―――50―――
「皆さん、お疲れ様でした」
前の3人へ向けて声を掛ける。
ミドリさんには先程同じことを言ったが、問題ないだろう。
「いえいえ、あなたもお疲れ様でした」
辺りを見渡してみるが、姉さんたちはまだのようだ。
あれ?
こちらが4人だったのだから、あちらの方が速く終わるはずなのだけど?
もしかして、2回目の強化があったからだろうか?
まあ、姉さんたちの話を聞いてから考えよう。
さて、イナバ達を召喚しないと。
そう思い、イナバをラビット、ルビーをウルフで召喚する。
おっと、MPが若干危ないな。
そういえば今回は回避だけじゃなくて、攻撃もしたのだったか。
うん、本当に楽しかった。
次はレベル7でもいいかな。
2回目の強化を使わないタイプだったら、イナバに戦ってもらうのもいいかもしれないな。
「これは……ユウ君、触ってもいいでしょうか?」
「いいですよ」
フウさんがイナバとルビーに興味を示したようだ。
「わ、私も……」
「私も……」
「どうぞ」
多分イナバとルビーなら嫌がらないだろう。
嫌がったならやめて貰おう。
まあ、触りたいのもわかる。
触り心地いいからね!
それにしても、疲れた。
でも、前回のように倒した直後は足が動かないほどではなかったかな。
慣れたのだろうか?
そうだとしたら、嬉しいことだ。
あのゴーレムとは、何度も戦わないといけないからね!
まだ戻ってこないな……。
長い?
いや、こちらが短かったのか。
1時間半を少し過ぎたくらいだろうか?
おかしいな、レベルも上がっていたのだから逆に長くなると思うのだけど……。
それにしても、イナバとルビーが大人気だ。
イナバもルビーも大人しく撫でられてたり、抱きかかえられたりしている。
いや~……和む。
だけど、そろそろ僕も撫でたいのだけど!?
「終わったー!」
「皆、お帰り」
神殿内に現れた3人へと声を掛ける
待つこと約30分、姉さん達が戻ってきたようだ。
「皆さん、お疲れ様です」
「お疲れ」
「お疲れ様です」
おや?
まあ、いいか。
「あれ?皆早いね」
「そうだな。こちらが先に終わると思っていたのだが……」
「こちらは強化個体だったからね。それが影響したのだと思うよ」
「強化個体?ああ、あの2回目の強化を行うタイプだね?」
「そうそう。そちらは強化1回のタイプだったの?」
「そうだよ~!もう疲れたよ~!」
あちらは、やはり強化1回のタイプだったのか。
そうなると、強化個体が出てくる条件は何だろうか?
人数?
いや、イナバ達と行ったときには出てこなかったからあり得ないか。
それにしても、アーネさんがゴーレムの相手をしたのだろうか?
確かリンカさんしか相手をできたいとか聞いた気が……。
お、フウさん達3人がイナバ達を解放して、姉さんに向き直った。
「ところで、メルさん。ちょっとお話があるのですが?」
「あ、あれ?フウちゃんどうしたの?ちょっと怖いよ!?」
後ろ姿しか見えないけど、そうなのだろうか?
お、姉さんが神殿の外へ連れていかれた。
まあ、しょうがないだろう。
僕は強化個体がでて、気分がいいので許してあげるけどね。
他の人はそんなことはないだろうからね。
「ところで、強化個体はどうだった?」
「前回よりレベルが1上だったから、少し速くなっていたかな」
「そうか。私も戦ってみたいものだ」
「大丈夫。連戦していれば、いずれ戦えるさ」
「そうかな?まあ、それだと嬉しいな」
今回出てきたのだし、連戦していれば出てくるだろう。
ランダムなのだろうか?
「それはそうと、討伐までの時間についてどう思う?」
「う~ん……倒す条件はMPをなくす事なのは確定している。そして、これは持論だけど、ゴーレムは動く際にMPを消費していると思っているんだ。だから、2回目の強化を行うと強くなる分、多くのMPを多く消費して速く倒せると考えてる」
そう、あくまで持論だけどね。
まあ、MPをなくせば倒せるのは試練の時に正解を貰っているから間違いないだろうけど。
「そうか。だが、そうすると前回と差が出ていないかい?今回私達は2時間程でゴーレムを倒した。だが、君達はそれよりも早かったのだろう?」
「うん。1時間半を少し過ぎた位……1時間40分と考えていいと思う」
「ならば、レベルが上がっているにもかかわらず前回よりも早いのは不思議だと思わないかい?」
そう、僕もそれは不思議だと思っている。
他に何か変化は……あ!
「そういえば、今回は前回と違って攻撃もしていたかな」
「攻撃?ダメージが通ったのか?」
「いや、通ってないよ。ダメージが通る場所が無いか改めて探していただけだよ」
「そうか……そうなると、ダメージを軽減、もしくは回復するためにMPを消費しているのかな?」
その考えがあったか!
確かにそれなら辻褄は会う。
皆と会う前に倒した通常タイプのゴーレムにはあまり攻撃を行っていないから、倒すまでの時間が早くなっていないのだろう。
「一応確認だけど、今回のゴーレムには攻撃した?」
「どうだろうか?今回相手をしていたのは私ではなくてアーネだからね」
やはりアーネさんが相手をしていたのか。
「よし、聞いてみようか。アーネ、ちょっと来てくれるか?」
リンカさんが呼ぶと、なぜか姉さんを問い詰める側に参加していたアーネさんがこちらへと近づいてきた。
「なに~?」
「今回ゴーレムに攻撃をしたか?」
「してないよ!したら剣が欠けちゃう!」
「そうか。ありがとう」
やはりしていないのか。
そうなると間違いなさそうかな?
「そうなると、MPを使用してダメージを軽減しているか、回復しているのは間違いなさそうだね」
「そうだな。だが、近接職が攻撃を行うのは難しいか……」
確かにそうだろう。
先程アーネさんが言っていたが、武器が欠けてしまうだろう。
いや、試したわけではないけどね。
でも、魔法銃なら問題ない気が……そういえば、魔法銃も遠距離武器だった。
そうなると、早く倒すためには遠距離職で攻撃を行う必要がある。
だが、攻撃すればゴーレムの目標にされる。
当然、普段回避し慣れていない遠距離職は回避が難しい。
どうすればいいだろうか?
攻撃を受ける役を作るのは……無理だろうな。
あのゴーレム攻撃を受けられるだろうか?
いや、無理だと思う。
試したくもない。
……やはり、回避に慣れるしかないのだろうか?
まあ、後々役に立つことだしいいかもしれないな。
「魔法職に攻撃をしてもらって、回避もしてもらうしかないのでは?」
「まあ、そなのだが……できると思うかい?」
「どうかな?僕はできるけど」
「君はね……ああ、メルもできそうだな」
あれ?
結構いけるのでは?
「だが、メル、アーネ、私を除いた他のメンバーにできるかと言われると、無理だろうな」
付き合いの長いリンカさんが言うのだ、間違いないだろう。
あれ?
ミドリさんは近接だからできるのではないだろうか?
「ミドリさんも無理なの?」
「ああ、ミドリは生産職だよ。今はレベル上げの為に一緒に来ているんだ」
そうだったのか。
生産職でハンマー……鍛冶だろうか?
まあ、生産職なら避けられなくても問題は無いだろう。
さて、どうするか。
パーティの半分が回避できるなら問題はなさそうなんだけどね。
どうせ人形を森に止める人もいるわけだし。
「ところで、ゴーレムを早く倒せるようになりたいの?それとも、今後のことを考えて全員が避けられるようにしておきたいの?」
「後者だ。生産職のミドリはいいとして、この先背後からの奇襲で一時的とはいえ、後衛職が前衛をしないとも限らない。それに、攻撃への過剰な恐怖は取り除いておきたいからな」
「そうか。だったら、ゴーレムが強化されるまでを担当してもらってはどうだろう?強化されてからは、避けられる3人の誰かが相手をすればいいのでは?」
これならば、無理をせずに避けられるようになるのではないだろうか?
まあ、この段階が無理ならばウルフかラビット相手になるけど。
「やはりそれしかないかな。ただ、ゴーレムだけを相手にしているわけにはいかないからね……」
ああ、時間が足りないのか。
1人ならまだしも、3人ともなるとね。
そうなると、一気に上達する方法か……。
「3人が攻撃を回避できない理由はどうしてだと思う?」
「避ける機会が無かったから、慣れていないのだろうな」
「では、全力で慣れてもらおう。残りログイン時間はどれくらい?」
「約2時間半だね。……ああ、そうか。やってみようか」
どうやら意図は伝わったらしい。
「でも、無理をさせるだけというのはダメだよね?」
「そうだろうな。ということで、私たちは無茶をしようか」
無茶ということは……。
「1人で突入だよね?僕は従魔無しで」
「そうだろうな。頑張ろうか!」
これは楽しくなってきた!
「姉さんには僕から伝えますので、リンカさんはアーネさんにお願いします」
「分かった」
姉さんに計画を伝え、いよいよ開始の時となった。
「さあ、皆!あと1回ゴーレムに挑もう!今回は私とユウ君とアーネちゃんで1組、リンカちゃんとフウちゃん、アオちゃん、ミドリちゃんで1組で挑むよ!」
うんうん、楽しみだ。
「イナバ、ルビー、一旦送還するね」
そう言い、2人を送還する。
今回は1人で挑まないといけないからね。
「皆パーティは組み終わった?じゃあ、挑もうか!」
勿論僕はパーティを組んでいない。
「じゃあ、ミドリが玉に触れてくれ。他の皆も、最初は動いていないからと言って気を抜くなよ!」
「分かりました」
さて、ミドリさんが玉に触れて……3人が神殿から消えた。
「さあ、私たちも頑張ろう!また後でね~」
そして、アーネさんの言葉で、他の皆が玉へと触れる。
さあ、あの3人は無事にゴーレムを倒せるだろうか?
20150326:修正
誤字、脱字を修正しました。