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―――51―――

 さて、今回のゴーレムは……通常個体か。

 前回の出確信が持てたのだけど、強化個体は少し色が黒っぽいのだよね。

 まあ、本当に少しなんだけどね。

 

 でも運が良かったとも言えるのかな?

 流石に強化個体の攻撃を避けながら人形の攻撃も避けるなんて芸当無理だからね。

 まあ、通常個体だったらできる、というわけでも無いのだけどね。

 

 さて、今回はエンチャント・デフェンスを掛けておこうかな。

 これで1度か2度くらいなら人形の攻撃を受けても大丈夫だろう。

 あとは、半分くらい残してチャージしておこう。

 

 

 

 それじゃあ、始めようか!

 

 開始の合図にチャージされた弾を放つ。

 弾が胴体へと当たり、ゴーレムは動き出す。

 

 さて、どれくらいで人形達は駆けつけてくるのだろうか?

 森からここまでの距離だから5分くらいだろうか?

 一応計っておこうかな。

 そう思い、ゴーレムがこちらに到達するまでにメニューを開いておく。

 うん、いくらメニューが半透明だとは言っても、大部分を覆っていては視界が悪い。

 人形が来たらすぐに消そう。

 

 

 

 ゴーレムと対戦を始めてから5分。

 まだ人形達は来ない。

 意外と移動速度は遅いのだろうか?

 

 

 

 キンッ

 

 ゴーレムの右腕に何かが弾かれる。

 ちょっと見えなかったが、状況から言って矢だろうか?

 周りを確認するが人形は見えない。

 念の為に時間を確認すると、開始から20分が経過していた。

 

 さて、どういうことだろう?

 何かの攻撃があったが、僕では無くゴーレムに当たった。

 そして、周りには何もいない。

 これは……匍匐前進かな?

 うん、そんな気がする。

 西の森でも、木の上から奇襲しようとしたくらいだし、そのくらいはしても不思議ではないかな。

 まあ、分かったところで対策は無いのだけど。

 

 メニューを消し、集中する。

 ゴーレムの攻撃を予測しつつ、辺りを確認していく。

 すると数か所、草むらが若干強く揺れている場所があった。

 そうか、そこにいるのか。

 では、撃ってみようか!

 

 揺れる草むらの内、揺れが少ない1か所を狙って魔法銃を撃つ。

 弾は草むらに吸い込まれていくが、当たったかどうかは分からない。

 ゴーレムの足音や、攻撃で発生する風の音が邪魔をして聞き取れなかったのだ。

 まあ、何度かしてみればいいかな。

 そう思った直後、揺れていた草むらから一斉に人形が生えてきた。

 いや、出てきた。

 

 あ……これはやばい。

 把握していた数の2倍近くいるじゃないか。

 20体くらいかな?

 

 視界の隅で弓が強く引かれている様子が見える。

 視界の隅で、こちらに走ってくる槍人形が見える。

 視界の真ん中で腕を突き出してくるゴーレムが見える。

 ま、まだだ!

 まだ負けていない!

 

 

 

 視界が白から町の中央広場へと変化する。

 無理だったよ……。

 結局弓を肩に受け、その痛みで止まったところにゴーレムの腕が掠ってしまった。

 それだけで死に戻りですよ!

 

 さて、他の皆はどうなっただろうか?

 辺りを見渡してみると、アーネさんがベンチに座っていた。

 あ、いつも座っているベンチが!

 まあ、どこでもいいのだけどね。

 

「アーネさん、お疲れ様」

 

「ユウ君か、お疲れ~!」

 

 この時間でここに居るということは、同じ結果を辿ったのだろう。

 

「どうだった?」

 

「あんなの無理だよ!ゴーレムの攻撃を避けながら、弓、槍、剣を避けるなんて普通の人にはできない!」

 

「でも、戻ってきていない人が2人いるのだけど?」

 

「普通の人にはできないって言ったじゃないか~」

 

 そうか、あの2人は普通じゃなかったか。

 

「フウさん達は大丈夫ですか?」

 

「うん、まだ戻ってきてないよ」

 

 そうかそうか。

 実はまだゴーレムに最初の攻撃も当ててなかったりして……。

 無いよね?

 

「まあ、パニックになってまだ落ち着いてないかもね~」

 

 フウさんはともかく、他の2人は大丈夫じゃないかな?

 でも、付き合いの長いアーネさんが言うのだから可能性はあるのか。

 

「あ、そうだ。アーネさん、これをフウさん達に渡しておいてほしいのだけど」

 

 そう言い、第2類2種金属を取り出す。

 フウさん達と一緒に戦ったゴーレムからドロップしたものだけど、最初からドロップ品の配分は辞退するつもりだった。

 今日はもう会えないかもしれないから渡しておかないとね。

 

 まあ、魔石だったら辞退しなかった可能性はあるけどね。

 

「分かった。配分が決まったらメルから教えるね」

 

「いや、配分は辞退するよ。僕はもう持っているからね」

 

「ああ、そう言えば何回か倒してたんだっけ?それでも勿体ないとは思わないの?」

 

「必要な分はもう確保できてるからね。それに、鍛冶をしているなら欲しいのじゃないかな?」

 

 何といっても、同じ鍛冶をしている人のお墨付きの金属だ。

 自分で使ってみたいと思うだろう。

 

「そうだろうね。分かった、これはこちらで配分しておくよ。ありがとうね」

 

「いいよ。それに今日は強化ゴーレムと対戦できて楽しかったからね」

 

 本当に楽しかった。

 明日も期待していいだろうか?

 

「君も物好きだね~。まあ、私も戦ってみたいんだけどね!」

 

 ここにも同志が!

 

「まあ、その内戦えるのではないかな。運が良かったのかもしれないけど、2回目で出てきたのだし」

 

「そうだね。なんでそっちの組に入ってなかったんだろうか……」

 

「入っていても渡さないよ」

 

「けち~」

 

 そんな会話をしていると、アーネさんが立ち上がり、手を振り始めた。

 さて、次は誰だろうか?

 

「ただいま~。負けちゃったよ、ユウ君」

 

「お帰り、姉さん。流石に無理だった?」

 

「もうちょっと火力があればどうにかなったかもしれないけど、人形が倒せないとどうしようもないね」

 

 そう、少しでも減らしていけるならまだ可能性はあるのだけどな……。

 全部避ける?

 無理ですよ。

 

「さて、あとはリンカさんだけか」

 

「いや~。リンカは戻ってこないんじゃないかな」

 

「そうね。多分戻ってこないわね」

 

 え?

 

「リンカは強いからね。それも桁が違うレベルで」

 

 そこまで強いのか。

 そういえば、一緒にウルフを倒していた時も、一度も攻撃を受けていなかったな。

 さらにウルフは一撃で仕留めると。

 でも、あれだけではそこまで強いとは思えない。

 

「確かに強かったけど、そこまで?」

 

「ああ、ユウ君は前回のリンカちゃんしか見てないからそう思うのかな。前回は他の皆に経験を積ませる為に、かなり抑えてたんだよ」

 

「それなら納得だよ。それにしても、そこまで強かったのか」

 

「まあ、あんまり本気は出してくれないから、見れたらラッキー程度だけどね」

 

 うう、そう言われると見たいな……。

 でもまあ、姉さん達でさえあまり見れないのなら、諦めた方が良いか。

 

「そういえば、神殿の情報は書き込んでも良いかな?」

 

「僕は別にかまわないよ。どうせ書き込もうと思っていたからね」

 

 逆に手間が省けるから書き込んでほしい。

 

「ありがとう。じゃあ、書き込んでおくね」

 

「こちらこそありがとう。書き込む手間が省けたよ」

 

 さて、そろそろイナバ達を召喚しないと。

 流石に会話中に召喚するのは気が引けたのだ。

 よし、いつものラビット、ウルフで召喚しておこう。

 

 

 

 それにしても、手触りがいいな。

 膝の上に乗っているイナバを撫でながら、他の皆を待っている。

 ルビーは姉さんとアーネさんに捕獲されたが、ルビーも嫌がっていないのでそのままだ。

 

 そうだな……掲示板でも見ておこうかな?

 

 

 

 約2時間が経過した頃に、リンカさんが西門の方から戻ってきた。

 

「お帰り。どうだった?」

 

「まあ、まだ余裕だったかな。通常タイプだったがね」

 

 それでも十分凄いと思う。

 それに、余裕だったということは強化個体もいけそうなのか。

 本当に桁違いに強いのだろうな。

 

「ところで、フウ達はまだかい?」

 

「まだだよ~」

 

「そうか。では待っていようか」

 

 フウさん達は順調に戦闘していれば、あと30分くらいだろうか?

 今も戻ってきていないということは、頑張っているのだろう。

 

 

 

 さらに30分ほどして、フウさん達3人が戻って来た。

 広場の中央に。

 逃げたい。

 かなり逃げたい。

 先程の姉さんはこんな気持ちだったのか。

 

「どういうことか説明して頂けますよね?」

 

 顔は笑っているが、怖い。

 なぜこれでゴーレムに負けてしまったのだろうか?

 迫力だけで倒せるのではないかとさえ思えてしまう。

 

「提案したのは僕です。本当にすいませんでした」

 

 頭を下げ、謝罪の言葉を述べる。

 ここは土下座をした方が良いのだろうか?

 

「聞いているのは理由です。何も理由が無いのにあなたはこんなことはしないでしょう?」

 

 おかしい。

 会ったのはまだ2回目のはずだ。

 それなのに妙な信頼がある。

 適当ではなく、確信しているような感じがする。

 

「理由は私から話そう。これから先、後衛職でも回避が必要になると思い、そのことをユウ君に話していたらこうなった。だから私も首謀者だ。ミルとアーネには私達が協力を依頼した。すまなかった」

 

 色々と端折っているが、その通りだ。

 

「そういうことでしたら良いのですが……今度からは事前に話して頂きたいものです」

 

「そう。驚いた」

 

「そうですよ。かなり焦ってしまったんですからね」

 

 アオさん性格変わっていないか?

 あちらが素なのだろうか?

 

「本当にすいませんでした」

 

 もう1度、頭を下げておく。

 確かに3人の為に行ったことだが、悪いことは悪いのだ。

 

「もう大丈夫ですよ。2人もいいですよね?」

 

「いい」

 

「はい。私達の為の行動ですからね」

 

「ありがとうございます」

 

 うん、次からはもう少し考えないといけないな。

 まあ、怒られるところまでは予想してたのだけどね。

 最初は、逆に恐怖を持たれたらどうしようかとも思っていたけど、姉さんやリンカさん、アーネさんが実行に賛成したのだ。

 それならば問題ないと判断した。

 もし誰か1人でも難色を示せば、やめる方向でお願いするつもりだったのだけどね。

 

 結果はこれからの戦闘を見てみないと分からないけど、この様子だと大丈夫そうかな?

 やはり、あのパーティはお互いをよく知っているようだ。

 

 

 

 それから4人でお説教を30分程頂き、今日は解散となった。

 

 やはり他のプレイヤーとパーティを組むのは楽しいな。

 まあ、姉さんの友達だったからというのもあるだろうけどね。

 また機会があればお願いしようかな?

 でも、そうするとイナバ達が暇をしてしまうからね。

 こういうのは、たまにでいいか。

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