―――54―――
神殿で休憩を取り、再度ゴーレムへと挑戦する。
先程は通常個体だったが、次はどの個体だろうか?
できれば鎧騎士がいいのだけど……。
強化個体でした。
これは2人にはまだ早いかな。
いや、イナバはできそうな気がする。
まあ、急ぐ事でもないのだし、もう少し通常個体で練習してもらおう。
なので、このゴーレムは僕が相手をしよう。
今回からは積極的に攻撃をしていこうと思う。
勿論、回避は優先するのだが、回避の為の回避ではなく、攻撃の為の回避に挑戦しようと思う。
その分相手の攻撃に当たる可能性も高くなるのだが、攻撃したほうが早く倒せると分かってしまっては、狙わざる得ないだろう。
それに、鎧騎士にはどうしても攻撃していかなくてはならないのだ。
ゴーレム形態が相手でも練習しておきたい。
さあ、死に戻りか、時間が尽きるまで連戦だ!
うんうん。
なかなかいい成果だ!
残りログイン可能時間は……1時間半か。
あと1戦行ってみようかな。
うん、そうしよう。
多分倒せるだろう。
何てことだ……。
確かに残り時間以内に倒せた。
だが、町に帰る時間が無いじゃないか……。
ここでログアウトする?
いや、ありえない。
掲示板で見た限り、町以外でログイン時間が無くなってしまうとマジックポーチ内のアイテムが無くなる等のペナルティがあるようだからね。
今日の成果が詰まったマジックポーチからアイテムが無くなるのは厳しい。
どうする?
考えろ……残り時間は10分を切ってしまっている……。
町に戻る方法……町に……。
そうか!
これだ!
思いついた方法を試すため、急いで神殿中央の玉へと触れる。
フィールドに転移されてから、すぐにイナバとルビーを送還する。
そして、ゴーレムへと近づき……殴る。
初めて直接触ったが、かなり硬いな。
いや、それよりも……痛いだろうか?
目の前に迫るゴーレムの腕を視界に収めながら、覚悟を決める。
目の前には見慣れた広場が広がっている。
成功だ!
そして、痛くなかった!
今度から帰れそうになかったらこの方法に頼ることにしようかな。
いや、あまり良くないか。
流石に町に帰還するために死に戻るのはどうかと思う。
今回は仕方なかったが、次回からは町に戻る時間を残すようにして挑戦しよう。
それにしても、今日は鎧騎士は出てこなかったな……。
まあ、急ぐ必要は無い。
いつか倒すことができれば、それでいい。
それまでは倒せるように訓練しておこう。
さて、残り時間も5分を切りそうだし急いでログアウトしないと。
鎧騎士に負けてから3日間ゴーレムを倒し続けたが、あれ以来1度も出現していない。
なので、今日も張り切ってゴーレムに挑戦!
と行きたいところだが、今日はまず溜まってきた素材を彼に渡しに行こうと思う。
この鉄でさらに腕を上げてもらって、良い魔法銃を作れるようになってほしいからね。
勿論、手土産の木材も持参している。
木材は別に渡す意味は無いのだけど、かなり余っているのだ。
多く溜まるので1度ギルドで売ってきたのだけど、また溜まってしまったのだからしょうがない。
それに、彼も喜んでくれるだろう。
……多分。
さてと、今訪ねても大丈夫だろうか?
場所は鍛冶屋だと思うのだけど……。
ああ、フレンド登録していたのだった。
聞いてみればいいか。
『おはようございます。今大丈夫ですか?』
『大丈夫ですよ。何か御用ですか?』
『前回渡した金属だけでは練習用が無いと思いまして、もう少し金属をお渡ししたいのですが、今から訪ねても大丈夫でしょうか?』
『はい、大丈夫です。わざわざありがとうございます』
『では今から向かいますね。鍛冶屋でいいでしょうか?』
『はい。ではお待ちしておりますね』
『着きましたので、表までお願いできますか?』
『今行きますね』
鍛冶屋に付き、彼に連絡に到着の連絡を入れた。
最初は店員さんに言えばいいかとも思ったが、チャットで簡単に呼べることに気づいたのでチャットで呼んでみたのだ。
それにしても、便利な機能だな。
これが無かったら歩いて探さないといけなかったのか……。
いや、実際に歩いて探したのか。
そんな微妙なことを考えていると、カウンターの奥から彼がやって来た。
「おはようございます。忙しいところすいません」
「いえいえ、私の為に素材を持ってきてくださったのですから、お礼を言うのはこちらですよ」
「そう言っていただけるとありがたいですね。では、こちらを」
そう言い、マジックポーチから本日渡すものを取りだして、渡していく。
「あ、これは先日とは別の金属ですね。魔法銃には向いていないのですが、貰ってもいいのですか?」
「構いませんよ。それで鍛冶のスキルを上げて良い魔法銃を作ってくださいね」
「分かりました。任せてください!」
さらに金属、木材と渡していく。
「木材もですか?」
「はい、手土産です」
「手土産……なんで手土産の木材の方が量が多いのですか?」
「入手数の差ですよ。金属は入手したものはすべて渡していますが、木材は半分ほどなので、手土産で問題ないですね」
「そうなのですか? 何か違う気がしますが、ありがとうございます」
そう、入手量から考えれば金属は100%渡していて、木材は50%になるから手土産になるのだ。
いや、そんなわけは無い。
単なる理由作りです。
「また木材か。ここは鍛冶屋なんだがな……」
木材を渡していると、彼の後ろから声が聞こえてきた。
「手土産ですよ。それに今日のメインは金属です」
「まあ、いいんだけどよ」
「そんなことより、彼はどうですか?」
「ああ、問題なく上達してるぞ。もうすぐ魔法銃にも取り掛かれるだろう。それにしても、ワザとか?」
ワザと?
何のことだろうか?
「木材の事ですか?」
「いや、分からないならいい。まあ、魔法銃の方は心配するな」
「大丈夫です。初めから心配していません」
この人が指導してくれるのだ。
それに、彼も自ら鍛冶屋で修業するほどなのだ。
心配なんてしていない。
「そうかい。良かったな、心配されてないぞ」
「え!? 何の話ですか?」
「気にするな。さあ、受け取り終わったら続きをするぞ!」
「え、もうちょっとお話とかを……」
「そうか、残念だったな。魔法銃は少し遅くなりそうだ……」
「そうですか……」
「わ、分かりましたよ! 行きますよ!」
「そうか! 遅くならなくて済みそうだぞ。良かったな!」
「それは嬉しいですね」
別にそこまで急がなくていいのだけど、つい乗ってしまった。
……そんな恨めしそうな顔をしないでもいいじゃないか。
でも、鎧騎士の事を考えると早く完成させてもらった方が良いのかもしれないな……。
まあ、その前に攻撃で倒せる可能性があるか確かめないといけないか。
あれ以来出てこないから、試せないのだよね……。
まあ、今日は出てくれることを祈っておこう。
さて、彼に頑張らせた手前、僕も頑張らないといけないな。
今日も張り切ってゴーレムを倒しに行こうか!
20140908:修正
会話文を字下げしていた為、字下げしない様に修正しました。