 

「うう……」

 

 まあ、チュートリアル以外での剥ぎ取りで何も出なかったら残念なのは分かる。

 だが、涙目になるのはどうなのだろうか?

 

「まあ、条件ドロップかもしれませんよ? そうだとしたら出なくてもしょうがないですよ」

 

「そ、そうですよね!」

 

「さあ、先へ進みましょう」

 

 さて、あんなことを言ったが、多分通常ドロップだと思うのだよね。

 ドロップの可能性があるのは肉、皮、角あたりだろうか?

 流石に肉が条件ドロップとは思えないし、牛から肉が取れないとも考えづらい。

 まあ、納得してもらえたならいいか。

 

 

 

「うう……どうみても通常ドロップじゃないですか……」

 

 目の前に転がる牛の肉と皮。

 あれから3回ほど戦闘したが、全ての戦闘でアイテムがドロップしている。

 肉は3個、皮は今回が初で1個だ。

 

 まあ、しょうがないのだよ。

 ドロップなんて運なのだから。

 

 そんなことより、先程横を通ったパーティが牛3体と戦っていたのが気になる。

 やはり牛は1体だけで出てくる訳では無いようだ。

 イナバとルビーに1体ずつ受け持ってもらえば大丈夫だろうか?

 もし4体出てきたら彼にも1体受け持ってもらう?

 いや、それは無い。

 どう見ても戦闘できるように見えないのだ。

 それ以前に、武器を出していない。

 相手が1体だけなら問題ないと思っていたが、これは注意した方がいいだろうか?

 

「悲しんでいるところ申し訳ないのですが、先程よこのパーティが3体相手にしていましたので、そろそろ武器を出して頂いてもいいですか?」

 

「え?」

 

「3体までなら大丈夫ですが、4体以上になるとそちらに魔物が行ってしまうかもしれません。その場合に備えて武器を出していて頂きたいのですが?」

 

「武器なんて持っていませんよ?」

 

「え?」

 

「だって、私は武器、魔法スキルを1つ取得していないので、持っていても意味が無いですから」

 

 何てことだ……。

 流石に予想していなかったよ。

 いや、チュートリアル以降魔物を倒していないことを考えると、スキルポイントが足りないのか。

 それでも、1つくらいは取っておいてほしかったよ……。

 それに、多分スキルが無くても武器は使えると思うのだ。

 そうでなければ布のローブが装備できた理由が分からない。

 まあ、試していないので言わないが。

 

「そうでしたか。確かに、最初は生産を補助するスキルを優先しなければいけませんからね。ですがこの先、生産職でも魔物と戦う場面があるかもしれないので、1個は攻撃スキルの取得も考えてもいいかもしれませんね。勿論、生産系だけを取得していくのも一つの道だとは思いますが」

 

「確かにその通りですね……少し考え直してみようと思います。ありがとうございます」

 

 流石にこの先、町から出ずに進めるとは思えない。

 その時の為にも攻撃系スキルは取得しておいた方が良いだろう。

 ただ、あくまでこれは戦闘職からの意見だ。

 最終判断は生産職である彼にしてほしい。

 

 ……あれ?

 もしかして、親方に聞いた方が良いのではないだろうか?

 このゲームのNPCは優秀だから答えてくれそうな気がするな。

 いや、親方だからな……。

 

「親方に相談するのもいいかもしれませんね」

 

「もう聞きましたよ。そうしたら、自分の道は自分で決めろ、と言われました」

 

 流石親方!

 期待を裏切らない!

 

「そうでしたか。それならば、自分で考えるべきですね。では、進みましょうか」

 

「分かりました。う~ん……」

20140915:修正

矛盾していた箇所を修正しました。

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